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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
水の精霊編
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31/51

水上都市

 青薙を歩き進む二人。


 数時間歩き続けたところで、二つほど街を超えた。


 そして街道を歩く中、ついに青凪を襲っている災いが二人の前に現れ始める。


「足元が水浸しになっているねぇ」


「排水できていないみたいですね」


 初めは、大雨で大きな水たまりが複数できたもの程度だった。


 しかし、次第にその水が道を埋め尽くしていく。


「だんだん、水が深くなってきてる!もう足が浸かっちゃってるよ!」


「足元も水で見えなくて、少し危ないですね」


 そして、進むほどその水の量は増していった。


「まずいねぇ、もう膝まで浸かってしまってる。こんな状況で襲われたらひとたまりもないねぇ」


「縁起でもないこと言わないでくださいよ、ウタカタさん」


 幸い魔物が襲ってくることはなかった。


 しかし、いつ襲われるかわからない。


 この状況を打破しようと、ウタカタは辺りを見渡しながら進む。


「何を探してるんですか?ウタカタさん」


「んー?いやぁ、これだけ水が深けりゃあ、小舟にでも乗ったほうがいいと思ってねぇ」


「え?街道で小舟を探してたんですか?見つけたとしても泥棒じゃないですか!」


「今はそんなこと言ってる場合じゃないよぉ。それに、小舟が見つかったならそれは、この水害で流されたものってことだ。だったら誰も使う予定のない小舟だ、ちょっと借りたっていいじゃない」


 肩をすくめて軽く言い放ったウタカタ。


「そうですね。困っているから借りたのなら、神様だって許してくれそうです」


「ふふっ、信仰ってのは面倒なんだねぇ」


「誰かの所有物なら一言言って借りるべきですが、流された小舟ならもう誰のものでもありません。もうこの辺には人はいなさそうですしね。心の中で感謝して、有効に使わせてもらいましょう」


 二人は小舟を探しながら進んだ。


 青薙は港が盛んな、海に囲まれた地方。


 普通の街なら小舟なんてあるはずがない。


 しかし、青凪では水の精霊の加護で豊かな水で溢れている。


 湖もいくつもあるため、小舟でのデートスポットになったりもした。


 そのため、船を貸し出す店が湖の近くにある。


 今回の災害でそれらの小舟が流されている可能性があると判断して、探し回った。


 そして、進み続けてついに二人は小舟を見つけた。


「あったぞセツナー!」


 ウタカタが大声を張る。


 水はもう胸の辺りまで浸水しており、街道は見る影もなく川となっていた。


 ウタカタは泳いで小舟まで辿り着き、小舟に乗った。


「待ってろー、今迎えに行く!」


 セツナは体力の消耗を抑えるために、立ち泳ぎをして待った。


「よし、俺の手に掴まれ」


 ずぶ濡れとなり、水を吸って重くなったセツナを引き上げる。


「はぁはぁ、まさか泳ぐことになるとは思ってませんでした」


「津波の災害と聞いた時から、俺は予想してたけどねぇ」


「始めからってことですか!?だったら言ってくれればよかったのにー」


「まぁ、本当にそうなるかどうかわからないし、知ったところで状況も変わらないからねぇ」


 ウタカタは鞘に収まっている刀を使って、立ち漕ぎをして小舟を進める。


「なかなか思ったように進まないねぇ。どうしたもんか……」


 しばらく、刀で漕ぎ進めながらウタカタは考えていた。


「二本あったほうが効率いいよねぇ」


 ウタカタは、鞘から刀を抜刀した。


 そして、刀の平と鞘で交互に漕ぎ進める。


「少しはマシになったけど……って感じだねぇ」


「仕方ないですね。近くに櫂が浮いてたら拾っていきましょう」


「物を利用するのがすっかり板に付いてきたねぇ」


「もう、いじわる!」


「おっとぉ、ちょっと度が過ぎたようだねぇ。反省反省」


 ウタカタは頬の刀傷をポリポリと掻いた。


 道が完全に水で埋め尽くされた街道を進む。


 次に到着した街は水上都市のようになっていた。


「街がすっかり浸水してるねぇ。地上が全て水に沈んでるよ」


「まるで海の上に建てられた街みたいですね」


「こうなってはもう誰もいないだろう。先を急ごう」


 水に通路が飲み込まれた街の惨状を目撃した二人は、先を急ぐことにした。


 しかし、行く手を阻む者が襲いくる。


「水の魔物か!?」


 魔物は水の中から突然姿を現し、小舟に乗る二人に飛びかかってきた。


「抜刀浮雲」


 ウタカタが素早く居合斬りで両断した。


 しかし、魔物の体は二つに分かれた後再生した。


「こいつ、水でできている」


 小舟に着地した水の魔物は、近くにいたセツナを襲う。


「まずいっ!」


 ウタカタはセツナの腕を引っ張り、小舟を乗り捨てて飛び退いた。


 着地先に石柱を発生させて足場とした。


 その石柱をいくつも発生させる。


 徐々に高さを上げていき、街に立ち並ぶ家の屋根上へと辿り着いた。


「無事かい、セツナ?」


「はい、なんとか。でもどうしましょう、私たちの小舟が……」


 二人は屋根上から、自分たちが乗っていた小舟を見下ろした。


 すでに水の魔物の手によって小舟は破壊されていた。


 そして、水の魔物は水の中へと姿をくらませた。


「仕方ない。新しい舟が見つかるまでは、今みたいに足場を作って進もうか」


「でも、魔物に襲われた時危険です。足場が狭くて不安定ですよ」


「最後見たかい?魔物は水の中へと消えていった。つまり、あの水の中のいつどこから仕掛けてくるのかわからない。小舟に乗っていても危険だ。それに、さっきみたいな頑丈じゃない舟なら、またすぐに壊されてしまう」


「もっと頑丈な舟じゃないと、さっきの二の舞ということですね……」


 二人が深刻そうに悩む中、ある打開策を提示する者がいた。


『頑丈な舟、か。ならばワシの力で硬い舟を作れば良かろう』


「磐座、重過ぎて沈んだりしないかい?』


『岩石だけで作れば沈むじゃろうな。そこは土や鉱石のバランスじゃ。それに基となる舟を補強する形で作り直せば良い。壊されたとはいえ、あの木の舟をワシの力で土や鉱石を繋いだり覆ったりすれば良い』


「早速試してみますかっ!」


 ウタカタは磐座の力を使い、鉱石や岩石泥や土などを集めて、壊された木の舟を頑丈にする修復作業を試みた。


 全てを重たい岩や鉱石にせずに済むため、その舟はしっかりと水の上に浮いていた。


「できたよぉ、頑丈な舟がっ!」


『いつ魔物が襲ってくるかわからん。現世にもある屋形船のようにして、襲われても平気な強度で身を守るといい』


「なるほどねぇ。冴えてるねぇ、磐座」


『ふん、これくらいわけないわい』


 そして、ウタカタとセツナは修復した小舟に乗り込む。


「護送用の屋形船だねぇ」


「舟もかなり頑丈で、壊される心配もなさそうですね」


『やるじゃないか、磐座!アタシも負けてらんないねぇ』


『なぜ勝負しとるみたいになっとるんじゃ?』


『くそー、ボクより先に案を出すなんてー!次は負けないぞ!』


『いや、じゃからなぜ勝負に……』


『まぁ、適当に付き合ってやれ、磐座』


 鳴神が磐座の背中の甲羅をポンポンと叩く。


『肉球が当たっとるわい!』


「後は、どうやってあの魔物を退治するかだねぇ。斬っても水だからすぐに元通り。何か考えないと……」


『よーし、アタシの出番だねぇ!水でできてるんなら、熱で蒸発させて消しとばしてやればいいさねっ!」


 ウタカタは不知火に人差し指を向けて言った。


「それだっ!」


 ウタカタは刀を抜刀した。


 そして、刀の周りを陽炎のように揺らめく炎が覆う。


 そして、さっき襲ってきた魔物が再度襲いかかってきた。


「泡沫一閃・不知火!」


 魔物は、斬られたと同時にその切り口から瞬く間に燃えて蒸発した。


「水も燃えるんですね!?」


 あまりの炎の強さと斬撃の速さに、魔物の水の体が燃えているように見えたセツナ。


「あははっ、まさかぁ。火が強すぎるせいでそう見えてるんだよ」


 普通の斬撃では倒せなかった水の魔物を討伐できた。


「これで、あとは水の精霊さんを止めるだけだねぇ」


 二人は急いで封印の地である湖を目指す。


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