お祭り前夜
二人は川釣りを楽しみ、街へと戻る。
すると——。
「おやぁ?何か随分賑やかだねぇ。こりゃあ一体なんだい?」
街は活気を取り戻し、通りには出店が並び始めていた。
「なんなんでしょうか?街中にお店を準備するなんて、お祭りでもするでしょうか?」
街の子どもたちが楽しそうに飾りを運び、大人たちと一緒になって飾り付けを手伝っている。
店主たちも屋台の準備を進めながら、楽しそうに談笑していた。
通りには焼きそばやたこ焼き、金魚すくいに射的、りんご飴や綿あめなど、祭りには欠かせない出店が並んでいた。
するとそこに、準備をする中指示を出していた男が二人に気づき話しかけてきた。
「巫女様!闇の精霊様を鎮めてくださりありがとうございます。街が光を取り戻したことを祝って、明日祭を催しますので、ぜひご参加下さい」
「そうでしたか、お祭りが。私は何をすれば良いでしょうか?」
男は笑って答えた。
「今回の一件を解決した主役である巫女様に、そんな恐れ多い。ぜひ普通に参加してお祭りを楽しんでください!」
男はそれだけ言うと、明日の祭の準備があると言い残して作業場へと戻った。
「何だか街も、元の元気な姿に戻ったって感じだねぇ。明日は祭を大いに楽しもうや、セツナ」
『おや、祭かい!?アタシは好きだよー、祭!射的や金魚すくい、いろんな色の水風船もあって視覚的にも楽しめる!』
『ふむ、祭りは賑やかで良いな。現実を忘れて皆好きなように楽しめる行事。見ているこっちも何だかホッとするというものだ』
『ボクもこういう賑やかなところ好きだなー!早く明日にならないかなー』
『そう急がんでも、すぐにやってくるわい。大人しく待とうぞ』
『以前までなら私はちょっと苦手だったけど、良いわねー。みんなでお祭りを楽しむのも。何だか人間の擬似家族みたいねえ』
『僕はこういう落ち着きのない場所は苦手だ。とはいえ、君から目を離すわけにもいかないからね、ついて行かせてもらうよ。……あんまり人が多いところには行かないでくれよ』
「祭りになったらどこも人だらけで、そんな場所ないと思うけどねぇ」
「一緒にいたらそのうち慣れてきますよ、大丈夫です」
『僕はそんなずっと一緒にいるつもりはないよ、やめてくれよ。あくまで監視のために側にいるだけなんだから』
「人が多い場所や状況は限られてるから、明日を除けば大丈夫じゃないかぃ?」
『むむむ……明日だけ辛抱しろということか、わかったよ』
『ねぇねぇ、そういえば闇の精霊って人間からはなんて呼ばれてるの?』
「暗闇の底から姿を現し、その周囲一帯は完全な闇に包まれていたという言い伝えから、闇の精霊様は常闇様と呼ばれています」
『見つけた人間は運がいいねぇ!滅多に姿を現さないからねぇ』
『というよりも、奴は現世に顕現している時は姿を見られないように必死だからな』
『ただの恥ずかしがり屋じゃ』
『みんなして、僕をからかうのはやめてくれよ』
『じゃあ、今日からお前は常闇だー!……って、なんで常闇はずっと顕現せずにウタカタについきてるのさー』
『いや、待ってくれよ。むしろ、何でみんなそんな姿で顕現してるんだ。それに、何で動物に統一してるの?』
『動物なら動いてても違和感ないだろ?ボクの案さっ!』
『でも明らかに色が……』
『そこはやっぱり個性さねっ!アタシという存在はこの世でたった一柱!』
『それだけじゃない、何といっても精霊らしさがなければならん。精霊でなければあり得ない動物に仕上げたというわけだ』
『鳴神、お主は全部乗っかっただけじゃろうて。そいつはワシの案じゃ!』
『うふふ、何だか面白そうだから乗っかっちゃったわー』
『みんな……でも僕は遊びじゃないんだ。封印を解いた黒幕を監視するために——』
『だから!ウタカタは黒幕じゃないってばー!何度言えばわかるんだよ』
『でも僕はこの目で見たんだ——』
「まぁまぁ、精霊さんたちそう喧嘩しなさんな。困ることは何もないんだしみんな好きにやろうじゃないか、ねぇ?」
全柱が口を閉ざした。
「それに明日はせっかくの祭りなんだ。楽しもうじゃないかっ!!」
「ウタカタさん……。ふふっ、そうですね」
『人間に諭される精霊とは、一体いかがなものか』
『鳴神、お主のいう通りじゃのぅ』
『楽しけりゃ何でもいいさねっ!』
『私も少し浮かれちゃってたかもしれないわねえ。ちょっと気を引き締めなきゃだわ』
『……ごめん』
『いや、僕の方こそわざわざ言わなくていいことまで言ってしまった。悪かったよ』
「それじゃあ、精霊さんの仲直りもできたわけだし、明日のお祭りでどのお店から回っていくか考えようじゃない!」
『賛成だねぇ!!こういうのは楽しんだもん勝ちだよー!』
『わー、ボクもボクも!』
『全部回ることは確定なのだろうな』
『……そうじゃろうな』
『あらあら、もう元気になってる』
『…………』
「祭の前日は計画を立てることを楽しむのさ」
「なるほどー!いい勉強になります!祭の前夜祭ってことですね!」
「セツナはたまに天然だよねぇ」
「えっ!?私ですか?」
「まぁ、そこがセツナのいいところでもあるかねぇ」
「あっ、待ってくださいよぉ、ウタカタさーん!」
二人は街の宿へと向かって歩いた。




