暗闇に乗じた奇襲
真っ暗な道を松明を頼りに進む二人。
「この街道を進み続けてわかったことがある。どうやら、街灯は故意に破壊されているようだ。その証拠に、ほら」
ウタカタが松明の火を足元に近づけて地面を照らす。
「これは……ガラス!?でも一体なんでこんなところに——」
ウタカタは次に頭上を照らしてみせた。
「ご覧よ。見ての通り、街灯だ。それも、破壊されてる、ね」
「故意にって……やはり、魔物の仕業でしょうか」
「……まぁ、それしかないんじゃないかねぇ」
再び歩みを進める。
離れないようにウタカタがセツナの手を引く。
そして、しばらく歩き続けて、ウタカタの悪い予想が的中する。
——グルルルルッ!
周囲から獣の威嚇する声が聞こえてくる。
「数はそこまで多くないけど、何匹かいるねぇ、こりゃあ」
ウタカタがセツナの手を離して刀の柄に手をやる。
「セツナ、結界を張るんだ」
静かにそう呟くと、松明で辺りを確認するようにゆっくり左右に振る。
魔物の姿は見えない。
しかし、確実にいることだけはわかる。
「片手が塞がって視界も悪い中魔物に囲まれる、か。笑えない冗談だねぇ」
ウタカタは腰を落として、いつでも迎え撃てる体勢を取ると動きをピタリと止めた。
「疾風迅雷の陣」
速度を最大限まで上げて対応する。
そして、魔物が一斉に襲いかかった。
「——っ!」
ウタカタは音のした方へと斬りかかる。
しかし、全ての魔物を捉えることはできなかった。
「ぐっ……!」
すかさず攻撃を受けた方へと斬りかかる。
何とか魔物を全て倒すことができた。
しかし——。
「ウタカタさん、大丈夫ですか!?」
セツナは、ウタカタの松明の明かりを目印に近づく。
「あぁ、問題ないよぉ。この程度。でも、これからずっとこんな調子じゃあ身が持たないねぇ。何か策を練らないと…」
道中、これほど余裕のないウタカタは今まで見たことがなかった。
セツナはそれから何も言うことができなかった。
「はぐれないように、手を繋ごうか。」
ウタカタが手を伸ばす。
二人はまた手を繋ぎ歩みを進めた。
「ウタカタさん、手が塞がっていると戦いにくいですよね。私が松明を持ちます」
「……そうかぁ、すまないねぇ。頼むよ」
ウタカタはすんなりと受け入れて、松明をセツナへと渡した。
今度はセツナが前を歩く。
そして、さっきの戦闘を皮切りに次々と魔物が現れ始めた。
「やばいねぇ。相当な数に囲まれてる。見えないせいで簡単に大勢に奇襲されちゃうねぇ」
「どうしましょう。ここはもう魔物の退治は諦めて結界で強引に押し通りますか?」
「そうしたいのは山々なんだけど、二つ理由があってできない。一つは簡単な話さ。これだけの魔物を野放しにしておくわけにはいかないっていう正義感ってやつさ」
「ふ、二つ目は……?」
「こっちが問題でねぇ。この魔物が精霊さんのとこまでずっと追いかけてきたら、精霊さんとこの魔物をいっぺんに相手しないといけなくなるってことさ」
「それなら、今戦う他ありませんねっ!」
「そうだねぇ。やるだけは、やってみるさぁ」
ウタカタは脱力して腰を落とした。
魔物たちが四方八方から襲いかかる。
「抜刀浮雲・不知火!」
炎を纏った刀で素早く抜刀し、周辺の魔物を薙ぎ倒す。
そして、炎の明るさで一瞬見えた視界から、近くの魔物の場所を確認する。
次々に薙ぎ払っていくが、炎で照らせる範囲も狭く、完全には補いきれなかった。
「くっ……くそぉ……」
負傷はしたものの、魔物を倒しきる。
「まずいですよ、ウタカタさん。このままでは精霊様の元に辿り着く前に——」
「——わかってるよぉ。俺も何か策が必要なことは。でも、どうにもできない」
「金剛鎧装で身を守って、攻撃を受けてから反撃では間に合いませんか?」
「あの鎧は重いからねぇ。反撃が間に合うかどうか。それに、体力の消耗も激しいからねぇ。できるだけ、魔物との戦いで体力を消費したくないんだよぉ」
「わかりますが、そんなこと言っていられませんよ!」
「そうだねぇ。受けてから反撃ねぇ。やはり後手後手かねぇ」
そう言うと、ウタカタはまた手を繋ぎ歩き進める。
「どこかで休憩でも取りますか?」
「いや、これだけ魔物がいるんだ。今ここで取るのは得策じゃないねぇ。暗くて見えないから、休憩中に襲われるリスクも高い。警戒していない分危険だからねぇ。しばらく襲われなくなった地点で取ろうか」
「わかりました」
そして、何とか休憩を取ることができた二人。
「後手に回ってちゃあ何も変わらない。受けてからの反撃じゃあやられていく一方。かといって、見えないんじゃあ仕掛けようがない……一体どうすれば」
休憩中も魔物への対策で時間を消費していた。
セツナが結界を張っているため安全ではあるが、完全に囲まれてしまってはまずいため、警戒は怠らない。
セツナは、ウタカタをただ黙って見つめた。




