目指すは黒太刀、でもその前に
ウタカタは再び小舟を作り直して、近くの街へと向かった。
災害が収まったとはいえ、すでに道は浸水していた。
湖から街まで舟を漕ぐ。
「帰りも漕ぐよね、そりゃあ」
ウタカタはクタクタの体をこき使い、街に着いた時には抜け殻のようになっていた。
「宿で休んだら、明日はまた今後の予定を立てましょうか」
「あぁ、そだねぇ。明日考えられることは明日考えよう。今しかできないことを今しよう」
そう言って、ウタカタは足早に濡れた体を温めに温泉へと向かった。
翌日
「おはようございます、ウタカタさん」
「おはよう、今着替えるからちょっと待ってておくれ」
ウタカタの部屋に訪れたセツナだが、ウタカタが浴衣から着物に着替えるまで部屋の前で待つ。
「お待たせぇ。ほんとに朝早いねぇ、君は」
「早起きは三文の徳ですよ」
「得するならいいんだけど、徳は別にいらないかな。もう十分あるでしょ」
「まぁ!そんなこと言ってるようでは徳なんて全く積んでなさそうですね、ウタカタさんは!」
「それより、あれだろ?今後の予定、決めるんだろ?」
「そうです!早速話しましょう」
ウタカタの部屋へと上がり、丸い木製の座卓に地図を広げた。
「私たちがいるのはここです。次に向かうのはこの黒太刀地方です。ここからだとこの港町に向かって、そこから船で向かうのが一番早いです」
「また船に乗るんだね。本当は前回の釣りのリベンジしたいところだけど、体痛くて今は休みたい気分だねぇ」
「船室で休みながら向かうのが良さそうですね」
「そうしようかねぇ。今のところ、残る災害は闇の精霊さんのものだけだよねぇ?」
「そのはずです。なので、闇の精霊様の封印をしたら……一旦、この旅は終わりですね」
「闇の精霊さんのこと、随分放置しちゃったからだいぶ厳しい戦いになるんじゃない?」
ウタカタの質問に、セツナは沈黙で返した。
『可能性はあるな。俺がそうだったようだしな』
『直接会って確かめるしか、方法はないわねえ』
『今から気にしたってしょうがないさねっ!』
『確かに、ここで気にしていても何も変わらんのう』
『ついにあいつに会うのかー。気乗りしないなー、ボク』
「まぁ、そうも言ってらんないからねぇ。でも、確かに気にしてても仕方がないねぇ。いつも通り行きますかっ!」
「では、港へ向かいましょう!あっ、港まで今日もまた、舟を漕いで進むことになりますよ」
「えぇ!?また漕ぐのかいっ!?いい加減にして欲しいねぇ、ほんと」
「ふふっ、なので船旅は明日からですね」
そして、宿を出るとすでに小舟が用意されていた。
「準備がいいねぇ」
「今回はちゃんと櫂も用意してありますよ。これでスイスイ進めますっ!」
「いやぁ、スイスイは流石にちょっと厳しいかなぁ、体調的にも」
「安心してください。道案内は私がやりますから」
「うん、どちらかというと舟を漕ぎ進める方を俺は頼みたいかな」
そして、二人は港町まで舟を交代で漕ぎ進めた。
その大半はもちろん、ウタカタが漕いだ。
「街道を漕ぎ進めるのってやっぱり新鮮ですねー。落ち着いている状態ならいつでも歓迎って気分です」
「俺はもう懲り懲りだよぉ、こんなに漕ぐのは」
港町に着いた頃にはウタカタはすっかりへとへとだった。
戦闘の疲れも完全には癒えていない。
「今日はこの港町で一泊して、明日は船で黒太刀へ向かうんだったねぇ」
「はい、その予定です」
「なら、俺はもう休むよ。精霊さんとの戦いに備えて、休める時に休まないとねぇ」
ウタカタは先に宿をとりに向かった。
「今回、ウタカタさんだいぶお疲れのようですね。ここは、巫女の私が応援してあげます!残る災害はあと一つ。闇の精霊様の封印さえできれば、また世界は元通りに戻るはず!負けるな、ウタカタ!頑張れ、ウタカタ!」
小さい声でウタカタの背へ向けて応援するセツナ。
『あらあら。私の暴れっぷり、そんなに凄かったのかしら』
『ワシらはお主の水流に流されて戦いを見ておらんのでな、全く分からんわい』
「まぁ、どの精霊様も大変でしたけどね。そういえば、水の精霊様はウタカタさんを封印を解いた者と間違えましたよね。そんなに似ていたんですか?」
『そうねぇ、似てたわねえ。でも、記憶も少し曖昧だし、なんだか自信も無くなっちゃったのよねえ』
「ウタカタさんと間違えるほど似ている人……」
『あっ、ウタカタが宿から出て手招きしてるよー!部屋二つ取れたんじゃない?』
「分からないことをあれこれ考えても仕方ありませんね。私はこの旅を目一杯楽しみます!」
『おっ!いいねぇ!楽しむが一番だよ!』
『だが、気になるな。俺たちの封印を解いた者の正体もだが、その理由が……』
『確かにのう。彼奴の封印が解かれたら世界は大変なことになるのに、誰が一体何故……』
セツナはすでにウタカタの元へと駆け寄っていた。
「精霊様方!あんまり遅いと、一緒の宿に泊まれなくなりますよー!」
『まずいまずいっ、急がねばっ!』
『精霊が何故こんなひもじい思いをせねばならんのじゃっ』
『ビリだったやつは罰ゲームで、言うことを一つ聞くことなっ!』
『あっ!ずるーい!一番はボクのものだぞー!』
『あらあら、こんな遊びをしてるのね。負けないわよー!』
精霊たちとの騒がしい一日を過ごす。




