光を飲み込む闇
光の精霊の背後を取り、ウタカタは突きを放った。
「爆ぜろ!奥義・無影連突!!」
無影刺突を目にも留まらぬ速さで、連続で繰り出す。
放たれた突きは精霊の体を守る盾を貫通して、肉体を鋭く貫く。
無数に貫かれた精霊の肉体は、円形に型取るように穴が空いていた。
堪らず光の精霊が距離を取ろうとする。
「させるかっ!影縫い!」
光の精霊の影が縄のように精霊の体を締め付けて動きを止めた。
「これで最後だー!!」
最後の全力の突きが、その円の中心に突き刺さる。
その瞬間、円形に並んだ穴がつながり、精霊の胴体が円形にくり抜かれたように吹き飛んだ。
そんな苦労も虚しく、胴体に核はなかった。
そして、影縫いの拘束も長くは続かず、光の精霊は突き刺さった影を振り解いた。
光の剣を操りウタカタを牽制し、精霊が距離を取ろうとする。
ウタカタへと放った光の剣を回収して、ウタカタの周囲を取り囲んだ。
「ちぃっ!闇沼眩まし」
光の剣が襲ってくる前に、ウタカタはその場を離脱した。
「仕留めきれなかったか。どうやら核は、胴体にはなかったようだねぇ」
『そのようだね。肉体の構造からして、核があるのはおそらく頭部。高い位置にあるから、少し狙いにくいよ』
「あぁ、でも場所の特定はできた。攻撃も効く。問題は——」
ウタカタは、周辺に残っている瓦礫の影から顔だけを覗かせて周囲を確認する。
「同じ手が通用するかどうか……」
光の精霊は、光の剣を纏うように回転させていた。
「また剣を飛ばしてくれれば、減ったところを狙って精霊さんの影に移動するんだが、もしあの状態で応戦されたら、一矢報いる形でしか倒せないねぇ。光の剣をどうにかしないと……」
『あれは肉体とは別で動いているから、さっきの影縫いではどうにもならないね。どうする?』
「常闇、君の能力を信じて戦うしかないねぇ」
ウタカタは影から体を出した。
『信じる……そうだね。信じて戦うしかないかもしれない』
光の精霊がウタカタに気づき、眼前に光を集める。
『もうこれで周囲に影を作るものがなくなる。次で決着を付けないとまずいよ』
「こっちもそのつもりだよぉ」
集まった光が集束して球体となり、鋭い高音を立てる。
そして、またしても凄まじい大きさの光線が放たれた。
「厄介なのは本体じゃなくて、あの光の剣の方だねぇ」
間合いを詰めようとするも、光の精霊は光の剣を側から離さなかった。
「こっちの誘いに乗らないねぇ。さっき仕留めきれなかったのがでかいなぁ。警戒しているかぁ」
光の精霊は光の剣では攻撃してこず、光線を何度も放つ。
「やっぱりあの剣をどうにかするしかないねぇ」
『どうにかって、どうするの?』
「影縫いで拘束して、その間に倒そうかねぇ」
ウタカタは精霊の影を操り、光の剣へと絡みつける。
「影縫い!」
影を二本三本と伸ばして光の剣を拘束する。
しかし、剣は十本近くあり全てを拘束することはできない。
「くっ、これを抑え込みながら戦うのかっ!」
三本の剣の動きを封じている間に攻撃を仕掛けに行くも、回転する残りの剣に阻まれてしまう。
そして、回転しようと動く三本の光の剣を、いつまでも抑え込むことはできなかった。
『影縫いじゃ無理そうだ!他の手を考えよう』
「あの剣がある限り迂闊には近づけない。どうにかして本体から離さないと……」
ウタカタは光の精霊を観察していた。
「なぁんだ、こっちの方が簡単じゃないか」
『妙案でもあるの?』
「うまくいく可能性は、こっちの方が高いと思うよぉ」
ウタカタは精霊との間合いを詰める。
「影縫い!」
光の精霊の体を締めつけるように影が巻きついた。
『ウタカタ!本体を拘束しても仕方ないだろう、何故!?』
「まぁ、見てなって。闇沼眩まし!」
精霊の影が闇沼となり、常闇の固有空間へと繋がる入り口となった。
『一体何を考えて……まさかっ!?』
縛りついた影縫いが闇沼へと精霊を引っ張る。
「あくまで拘束技だから、闇沼へ引っ張り込むのは難しいかぁ。ならばっ!金剛鎧装」
周囲の岩石や鉱物、そして土が、光の精霊の体を覆うようにまとわりついた。
「重量を増やして沈めさせてもらうよぉ。ぐぬぬっ!まさか、金剛鎧装を相手にやることになるとはねぇ」
宙に浮いていた光の精霊が次第に地面へと沈んでいく。
そして、闇沼へと落ちていく。
「まだ足りないか。それじゃあ、俺もいかせてもらおうかねぇ」
ウタカタは勢いよく飛び上がった。
「金剛鎧装!そしてくらえ!磐座破斬!」
ウタカタの体を岩の鎧が包む。
刀は斬馬刀のように大きな大剣となった。
上から精霊に突き刺すように、大剣を地面に垂直に構えて落下する。
——ドズンッ!
大剣が光の精霊に直撃した勢いで、精霊共々ウタカタは闇沼へと沈んでいった。
精霊が沈んだ後、光の剣が闇沼の中へと入ってこないようにすぐに入り口を閉じた。
「精霊さんにも鎧装を着けちゃったから、ほぼ無傷だねぇ。まぁ、目的はそっちじゃないからいいんだけどねぇ」
ウタカタは互いの鎧装を解除して、刀も元の刀に戻っていた。
「これで邪魔者はいなくなったねぇ。一騎打ちといこうか」




