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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
水の精霊編
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水の精霊はどこだ!?

 セツナの指示する方向へとウタカタが小舟を漕ぎ進めていく。


 そして、セツナの言う水の精霊が封印されている湖まで辿り着いた。


「ここが、水の精霊さんが封じられてるっていう湖ねぇ。大自然の森の中央に広がる大湖って感じだねぇ」


 その湖は、ウタカタが言った通り木々に囲まれた大きな湖だった。


「あんなに街は悲惨な状況だったのに、湖は綺麗ですねー。見てください、水が透明ですよ」


 セツナに言われるまま湖面を眺めるウタカタ。


 すると、不意に湖面に波紋が発生した。


 次第に波紋が広がっていき、小舟が揺れる。


「おいおい、一体何が起きてるんだぁ?こりゃあ」


「わかりません!でも、なんだかやばそうですーー!!」


 小舟の揺れが大きくなる。


 ついに小舟が真っ二つに弾け飛び、二人は宙へと投げ出される。


 小舟に乗っていた面々は、湖へと落とされた。


 小さい体の分霊たちは、激しい水流でどこかへと流されていった。


「こいつはさすがに自然現象じゃあないねぇ。水の精霊さんのお出ましかっ!って思ったんだけどぉ、どこにもそれらしい姿が見当たらないねぇ」


 湖に落ちたウタカタは、辺りを見渡し警戒していたが、どこにも攻撃を仕掛けてきた者の姿はなかった。


「でも、ここが水の精霊様の封印の地です。必ずこの近くにいます!」


 セツナがはっきりとそう答えた、その時だった。


 ——バシャァンッ!!


「えっ!?」


 突然、湖面が大きく盛り上がった。


 次の瞬間。


 大量の水がまるで生き物のように形を変え、ウタカタへと襲いかかってくる。


「おいおい、まさか……」


 ウタカタは刀を構える。


「水そのものが襲ってくるとはねぇ」


 迫り来る水へ向け、刀を振り抜く。


「泡沫一閃・不知火!」


 刀身から放たれた炎が、水の塊を包み込む。


 ジュウウウッ!!


 大量の水が一気に蒸発し、白い水蒸気となって辺りへ広がった。


「どうりで姿が見えなかったわけだ、舟の下から水で攻撃してきたってわけだねぇ」


 ウタカタは刀を構えたまま呟く。


「どういうことですか?」


「おそらく、水の精霊さんが、この湖の水を操ってるんだろうねぇ」


「この湖の水を……?」


「だとすると、水の精霊さんはこの湖の中かな」


 ウタカタは周囲を見渡す。


 やはり、周囲にはそれらしいものは確認できなかった。


 そして、目の前に広がるのは大きな湖。


 ウタカタは水の精霊が身を潜めるなら、この湖の中しかないと確信した。


「水の魔物なら、こいつで何とかできたんだけどねぇ」


 刀を軽く血振りするように振る。


「さすがに湖全部を蒸発させるってぇのは、無理筋が過ぎるねぇ」


 刀身からは纏っていた炎が消える。


「となると、別の方法を考えたほうがよさそうだぁ」


 握っている刀を肩に担ぎ、顎髭をさすりながら考える。


 しかし、水の精霊は考え時間を与えてはくれなかった。


 今度は先ほどよりも大きな水の塊が、触手のように伸びてウタカタへと迫ってくる。


「……来たか」


 ウタカタは炎を纏わせることなく、刀を構え直した。


「迎撃優先なら、こっちだねぇ」


 水がウタカタに迫る。


 しかし、ウタカタに届く前に——。


「——神凪破斬!」


 鋭い空気の斬撃が放たれ、襲い来る水を切り裂く。


 水の触手は二つに分かれ、その勢いのまま左右へ飛び散った。


「こっちなら、届く前に確実に撃ち落とせるからねぇ」


「ウタカタさん、そんなことをしていても……!」


「分かってるよぉ、核を破壊しなければ止まらない」


 ウタカタは刀を下ろし、湖面を見つめる。


「水の精霊さんは、この湖の中にいる!」


「えっ!?じゃあ、どうやって……」


「……直接叩く」


 ウタカタは湖の奥へと視線を向けた。


「本体を見つけてねぇ」


「水の中で戦闘なんて無茶です!」


「悲しいけど、無茶でもやるしかないんだよねぇ」


 ウタカタは湖面を見下ろす。


 水の精霊が水を操っているのなら、その本体はどこにいるのか。


「……ここ以外考えられない」


「他に何か考えましょう、それからでも——」


「セツナ!戦闘に巻き込まれないように近くの陸地に上がるんだ!水を操っている以上、湖の中にいるのは危険だ!」


「ちょ、ちょっと待ってください、ウタカタさん!」


 セツナが止める。


「本当に、湖の中に潜るんですか?」


「そうするしかないだろうねぇ」


「でも……」


「大丈夫だよ」


 ウタカタはいつもの調子で笑う。


「ちょっと見てくるだけさ」


「ちょっとって……!」


 セツナが言い終わるより先に、ウタカタは湖の中へと潜水する。


 ウタカタは目を開き、周囲を見渡した。


「……」


 遠くまで見通せるほど透明な水。


 どこまでも続く湖。


 どこを見ても辺りは水だけ、そして上は水面が見えるだけ。


(どこだ?もっと深いところにいるのか?)


 水の精霊らしき姿は見当たらない。


 当然、核も見えない。


 ウタカタはさらに深く潜っていく。


 それでも、何もない。


 まるで、この湖には自分以外の何者も存在していないかのような静かさを感じた。


(おかしいねぇ、他に身を隠せるような場所なんてないはず。今までの精霊さんの器を考えると、かなり大きいはずなのに……)


 その瞬間。


 ——ギュッ。


「ごぼぉ……っ!」


 突然、身体が強く締め付けられた。


「ぐっ……!」


(何だ!?何かに身体を掴まれたような感覚。いや、もっと正確には巻き付かれたような感じに近い。一体何に!?)


 どこから攻撃が来ているのか確認するため、辺りを見渡す。


 だが、依然として湖の中にはウタカタ以外の存在はない。


 それなのに、身体だけが確かに締め付けられている。


(まさか、水が直接締め上げているのか!?このままじゃまずいねぇ、動けない)


 ウタカタは目を細める。


 小舟を襲われた時もそうだった。


 水が襲ってきた時もそうだった。


 そして今も。


 どこから攻撃を仕掛けているのかわからない。


 さらに、精霊らしき存在も見当たらない。


 ウタカタはこの二つのことから、水の精霊の本体が何なのかようやく悟った。


(わかったぞ!なぜ湖の中に精霊さんがいなかったのか!だが、俺の予想が正しければ大きな疑問がまた一つできちまった。なぜ、核が見当たらない!?)




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