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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
セツナのやりたいこと編
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川釣り

 二人は、昨日観光した名所の山に流れていた川へとやって来た。


「ここ。水も綺麗で美味しかったし、きっと魚が釣れるよぉ」


「楽しみですね!ちなみに、川で意識することってなんですか?」


 川の中流付近で釣りの準備をする二人。


「そうだねぇ。海よりも、どの場所に魚がいるのか、自分の力で判断をする必要があるってとこだねぇ」


「……例えば?」


「例えば、あそこは川の流れが早いから魚はあまりいなさそうとか。大きな岩があるから岩の影に隠れやすくて魚がいそうとかだねぇ。自分で魚のいる場所を判断してそこへ餌を投げるから、釣る場所の判断ミスが結果に直結する。魚のいないところに餌を投げてても、釣れないからねぇ」


「それが、海よりも川の方が比重が大きいということですか」


「そう。海は広いし、一見しただけじゃあ見分けがほとんどつかないからねぇ」


 ウタカタは釣り位置を定めると、早速餌を付けて竿を振った。


「自分が魚だったらどこにいたいかを考えるといい」


「私は魚じゃないから難しいですね。どこにいたいか、うーんどこでもよく感じてしまいます」


 ひとまずセツナは、魚がいそうと思った場所、川の流れが穏やかなところへとしかける。


「やっぱりお魚さんも、落ち着いた平和な場所がいいんじゃないですかね」


「そうだねぇ。あとは食いついてくれるかだねぇ」


 ウタカタは早速当たりを引いた。


 魚が食いつき竿を引かれる。


「おっ!食いついたなっ。よし、ここだ」


 少し引きを確認して様子を見てから、ウタカタはリールを巻く。


 そして魚を釣り上げた。


「うん、好調な滑り出しだねぇ」


「早いですねウタカタさん。私も負けてられませんね!」


 意気込むセツナ。


 しかし、そんなセツナの気持ちとは裏腹に、なかなか魚を釣ることができないでいた。


「つ……釣れないです」


「川の流れを抑えてくれる岩の後ろや、川底が少し深くなっているところなんかに潜んでたりするよぉ。あとは簡単に餌が手に入る場所、虫が落ちてくるようなとことかだねぇ」


「なるほど、そういう場所にいるんですね。確かに安全なとこや楽に餌が手に入るところですね」


 セツナは魚がいそうな場所を探し、岩場の陰で少し暗いところへと竿を振る。


 そこは川の流れを遮っていて、穏やかな流れだった。


「ここなら条件ぴったりです!絶対釣ってみせます」


「いいねぇ!絶好のスポットじゃないかい?」


『なんだお主ら、またこの山に来たと思ったらまた釣りをしとるのか』


「そうだよぉ。でも、今度は川釣りだ」


『川と海でそんなに違うものなのー?』


「そうだよぉ。海と違って川は自分で仕掛ける場所を選択できる。前回の海釣りは船上だったからねぇ、移動しながらの釣りじゃあ川ほど一つの場所をじっくり見極められないんだよぉ」


『なるほどな、しかし川なら己の知識と経験で補い切れると。そういうことか」


「そっ。川なら仕掛けの位置は変わらない。どこがいいか選べるのさ。だから川は、魚がいそうな場所を見極める力がかなり重要になるのさぁ」


『海と川でそんなに違うのねぇ。それで、釣れてるのかしら?』


「まだ始めたばかりだからねぇ、これからだよぉ」


「私も、これから釣ってみせます」


『いいねぇ、熱いねぇ!どうせならまた、賭けでもしないかい?』


『それはいい!』


 精霊全員が声を揃えて答えた。


『ありゃー、残念さねっ!じゃあ、また今度ってことで』


 すると、セツナの竿に反応があった。


「あっ!これは、もしかして……」


 小さく引っ張られる竿が力強く引かれた。


「引いた!」


 リールを回すセツナ。


 読み通り、魚が食いついていた。


「やりましたよー、ウタカタさん!釣れました」


「筋がいいねぇ。針にかかる引きをするまでちゃんと待ってたねぇ」


「前回海釣りで教わったことですからね!」


「よく覚えてたねぇ」


 その後、ウタカタは順調に魚を釣る。


 セツナも教わったことを試して魚のいそうなところに当たりをつけて、糸を垂らす場所を変えて釣りを楽しむ。


「セツナ、もう少し難しいところで釣ってみるかい?」


「ここより難しいところがあるんですか?」


 ウタカタが手招きをする。


 二人は道具一式を持って上流へと登った。


「ここは景色が綺麗ですねー。妖精の森みたいな神秘さを感じます」


「はははっ、面白いこと言うねぇ。さぁ、ここだ」


「え?ここですか?」


「そう、ここが上級者コースさっ」


 勢いよく流れる上流へと到着した。


 水が透き通っていて綺麗な川が流れていた。


「えっ?上流に上がっただけですよ?」


「川の流れが速いからねぇ。仕掛けた餌が流されていって、魚のいる場所を通り過ぎちゃったりするのさ。ただ垂らして待つだけじゃあ、なかなか釣れないよぉ」


「えっ!?じゃあ、どうすればいいんですか?」


「簡単なのは、流されないように重りをつけたりすることだねぇ。でも、重くしすぎると不自然になって魚に警戒されちゃう。一番いいのは、流れに任せて上手く操作し、魚のいるところに流して運ぶことさっ」


「いきなりピンポイントに魚のいるところに仕掛けるんじゃなくて流れでそこに持っていくってことですね?」


「そう。上手く操れるかどうかが大事。ここができれば思いのままさっ」


「考えたこともありませんでした。川の流れに任せて魚のいるところまで運ぶなんて。やってみます!」


 セツナは何度も挑戦した。


 初めは方向をうまく定められず、いろんな方向へと流されていた。


「無理に流れに逆らってもダメですね。最初に餌を仕掛けた場所の川の流れも重要なんですね」


 やっていくうちに、投下した位置の川の流れも影響していることを学び、最初に糸を垂らす地点を選ぶことにした。


 目標の場所に自然と流れる地点、そこを見極める。


「ここなら!」


 セツナは川の流れを読み、少し手前のところへ仕掛ける。


 餌が流されていき、釣り糸が引っ張られる。


 そして、目標の岩の影になる場所へと自然と流れた。


「やった!あとは食いつかせられれば」


 セツナは少し竿を動かして、餌を魚へとアピールする。


 すると、魚が餌に食いついた。


「あっ!きたきたきた!」


 ウタカタに教わったことを何度も実践し、ついに、上流で魚を釣ることができた。


「やりました!自力で釣れましたよ」


「うんうん!コツを掴んだらあとは感覚を覚えて慣れていくだけ。そしたら、もう一人前だ」


 セツナの初の川釣りは、見事に上級者コースクリアで幕を閉じた。


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