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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
水の精霊編
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27/51

釣り勝負

「ウタカタさん!釣りをする前に一つだけ……私に釣り方を教えてください!」


 セツナは釣りは初めてだった。


 釣りのコツや方法を何も知らない。


「すごいやる気だったけど、釣りは初めてなのか!よし、やり方を教えてあげるよセツナ」


 セツナは勝負の前にウタカタから釣りの基本を教わった。


「基本的にやることは、釣り針に餌をつけて垂らすだけだから簡単だよ。あとは、魚が引いているかどうかを見極める」


 釣り針がどこかに引っかかってしまわないように気をつけながら、セツナは餌を付けた釣り糸を垂らした。


「船で移動してるから、川釣りと違って魚が引いているかどうか見極めるのは難しいよぉ」


 ウタカタも海へと竿を振り糸を垂らした。


 二人の釣り勝負が始まった。


 しばらく様子を見る二人。


 すると、ウタカタがセツナにアドバイスする。


「魚が引いたらどのくらい竿に伝わるか、まずは感覚を覚えるといい。そのためには、糸を緩め過ぎないこと。魚の動きが竿まで伝わってなくなっちゃうからねぇ。でも、張りすぎてると糸が切れやすくなっちゃうから、このバランスが大事だよ」


「わかりました!まずは少し糸を張って様子を見ます」


 そして、最初に獲物が食いついたのは、ウタカタの方だった。


「きたねぇ!」


 ウタカタが握る竿に魚の動きが伝わってくる。


 糸が小さく小刻みに引っ張られる。


 そして、糸は強く引かれ竿が少ししなった。


「かかった!」


 ウタカタは魚が完全にかかるのを待っていた。


 それを確認したウタカタはリールを巻く。


「えっ!?もうですか?」


「どれくらいの獲物かねぇ」


 ウタカタは魚を釣り上げた。


「海はこんなに広いのに、釣れたのは結構小さい魚ですね」


 それは片手で持てるほどの、手のひらサイズだった。


「10cmもなさそうだねぇ。まぁ、ぼちぼちだねぇ。まずは1匹」


 ウタカタは針にかかった魚を海へと逃がす。


「魚、逃しちゃうんですね」


「今回は食用として釣ってるわけじゃないからねぇ。でも、うまい魚が釣れたら昼飯用にでもしようか」


「新鮮なまま味わえますねー。楽しみです」


「そんなことより、せっかくの釣り勝負なんだ。負けた方に罰ゲームでも用意しようや」


「え!?いきなりずるいですよ、ウタカタさん!」


「こっちの方が盛り上がるだろー?」


「罰ゲーム、何にするんですか?あんまり無茶なのはダメですよ!?」


「そうだねぇ、精霊さんにでも考えてもらおうか」


 ウタカタは特に何も思いつかなかったため、すぐに精霊に丸投げした。


『なら、得意技の披露とかどうかなー?』


 神凪がすぐさま提案をした。


「神凪は案を出すのが早くていいねぇ。よし、決まりだな」


「えぇー、私得意技なんてないですよー!」


「どんな人にだって一つや二つあるもんさ」


 ウタカタは釣り針に餌を付けて、再び海へと糸を垂らす。


『アンタら、どっちが勝つか賭けないかい?』


『精霊が賭け事か。全く、不知火おま——


『いいねー!やろやろー!ボクはセツナに賭けようかな』


『おい!まだ俺が話して——』


『ならアタシは、ウタカタに賭けるかねぇ。磐座、アンタはどうするんだい?賭けないのかい?』


『いや、だから俺が——』


『ワシは構わんぞ。そうじゃのう、やはりここは、経験者のウタカタ……といきたいところじゃが、セツナに賭けてみようかのう』


『…………俺は、ウタカタに賭けよう』


『決まりだねぇ。負けた奴は勝った奴の言うことをなんでも聞く、だ!!』


『えぇ!?それはいくらなんでもやりすぎだよー!』


『後出しでそれかよ、おい!』


『全く、加減を知らぬ奴よ』


「何だかあっちはあっちで、だいぶ盛り上がってるねぇ」


「負けませんよーウタカタさん!」


「まぁ、俺は負けても得意技を披露するだけだからいいけどねぇ」


 すると、今度はセツナが当たりを引いた。


 しかし、セツナは魚が引いていることに気づいていなかった。


「セツナ、それ多分引いてるよぉ」


「えぇ!?本当ですか?」


 セツナが竿を引きながらリールを回す。


 すると竿がしなった。


「ほんとだー!船で移動してるからそのせいかと思ってました」


「どのくらい糸が引かれたか、竿に伝わる衝撃がどのくらいか。この辺の感覚を身につけないといけないねぇ」


「ウタカタさんはどのくらい釣りをやってるんですか?」


「旅を始めてから、川を見つけた時はいつもやってるよ。だから、もう10年は経ってるかねぇ。流石にこの旅では一回も釣りなんてしてないけど」


 そして、ついにセツナが魚を釣り上げた。


「やったー、釣れましたー!見てください、小さくて可愛らしいですよ」


「可愛らしいかねぇ?」


 針を取り手に持つセツナ。


「さっきから口もパクパクさせてます。こうして見ると意外と可愛いですよ」


 セツナもウタカタに倣って魚を海へと逃す。


「私も1匹釣れました!次です!」


 セツナは餌を針に取り付け、次の獲物を狙う。


「負けないよぉ」


 釣りをしていると、空が明るくなってきた。


「おっ!7時になる頃かい?明るくなってきたねぇ」


 そして、セツナに大きな当たりがやってきた。


「またきました!逃しませんよー!」


 竿が激しくしなり、セツナはリールを力強く巻く。


「くぅ、強い。今回の魚、結構大きそうです」


 すると、ウタカタは自分の竿を置いてセツナの方へ向かい、セツナの竿を握った。


「こりゃあ結構大物だねぇ。大物の時は魚が強く引っ張ってる時に、無理にリールを巻かないことだ。糸が切れちゃうからねぇ」


「じゃあ、ここは引っ張られるまま、しばらく待った方がいいですか?」


「そうだねぇ。魚に体力を使わせて、力が弱くなったところを少しずつ引くといいよ」


 ウタカタがセツナを手助けする姿を見て、精霊たちが騒ぐ。


『おい、ウタカタ。お前何対戦相手のセツナを手助けしてるんだ。勝負しているのだぞ?』


『うるさいなー鳴神は!黙って見守ることもできないの!?』


『お主がそれを言うか!?』


『ハッハッハッ!アンタら相当賭けに負けるのが怖いんだねぇ!面白くなってきたよー!』


「勝負とはいえ、コツも何も教えてあげないのはフェアじゃないよねぇ」


『お主の言う通りじゃな』


『そうだよ。心が狭いぞー鳴神』


『言われてるねぇ、アンタ』


『勝てばいいのだ、勝てば!』


 セツナは、ウタカタに言われた通り魚が強く引いた時には無理にリールを巻かなかった。


 そして、引く力が弱くなった時を見計らってリールを素早く巻いた。


「だんだん魚が強く引いてこなくなりました!」


「もしかしたら、魚の方は疲れてきちゃったのかもねぇ」


 ウタカタは自分の竿を握り直した。


「おや?海面に影が見えてきたねぇ」


「えっ?すぐそこまで来てるってことですか?なら、もう少し!」


 セツナは力強く竿を引いてリールを巻く。


 水面に映った影は次第に大きく濃くなり、やがてその姿を現した。


「えいっ!」


 そして、その獲物をついに釣り上げた。


「見て見てウタカタさん!大きいですよ!!今まで小ぶりな魚ばっかりだったけど、私の顔より大きいです!!何センチくらいですかね!?」


「うーん、こいつは30センチ、いや、40センチ近くあるなぁ。大きい方だよ」


「やったー!こんなおっきいの釣れました。魚ってこんなに強い力で引くんですね、驚きました」


「でも、大事なのはどっちが多く魚を釣ったかだよ」


「わかってますよ、どっちも負けません!」


 そして、昼時となった。


「私が23匹で、ウタカタさんが16匹。結構差が出ましたね。私勝ってます!」


「数でも大きさでも負けてるねぇ。経験者としていいところ見せたいんだけどねぇ」


『ワシの予想通りじゃのう』


『やっぱり、ボクって見る目あるんだなー』


『おいウタカタ、勝てるんだろうなっ!』


『前半戦が終わったねぇ。こっからどうなるのか後半戦が楽しみだねぇ!』


 二人は釣った魚を並べた。


「食事用に取っておいた魚さん、捌いていきますかぁ」


 包丁を手に取り、ウタカタは魚を捌いた。


 それを刺身にして頂く二人。


「んー、美味しいです」


「新鮮だから美味いねぇ」


 昼食は刺身と作ってきたおにぎりを食べた。


「やっぱり、おにぎりはいいねぇ。これぞ旅って感じだねぇ」


「ウタカタさんはおにぎりが好きなんですね」


「元気も出たし、後半は巻き返すよぉ」


 二人の釣り勝負は後半戦へと突入した。




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