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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
闇の精霊編
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35/51

目指すは黒太刀、でもその前に

 ウタカタは再び小舟を作り直して、近くの街へと向かった。


 災害が収まったとはいえ、すでに道は浸水していた。


 湖から街まで舟を漕ぐ。


「帰りも漕ぐよね、そりゃあ」


 ウタカタはクタクタの体をこき使い、街に着いた時には抜け殻のようになっていた。


「宿で休んだら、明日はまた今後の予定を立てましょうか」


「あぁ、そだねぇ。明日考えられることは明日考えよう。今しかできないことを今しよう」


 そう言って、ウタカタは足早に濡れた体を温めに温泉へと向かった。




 翌日




「おはようございます、ウタカタさん」


「おはよう、今着替えるからちょっと待ってておくれ」


 ウタカタの部屋に訪れたセツナだが、ウタカタが浴衣から着物に着替えるまで部屋の前で待つ。


「お待たせぇ。ほんとに朝早いねぇ、君は」


「早起きは三文の徳ですよ」


「得するならいいんだけど、徳は別にいらないかな。もう十分あるでしょ」


「まぁ!そんなこと言ってるようでは徳なんて全く積んでなさそうですね、ウタカタさんは!」


「それより、あれだろ?今後の予定、決めるんだろ?」


「そうです!早速話しましょう」


 ウタカタの部屋へと上がり、丸い木製の座卓に地図を広げた。


「私たちがいるのはここです。次に向かうのはこの黒太刀地方です。ここからだとこの港町に向かって、そこから船で向かうのが一番早いです」


「また船に乗るんだね。本当は前回の釣りのリベンジしたいところだけど、体痛くて今は休みたい気分だねぇ」


「船室で休みながら向かうのが良さそうですね」


「そうしようかねぇ。今のところ、残る災害は闇の精霊さんのものだけだよねぇ?」


「そのはずです。なので、闇の精霊様の封印をしたら……一旦、この旅は終わりですね」


「闇の精霊さんのこと、随分放置しちゃったからだいぶ厳しい戦いになるんじゃない?」


 ウタカタの質問に、セツナは沈黙で返した。


『可能性はあるな。俺がそうだったようだしな』


『直接会って確かめるしか、方法はないわねえ』


『今から気にしたってしょうがないさねっ!』


『確かに、ここで気にしていても何も変わらんのう』


『ついにあいつに会うのかー。気乗りしないなー、ボク』


「まぁ、そうも言ってらんないからねぇ。でも、確かに気にしてても仕方がないねぇ。いつも通り行きますかっ!」


「では、港へ向かいましょう!あっ、港まで今日もまた、舟を漕いで進むことになりますよ」


「えぇ!?また漕ぐのかいっ!?いい加減にして欲しいねぇ、ほんと」


「ふふっ、なので船旅は明日からですね」


 そして、宿を出るとすでに小舟が用意されていた。


「準備がいいねぇ」


「今回はちゃんと櫂も用意してありますよ。これでスイスイ進めますっ!」


「いやぁ、スイスイは流石にちょっと厳しいかなぁ、体調的にも」


「安心してください。道案内は私がやりますから」


「うん、どちらかというと舟を漕ぎ進める方を俺は頼みたいかな」


 そして、二人は港町まで舟を交代で漕ぎ進めた。


 その大半はもちろん、ウタカタが漕いだ。


「街道を漕ぎ進めるのってやっぱり新鮮ですねー。落ち着いている状態ならいつでも歓迎って気分です」


「俺はもう懲り懲りだよぉ、こんなに漕ぐのは」


 港町に着いた頃にはウタカタはすっかりへとへとだった。


 戦闘の疲れも完全には癒えていない。


「今日はこの港町で一泊して、明日は船で黒太刀へ向かうんだったねぇ」


「はい、その予定です」


「なら、俺はもう休むよ。精霊さんとの戦いに備えて、休める時に休まないとねぇ」


 ウタカタは先に宿をとりに向かった。


「今回、ウタカタさんだいぶお疲れのようですね。ここは、巫女の私が応援してあげます!残る災害はあと一つ。闇の精霊様の封印さえできれば、また世界は元通りに戻るはず!負けるな、ウタカタ!頑張れ、ウタカタ!」


 小さい声でウタカタの背へ向けて応援するセツナ。


『あらあら。私の暴れっぷり、そんなに凄かったのかしら』


『ワシらはお主の水流に流されて戦いを見ておらんのでな、全く分からんわい』


「まぁ、どの精霊様も大変でしたけどね。そういえば、水の精霊様はウタカタさんを封印を解いた者と間違えましたよね。そんなに似ていたんですか?」


『そうねぇ、似てたわねえ。でも、記憶も少し曖昧だし、なんだか自信も無くなっちゃったのよねえ』


「ウタカタさんと間違えるほど似ている人……」


『あっ、ウタカタが宿から出て手招きしてるよー!部屋二つ取れたんじゃない?』


「分からないことをあれこれ考えても仕方ありませんね。私はこの旅を目一杯楽しみます!」


『おっ!いいねぇ!楽しむが一番だよ!』


『だが、気になるな。俺たちの封印を解いた者の正体もだが、その理由が……』


『確かにのう。彼奴の封印が解かれたら世界は大変なことになるのに、誰が一体何故……』


 セツナはすでにウタカタの元へと駆け寄っていた。


「精霊様方!あんまり遅いと、一緒の宿に泊まれなくなりますよー!」


『まずいまずいっ、急がねばっ!』


『精霊が何故こんなひもじい思いをせねばならんのじゃっ』


『ビリだったやつは罰ゲームで、言うことを一つ聞くことなっ!』


『あっ!ずるーい!一番はボクのものだぞー!』


『あらあら、こんな遊びをしてるのね。負けないわよー!』


 精霊たちとの騒がしい一日を過ごす。


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