完全なる闇の地下通路
二度目となる暗闇の森での探索。
「セツナ、地下通路って具体的にどんな所にあるんだい?」
「伝承によると一際大きな木の根元の部分が開いていて、そこから地下に繋がるみたいです」
「木の根元が地下に繋がる入り口ねぇ。なら、足元を照らして確認しないといけないわけだ」
「真っ暗なんで大きな木と言われても、全体が見えないから何の目印にもなりませんね」
「まぁ、探索の方はセツナに任せるよ。俺は魔物を倒していくからさぁ」
そして二人は、しばらく森の中を彷徨った。
魔物が襲ってきても、白波返しで全て切り抜けた。
迷っているのか順調なのかもわからないまま、森を歩き続ける。
そして、どれくらい経っただろうか。
ついに、地下へと続く通路を見つけた。
「やりましたよウタカタさん!やっと見つけました!」
「長かったねぇ。ずっと暗いせいで、どのくらい歩いていたかの時間感覚がないのが怖いところだねぇ」
「でも、この先にいる闇の精霊様の暴走を鎮めれば、この闇ともついにおさらばです!」
「よしっ、気合い入れていこうか!」
二人は地下へと続く階段を降りた。
「ここからは最奥まで一本道になっています」
二人は側壁を手で確認しながらまっすぐ歩いた。
その感触から、地下通路は石でできた洞窟のようになっていることがわかる。
風や動物などのたてる音は一切せず、二人の歩く足音だけが反響していた。
「何だか薄気味悪いねぇ。こいつは気のせいかねぇ?」
「何だか私も背筋がゾワゾワってしてきました。嫌な感じがします」
しばらく歩き続けて洞窟を進み続ける二人。
すると不意に——。
「えっ?ウソ!?」
「どうした、セツナ!?」
「明かりが……松明の明かりが消えました」
「予備があるだろう?なら、そいつを使おうか」
「いえ……違うんです。火は……確かに着いてるんです。ただ、明かりが見えないんです」
「……なんだって?」
ウタカタはセツナの声がした方へと進み、側から松明の熱を感じることを確認した。
「本当に……明かりが消えている。いや、火は着いてるから、明かりが見えないってセツナの表現が正しいのか?」
セツナの感じていたあの嫌な感じが増す。
セツナの体は鳥肌が立ち、冷や汗をかいていた。
それはウタカタも同じだった。
二人は少しの間、信じられない現象を前に動けずにいた。
「は、早く行きましょうウタカタさん。早く終わらせて元の世界に戻しましょう」
セツナが必死に搾り出したその声は震えていた。
「セツナ、俺が前を歩く。君は結界を張って俺の後に続くんだ」
セツナはウタカタの着物の背中を軽く摘んで、すぐ後ろを歩いた。
ゆっくり辺りを警戒しながら進む。
この洞窟は道なりにまっすぐの一本道。
伝承にはそう書いてあるが、二人は実際にこの目で確認したわけではない。
光すら掻き消す闇に包まれた洞窟。
「おかしな話ですよね。一本道だというのに、周りは石で囲まれているというのに、周りを警戒して怖がってるなんて」
「それが動物の本能ってやつなのかもしれないねぇ」
見えていればなんてことはないただの一本道ですら、光をも掻き消すこの闇の前では警戒せずにはいられなかった。
そして急に、その時はやってきた。
「きゃあっ!」
セツナの持っていた松明の火が消えた。
「何かいる!」
ウタカタが気配を感じとり、居合の構えを取る。
「疾風迅雷の陣!」
すると、ウタカタ周りを移動するような音が聞こえてくる。
——バッ!バッ!バッ!
素早く周囲を移動する音が響く。
そして、一際力強く足場を蹴るような音が響いた。
——ダンッ!
ウタカタが音のした方向へと抜刀する。
「抜刀浮雲!」
しかし、刀は空を斬っていた。
そして、ウタカタが攻撃を仕掛けたその隙を突くように攻撃がくる。
「ぐはっ!」
鈍い打撃を脇に喰らった。
しかし、ウタカタは攻撃された方向へと刀を振る。
だが、これも空振りだった。
「速い!」
ウタカタは納刀して構え直す。
「さっきの……まさか誘導されたのか」
——バッ!バッ!バッ!
また、素早く周囲を移動する音が響いた。
そして、先ほどと同じ展開で一際力強く足場を蹴るような音が響く。
——ダンッ!
「白波返し!」
ウタカタの周囲を噴き上がる水が取り囲む。
しかし、噴き上がる水が何かに当たったような音はしなかった。
「やはり、あれは攻撃を誘っていたか」
水の壁を取り払い、また周囲の音を聞く。
——バッ!バッ!バッ!
素早く周囲を移動する音が響き続ける。
そして時折り、一際力強く足場を蹴るような音が響く。
——ダンッ!
しかし、ウタカタは身動き一つとらなかった。
「やっぱり、誘ってるねぇ。こんな暗闇で有利に戦えてるのに駆け引きを仕掛けてくるなんて、性格が悪いねぇ」
しかし、その時だった——。
——ダンッ!
「ぐっ、ぐはっ!」
ウタカタは無警戒のタイミングで何発か攻撃をもらってしまった。
「くっ、油断したねぇ。ちゃんと攻撃も織り交ぜてくるかぁ。知略家だねぇ」
視界を完全に奪う暗闇の洞窟の中、ウタカタの白波返しは通用しなかった。
音に合わせて攻撃を仕掛けても、罠にハマるばかり。
「こいつは待ちの戦術だねぇ。同じ待ちの戦術で戦っても分が悪い。こちらから攻めないとだけど、それを見越してか最初にフェイントを仕掛けてくるんだもんなぁ。罠にハマって反撃喰らった印象が強く残って、なかなか怖くてこっちから手出しできないじゃないのさ」
『ウタカタよ、何か策はないのか?』
『ちょっと、こいつはやばいんじゃないかいアンタ!?』
『私の白波返しも通用しないなんて……』
『ボクの能力は優秀だから、ボクの能力を使って切り抜けるんだ!ウタカタ!』
『一度策を練る時間稼ぎで、金剛鎧装で耐えるのはどうじゃ!?』
「そうだねぇ。ここは一旦耐えるしかないかもねぇ」
そしてウタカタは、金剛鎧装を身に纏った。




