旅の醍醐味
休憩を取り終える頃、不意にウタカタが何かを閃く。
「やっぱり、後手後手だから良くなかったんだねぇ」
そう言って、何やら笑みを浮かべる。
それを見たセツナが微笑んだ。
「何だかもう大丈夫そうですね、ウタカタさん」
「あははっ、心配かけちゃってすまないねぇ。でも、多分もう大丈夫さ」
何故か二人の足取りは先ほどよりも軽かった。
そして、二人を待ち受けていた魔物たちが襲ってくる。
「セツナ、少し下がってて」
ウタカタは腰を落として居合の構えを取る。
構えは先ほどまでと何も変わらなかった。
しかし、ウタカタの声色と表情は違っていた。
どこか余裕があり、密かに確信のようなものが見え隠れしていた。
そして、魔物たちがウタカタの側まで迫ったその時——。
「白波返し!」
ウタカタの周囲から水が噴き上がる。
まるで噴水のように、地面から水が上空へと勢いよく噴き続ける。
魔物たちは勢いを水に殺されて動きが止まった。
そして——。
「抜刀浮雲!」
魔物たちを一刀両断にした。
「何をしたんですか?ウタカタさん」
「んーぅ、やっぱり!後手後手じゃあダメだったんだよぉ。後の先じゃないとねぇ」
「何を言ってるんですか?ウタカタさん」
「んっ?あぁ、ごめんごめん。なぁに、上手いこと受けさえすれば、こっちのもんってことさっ」
『白波返し、ねえ。私の水の力を使って受けてからのカウンターを決めたのね。やるじゃない、あなたー!』
「岩だと障害物になるけど、水ならそのまま切れると思ってねぇ。水の精霊さんとの戦いで、実際に斬ったから思いついたのさぁ」
『ふむ、ワシの能力と白波の能力をしっかり差別化しておるのだな』
『鳴神衝波で自身を中心に放電するのではダメだったのか?』
「濡れていたのもあるにはあるけど、あの技は自分にもダメージがいく諸刃の剣だからねぇ」
『そうか、感電か。人間にとってはなかなか、雷の力は扱いにくいようだな』
『でも、ボクの力で周囲をカマイタチで切り刻んでいれば無敵じゃない?』
「それができれば苦労しないのよ。風を操るのは俺にはどうにも難しくてねぇ」
『想像できないと能力を発揮できないんだったねぇ。炎なんかは目に見えるから、想像しやすくてアタシの能力は結構便利なんじゃないかい?』
「炎は周りを巻き込むから、割と慎重に扱わないと危険なんだよねぇ」
「みんな結構一長一短ありますね」
それから道中、精霊たちともくだらない話をしながら進んだ。
再び順調に街道を進み、やがて遠くに街の明かりが見えてきた。
「ウタカタさん、あれ!街灯りですよ!もうすぐ街です!」
「おぉ、こいつは朗報だねぇ。今一番ほしい情報だったよぉ。果報は寝ずとも、待ってれば来るもんだねぇ」
「もう、いい加減なこと言いますね!どうやって思いつくんですか、そんなこと?」
「いやぁ、これがおじさんってやつかねぇ」
二人は、明日の森探索に向けて宿で疲れをとる。
翌日
二人は松明を二本購入してから街を出た。
「街道では、もう松明を使わなくても進めそうだねぇ。魔物は白波返しで難なく倒せるし」
「では、二本目は予備で取っておきましょう。森では何が起きるかわかりませんからね」
「そうだねぇ。もう迷子にだけはなりたくないねぇ」
「以前よりも難易度が高いことから、おそらく迷子にはなりそうですよね……」
「おやっ?セツナにしては珍しいねぇ。自分から悪い方を予想するなんて」
「でも、実際そうじゃないですか。真っ暗で視界が悪いのは同じ。でも、今度は土地勘のない黒太刀ですし、見つけるのは渓谷ではなく地下への隠し通路です」
「旅ってのは、常に順風満帆ってわけにはいかないものさ」
「えっ?」
「道中何があるかわからない。その苦難の道中自体を楽しむことも、旅の醍醐味なのさっ」
「…………」
「セツナ?」
「そう……ですよね。せっかくの旅なんですから、普段味わえないことを味わえることを楽しまないと損ですよね」
「……そういうことさぁ」
『何だか人間てのは、変わった生き物だねぇ』
『でも、だから面白いんじゃない』
『そうかもしれんのう』
『確かにな』
『中でもウタカタは変わってるよねー』
「そうかい!?セツナも大概だと思うけどねぇ」
「あぁー!失礼ですよウタカタさん、本人の前で!」
『あははっ!自分で言うかねっ!』
『どっちもどっちかもしれないわねえ』
『そうかもしれんのう』
『うむ、一理あるな』
『セツナも変わりものだねー』
「精霊様たちまでー、もう!」
二人は魔物対策ができ、暗闇の街道旅にも慣れてきたのか、精霊たちとたわいのない話をして進む。
やがて、目的地の森へと到着する。
「ついに来たねぇ。闇の精霊さんの待つ森に」
セツナは松明に火を灯してウタカタと共に森へと踏み入った。




