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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
水の精霊編
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船出の時

 セツナが部屋を訪れ、二人で旅程会議を始める。


「まず、黒太刀地方は一旦後回しにして、青薙地方を目指すでいいですか?」


 セツナは単刀直入に聞いた。


「うん、青薙に行こう」


 ウタカタも、セツナの意図を汲み取ったのか、余計なことは言わずに短く答えた。


「では、本題の経路についてです。地図を見てください。ご覧の通り、赤峰は山脈に囲まれていて、地続きで移動できるのは白刃野地方だけです。つまり、ここからは白刃野地方へしか行けません」


「なるほど、山脈が並び立っているから、赤峰から直接青薙には行けないんだね」


「はい、それともう一つ。青薙地方へは白刃野地方と繋がっている海峡を通るしか道が存在しません」


「なら、また白刃野地方へ戻ってから青薙を目指すことになるのかな」


「ただ、それだとかなり時間がかかってしまうので私から提案があります。海を渡りましょう!」


「海!?つまり、船で行くってことかい!?」


「はい。ただ、青薙は今津波による災害が発生しています。被害範囲が、青薙を囲む海全域にまで渡っていれば、船は飲まれてしまって危険です」


「それでも海を渡る方法を選ぶってことは、まだそこまで被害が拡大していないと読んでるんだね?」


「お風呂上がりに出会った男性客は、青薙から船で来たと言っていました。まだ、海を渡って来れる。なら!まだ海を渡って行ける、そう思っています」


「どちらにしろ、危険なことには変わりないからねぇ。ただ、早く着く海上ルートの方が被害の規模が大きくなる前に辿り着ける。そっちの方が安全に到着できる可能性が高いと思うから、俺は海を渡るに賛成だね」


 ここまで、いつになく淡々と話を進めた二人。


 それだけ道中の旅は過酷だ。


「では、船を使って海を渡りましょう。これなら道のりを気にせずに、一直線に青薙地方へと向かえます」


「闇の精霊さんは、だいぶ後回しになったねぇ。何事もなければいいんだけど」


 闇の精霊による被害がどれほどのものか、二人は把握できないでいた。


 ただ、暗闇が空を覆っている、それしか知らなかった。


 それ以外の被害が出ていないことを祈りながら、二人は先に水の精霊の元へと向かうことに決めた。


「船で移動できる分、普段よりも体力を温存できるねぇ。もしかしたら、船旅を満喫しながら青薙を目指せるかもしれないよ」


「本当ですか!?安全に移動できるなら、それに越したことはありませんね!最大限旅を楽しみながら青薙を目指しましょうか」


 先ほどまでの重く真面目な話から一転、旅を楽しむことに話題が変わった。


 一度計画さえ決まれば後は楽しむだけ。


 旅の中で計画は変わっていく。


 二人は子供のように、明日の船旅で何をするか話し合う。


「ウタカタさん、船釣りとかどうですか?ウタカタさんでも、これはやったことないんじゃないですかね!?」


「おぉ、いいねぇ。普通の釣りは散々してきたけど、船上で釣りかぁ。オツだねぇ」


 二人は明日以降の旅の方針を決め、セツナはウキウキでウタカタの部屋を後にした。


「セツナ、随分とこの旅を楽しんでるねぇ。最初会った頃は肩に力が入り過ぎてたから少し心配だったけど、これなら大丈夫そうだねぇ」






 翌日——。





 二人は津波の被害と共に釣りのことも考え、早朝に出発した。


 まだ、外は暗かった。


 ウタカタとセツナは、港で青薙へと向かう船を探した。


 赤峰は周りを山で囲まれているため、地上よりも海上の交通の方が盛んだった。


「さぁ!青薙へ向かいますよ、ウタカタさん!」


 セツナは借りた釣り竿を手に持ち、やる気に満ちていた。


「こんな朝早くからすごいやる気だねぇ。君のその活力には脱帽するよ、帽子ないけど」


「何バカなこと言ってるんですか!さぁ、どっちの方が多く釣れるのか、勝負ですよー!」


 セツナは船に乗り込む。


 まだ船は出航準備中だが、セツナの気がはやる。


「この船の船長は、セツナかもしれないねぇ」


 まだ眠そうにしているウタカタは、地上から船へと架けられている板を、ゆっくりと踏みしめて乗船した。


 荷物を船室へ置き、小さく狭い甲板へと出る。


 セツナはすでに準備万端だった。


「いつでもやれます!どっからでもかかってきなさい!」


 竿を両手で握り締め、海に叫ぶ。


「これは、むしろこの先俺の体力が保つのか心配だ」


 生気が抜けたような顔で呟く。


 そしていよいよ、船が出航した。



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