白刃野地方への帰還
祭の翌日、二人は白刃野地方に戻る準備をした。
「精霊さんの封印を解いた黒幕の特徴を、一旦整理しとこうか」
「そうですね。まず刀を持っていること。次に耳飾りをつけていること。そして髭が生えていること。顔に一本の傷跡。ウタカタさんそっくりな人物……」
「うーん、俺の顔をまじまじと見てるけど、惚れちまったかい?」
「すべての特徴がウタカタさんに当てはまりますね……しかもウタカタさんそっくりなら、ウタカタさん以外に誰がいるんでしょうか」
「特徴全部俺に一致してるけど、俺には無理なんだよなぁ。一体そいつは誰なんだ」
『僕が聞きたいくらいだよ。君以外に考えられない』
『情報を整理すると、ますますウタカタが容疑者として怪しくなってきたな。しかし、俺たちがずっとついていたからその前に封印を解いている必要があるぞ』
『だけど巫女の一族以外、封印場所を知る者はいないはずなのよねー?どうして場所を知っていたのかしら?』
『一箇所だけならともかく、ワシら全柱の封印場所を把握するとなると、偶然では片付けられんな』
『なんか難しい話になってきたねぇ!アタシにもわかるように説明してくれよ!』
「ウタカタさんには封印を解くことはできないはずなのに、精霊様たちの目撃情報をまとめると……ウタカタさん以外にいないということになります……」
『ボクはウタカタじゃないと思うけど、そうなると誰なんだろうねー、黒幕』
「わからない以上、考えてても仕方がないねぇ。大事なのは、どうやって黒幕を捕まえるかじゃないかい?黒幕がわからなくても捉える手段はある」
『もしかして、僕みたいに監視でもするの?』
「うん。精霊さんの封印場所を張っていれば、いずれ黒幕が現れるはず。現れなければそれはそれでいい。どうだい、名案じゃないかい?」
『だけど、人間の君達じゃずっと監視はできないだろう?僕たち精霊に監視させる気か?』
「そこをこれから考えていこうや。そんなに簡単に答えが出るわけでもないからねぇ」
「まずは、白刃野の神社に戻って対策を考えましょう」
『常闇よ、ウタカタを疑うのはお前の勝手だ。だが、その急いた考えはいただけんな』
『鳴神の言う通りじゃな。焦ったところで仕方がない。はやる気持ちは分からんでもないが、じっくりいこうじゃないか』
『君たちは、心配じゃないのか?全柱の封印が解かれたら、その犯人が目の前にいる彼じゃないのかって』
『アタシは全く心配してないよ!』
『なぜた!?どうしてそこまで信じられる?』
『ボクはウタカタを信じてるよー。絶対黒幕は別にいるって!』
『楽観的すぎる。そんな保証、どこにもないじゃないか?』
『あなたはまだ、彼のことをよく知らないからそう思うのかもしれないわね。私たちがよく知っているとまではいかなくても、彼の戦いを見ていたらわかるわ』
『それってどういう……』
『今は黙って見ておれ、常闇。いずれわかるはずじゃ』
『わかった……大人しく観ているよ』
「さあ、出発しましょう!私の神社目指して!」
二人は白刃野へ続く街道を馬車に乗って進む。
黒太刀から白刃野まで整備された道を順調に進み、数時間ほどで到着した。
「あっという間に白刃野に戻ってこれましたね」
「災害が何も起きていないと、こうもすんなり移動できるんだねぇ。今まで大変だったから逆に変な気分だよ」
「さぁ、神社へ向かいましょう」
「白刃野、久々だねぇ。セツナと会ったのも、あの神社だったねぇ」
「あの時は磐座様の封印が解かれて暴走していた時ですね」
「まだ被害の跡が残っているけど、この街を離れていた間に、だいぶ復興も進んだみたいだねぇ」
「そうですね、竜巻で散乱した資材が片付けられていますね」
街の様子を伺いながら、二人は神社を目指した。
そして、ようやくセツナのいた神社へと辿り着いた。
「ただいま、みんな!神社を任せっきりにしてしまったけど、やっと戻ってこれたよ」
セツナは神社の入り口でそう告げると、奥へと入っていった。
「え!?ウソ、何でこんな……どうして?」
「……どうしたんだい、セツナ?」
セツナは、ウタカタの問いかけに答えることなく、さらに奥へと走っていった。
「セツナ!?」
ウタカタがセツナの後を追いかける。
そこには、立派に建っていた神社本殿が見るも無惨に倒壊していた。
「なんだい、こりゃあ!」
前を走るセツナは、脇目も振らずに崩れた本殿の中へと強引に入っていく。
「待て、セツナ!危険だ!さらに崩れるかもしれない!」
それでもセツナは止まらなかった。
ウタカタの声が虚しく響く。
「まずいっ!」
ウタカタは、セツナを追って崩れた本殿へ向かって走っていった。




