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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
火の精霊編
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23/51

力比べ

 ウタカタの放った大剣が、火の精霊の胴体を狙う。


 火の精霊は片腕で、これを止めようと試みた。


 しかし、凄まじい破壊力の大剣が、ドリルで壁に穴を開けるように、簡単に腕を貫き破壊した。


 衝突した瞬間、片腕では止まらないと判断して、もう片方の腕も前に突き出す。


 先程までの威力は失われたものの、もう片方の腕も風と雷が削りながら大剣が貫いていく。


 そしてついに、胴体へと届いた。


 ギャリギャリギャリギャリッッ!!!


 凄まじい掘削音を立てて胴体が削れていく。


 火花なのか、それとも火の精霊の肉体であるマグマなのか、何が飛び散っているのかわからないほど、胴体の溶岩を削っていく。


 少しずつ前へと押し出されていく大剣。


 それは確実に、火の精霊の胴体内へと侵入していった。


 しかし——。


 火の精霊の破壊された腕が再生して、大剣が進むのを止めるように抑え込む。


 その抑え込む腕は、みるみるうちに削られていくが、少しずつ大剣の勢いを殺していった。


 再生と掘削を繰り返す腕がもう一本。


 火の精霊は、一度破壊された両腕で胴体を貫かれまいと、覆うようにして両端から抑え込む。


 再生速度の方が圧倒的に遅かった。


 しかし、それは十分に大剣の威力を殺すことに役立った。


 ついに、ウタカタの放った大剣は、胴体に僅かに突き刺さったまま動きを止めた。


「あともう一押しなんだ!頼む、押し込めー、ウタカタァァァァーーー!!」


 ウタカタは全体重をかけて全力で大剣を押し込む。


 しかし、大剣はびくともしなかった。


 まだ大剣は風を纏い、雷も纏っている。


 しかし、その勢いのほとんどを火の精霊の両腕によって殺されてしまった。


 異様に硬い胴体、勢いを殺すきっかけを作った諸悪の根源。


 一度勢いを失い止まってしまったら、次はなかなか動き出せない。


 ウタカタは、諦めずに腕の力で押し込もうとしていた。


「あそこで止まりさえしなければ、そのまま貫けていれば、クソがぁぁぁーー!!」


 声を張り腹に力を入れ、腰を落とし体重を乗せて、強く踏ん張り地面を蹴り、肩から拳までの腕を一直線に伸ばすように力を込めて押し出す。


 持てる技術と力の限りを尽くしても、大剣は動かなかった。


 火の精霊の両腕が再生していく。


 このまま再生が終われば、ウタカタを拳が襲う。


 今のウタカタでは、成す術なくやられるだろう。


 ウタカタは、ここで決められなければ終わることをすでに感じ取っていた。


「あと少しなんだ。あと少し、もう少しだけ、勢いがつけば動き出す。そうすれば、胴体を貫くところまではいける。頼む、何でもいい!俺に力を、くれーー!!」


 ウタカタは今日起きた出来事を振り返っていた。


 一番どこがピンチだったか。


 今なのか?それとも洞窟倒壊時か?


 そして、ウタカタは閃いた。


「あった、止まった勢いを……復活させる……方法!!」


 ウタカタは両手で剣の柄を握る。


 肘を折り曲げて、短刀を相手に突き刺すように、大剣を構えた。


 ブオオオォォォォォーーーーッッッ!!!


 そして、金剛鎧装の背中の換気機構がものすごい轟音をたてる。


「金剛鎧装・神凪改!」


 空気を一気に取り込み、そして一気に後方へと噴き出す。


 それによって得た推進力で、ウタカタは前へと吹き飛ぶ。


 ガタガタガタッ!!


 胴体に突き刺さり止まっていた大剣が動き出す。


 さっきまでびくともしていなかった大剣が震え出した。


 ウタカタは、握る大剣を前へと押しやる。


「貫けえぇぇぇぇっ!!」


 吹き飛ぶ勢いで、火の精霊の体が山の斜面へと叩きつけられる。


 ドズンッ!


 ウタカタの握る大剣は、突き刺さった火の精霊の胴体をさらに深く突き刺し、そのまま貫いた。


 火の精霊の体は、岩山の斜面へ串刺しとなって動かない。


 巨大な岩の剣が胴体全域を貫いた。

 

 すると、胴体で何かが輝く。


「これは……核!」


 胴体には核があった。


 肉体を穿つ大剣は、核ごと胴体を破壊したのだ。


 ピキピキッ!パキイィィーーーンッッ!!


 核が砕け散る音が響き渡り、戦いの終焉を知らせた。


「完全に勢いを殺されて、押さえ込まれた……。単純な力比べなら……精霊さん、あんたの勝ちだ」


 ウタカタは、勢いよくその場に尻餅をついて座った。


「ふぅーーーっ……」


 深いため息をひとつ付く。


 両手を地面について空を仰ぎ見た。


 火山灰はまだ降っている。


 噴煙もまだ立ち上っている。


 噴火もまだ収まってはいない。


 しかし、火の精霊の暴走は鎮めた。


 封印してしばらくしたら、空は今までのように明るい空になるのだろうか。


 そう思いながら、ウタカタは勝利の余韻に浸っていた。



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