黒幕と勘違い?
核を破壊し、水の精霊の暴走を鎮めることができた。
荒れ狂っていた水流は元に戻り、静かな湖へと完全に戻った。
「終わりましたね」
「そだねぇー。これで封印を解いた犯人について、有益な情報を聞き出せたら最高だねぇ」
ウタカタは刀を地面に突き立てて座り、やる気のなさそうな表情を浮かべる。
「そういえば、精霊様たちがいませんね。どこにいったんでしょうか?」
現世に顕現した精霊たちの姿がなかった。
セツナが辺りを見渡していると不意に声が聞こえた。
『あれ?私どうしていたのかしら。何だか眠っていたような』
「おっ?水の精霊さんが正気に戻ったようだねぇ」
「よかったです!精霊様、お聞きしたいことがあるのですがよろしいですか?」
『えぇ、もちろんです。何を知りたいので——!?』
セツナが話しかけてきたことに気づき、精霊が返事を返そうとしたその時だった。
『あなたはさっきの!!よくも私の封印を解きましたね!この不届き者めっ!精霊の封印が全て解かれたらどうなるか、知っているのですか!?許しませんよ!!』
先ほどまでの柔らかで丁寧な口調が嘘のように、激しく荒々しい怒りを含んだ口調に変わった。
その言葉はウタカタへ向けられたものだった。
「えぇ!?俺かい?俺何もしてないよぉ?というか、精霊さんの暴走を鎮めに来たばかりで、初対面なはずだけど」
『嘘をおっしゃい!そんな苦しい言い逃れ、通用しませんよ!!』
「あっあっあっあのぉー、すみませんっ精霊様。ちょっと事情が飲み込めていないんですが、こちらの方はウタカタさんといって、私と共に解かれた精霊様の封印をする旅をしておりまして。土の精霊様の封印が解かれた時から共に行動しています。それに、精霊様の封印の地を知るのは巫女を継ぐ一族だけなので、ウタカタさんに精霊様の封印を解くことは不可能だと思います」
セツナが焦りながら早口で説明した。
『……そうなの?えっ?私、勘違いして怒ってたの?あぁ、やだわ恥ずかしい!どうしよう、私もう精霊としてやっていけないわ』
「あっ、あははっ。蛟様の一面を早速拝むことになったねぇ」
ひきつった笑顔でその場を取り繕うウタカタ。
『あぁ、なんてことなの。早とちりしてしまったわ。申し訳ないわね、そこのあなた。でも、かなり似てたものだから』
「それについてなんですが、精霊様の封印を解いた者について、何か覚えていることはありませんか?」
『うーん、覚えていることねえ。ほとんどないのだけれど、そこのあなたに見た目がよく似ていたわ。私ったら見間違えちゃったみたいねえ。人間の区別はつけられるようになったと思っていたのだけれど、残念だわ』
「そうですか、ウタカタさんに似ている人物……」
ウタカタをじーっと睨みつけるように見るセツナ。
「ちょっと待って、ちょっと待ってー!さっき俺には不可能だって力説してくれてたじゃない!」
「疑ってるわけではありませんよ。でも、そんな見間違えるほど似てる人いますかねー?」
「まぁ、世界は広いからねぇ。それに、自分と同じ見た目の他人が世界には三人いるらしいじゃない」
「もう!なんの根拠もないことを」
そんなやりとりをしていると、遠くから二人を呼ぶ声が聞こえてきた。
『あー!いたいた!ウタカタとセツナだー!』
『やっと戻って来れたな』
『ちっこい体にした上、精霊の力も使えぬから苦労したわい』
『なんか冒険って感じで面白かったなっ!またアタシらだけでやろーぜっ!』
『もう懲り懲りじゃわい!』
『ウタカター!水の精霊の暴走は鎮められたみたいだねー』
「あぁ、なんとかねぇ。最後は俺の方が倒れるかと思った」
『えぇー!見たかったなぁ。またボクの能力が大活躍したんだろうなぁー』
『いや、俺の能力だな』
『きっとアタシだね!』
『なんでお主らはそんなに自信満々なんじゃ』
『あなたたちどうしたの!?そんな可愛らしい格好して』
『うむ、ちょいと現世に顕現することになってな』
『成り行きじゃ』
『ボクのおかげだね』
『元はといえばアタシさねっ!』
『うふふっ、元気ねぇあなたたち』
『これからあの闇の精霊の奴の暴走を止めにいくんだー。ボクあいつ苦手だけど同じ仲間だしさー。ねぇ、力貸してよっ!』
『あらあら、直球ねえ。嫌いじゃないわよ。いいわっ、ついでに私もついていってあげる!何だか楽しそうだし』
すると、水の精霊——白波はウタカタへマナを分け与えると、氷のような体の水色の白鳥の姿で現世に顕現した。
『珍しいねぇ!アンタがこういうのに付き合うなんて』
『何だか、今まで経験したことのないことを経験できそうな気がするのよねえ』
『そうだっ!水の精霊はなんで呼ぼうかー?白波と蛟って二つ名前があるんでしょ?いいなー、ボクも名前二つ欲しいなー!』
『二つも名前なんてあったら、今みたいにどっちで呼べばいいかわからなくて呼びにくいだろ』
『そもそもワシらに名前は必要なのか?』
『強そうな名前なら、アタシはなんだって何個だって構わないけどねぇ!』
『じゃあ、普段は白波って呼んで、怒った時は蛟って呼ぼう!』
『ちょっと何よそれ!私が怒った時だけ蛟って、もう悪口じゃないのっ!』
『うわーっ!早速怒ったー。蛟が怒ってる、怖いよー!蛟こわーい!』
『バカにするんじゃなーい!!』
「落ち着いた精霊さんだと思ってたけど、たくさん集まったらこうなっちゃうのね」
「いろんな精霊様がいらっしゃいますね。さて、私はこれから水の精霊様の封印に取り掛かります」
巫女の封印の儀が終わり、水の精霊は無事封印された。
分霊として現世に顕現した白波が、同行することとなった。
『それじゃあ、これからよろしくねっ!』




