力比べ
ウタカタの放った大剣が、火の精霊の胴体を狙う。
火の精霊は片腕で、これを止めようと試みた。
しかし、凄まじい破壊力の大剣が、ドリルで壁に穴を開けるように、簡単に腕を貫き破壊した。
衝突した瞬間、片腕では止まらないと判断して、もう片方の腕も前に突き出す。
先程までの威力は失われたものの、もう片方の腕も風と雷が削りながら大剣が貫いていく。
そしてついに、胴体へと届いた。
ギャリギャリギャリギャリッッ!!!
凄まじい掘削音を立てて胴体が削れていく。
火花なのか、それとも火の精霊の肉体であるマグマなのか、何が飛び散っているのかわからないほど、胴体の溶岩を削っていく。
少しずつ前へと押し出されていく大剣。
それは確実に、火の精霊の胴体内へと侵入していった。
しかし——。
火の精霊の破壊された腕が再生して、大剣が進むのを止めるように抑え込む。
その抑え込む腕は、みるみるうちに削られていくが、少しずつ大剣の勢いを殺していった。
再生と掘削を繰り返す腕がもう一本。
火の精霊は、一度破壊された両腕で胴体を貫かれまいと、覆うようにして両端から抑え込む。
再生速度の方が圧倒的に遅かった。
しかし、それは十分に大剣の威力を殺すことに役立った。
ついに、ウタカタの放った大剣は、胴体に僅かに突き刺さったまま動きを止めた。
「あともう一押しなんだ!頼む、押し込めー、ウタカタァァァァーーー!!」
ウタカタは全体重をかけて全力で大剣を押し込む。
しかし、大剣はびくともしなかった。
まだ大剣は風を纏い、雷も纏っている。
しかし、その勢いのほとんどを火の精霊の両腕によって殺されてしまった。
異様に硬い胴体、勢いを殺すきっかけを作った諸悪の根源。
一度勢いを失い止まってしまったら、次はなかなか動き出せない。
ウタカタは、諦めずに腕の力で押し込もうとしていた。
「あそこで止まりさえしなければ、そのまま貫けていれば、クソがぁぁぁーー!!」
声を張り腹に力を入れ、腰を落とし体重を乗せて、強く踏ん張り地面を蹴り、肩から拳までの腕を一直線に伸ばすように力を込めて押し出す。
持てる技術と力の限りを尽くしても、大剣は動かなかった。
火の精霊の両腕が再生していく。
このまま再生が終われば、ウタカタを拳が襲う。
今のウタカタでは、成す術なくやられるだろう。
ウタカタは、ここで決められなければ終わることをすでに感じ取っていた。
「あと少しなんだ。あと少し、もう少しだけ、勢いがつけば動き出す。そうすれば、胴体を貫くところまではいける。頼む、何でもいい!俺に力を、くれーー!!」
ウタカタは今日起きた出来事を振り返っていた。
一番どこがピンチだったか。
今なのか?それとも洞窟倒壊時か?
そして、ウタカタは閃いた。
「あった、止まった勢いを……復活させる……方法!!」
ウタカタは両手で剣の柄を握る。
肘を折り曲げて、短刀を相手に突き刺すように、大剣を構えた。
ブオオオォォォォォーーーーッッッ!!!
そして、金剛鎧装の背中の換気機構がものすごい轟音をたてる。
「金剛鎧装・神凪改!」
空気を一気に取り込み、そして一気に後方へと噴き出す。
それによって得た推進力で、ウタカタは前へと吹き飛ぶ。
ガタガタガタッ!!
胴体に突き刺さり止まっていた大剣が動き出す。
さっきまでびくともしていなかった大剣が震え出した。
ウタカタは、握る大剣を前へと押しやる。
「貫けえぇぇぇぇっ!!」
吹き飛ぶ勢いで、火の精霊の体が山の斜面へと叩きつけられる。
ドズンッ!
ウタカタの握る大剣は、突き刺さった火の精霊の胴体をさらに深く突き刺し、そのまま貫いた。
火の精霊の体は、岩山の斜面へ串刺しとなって動かない。
巨大な岩の剣が胴体全域を貫いた。
すると、胴体で何かが輝く。
「これは……核!」
胴体には核があった。
肉体を穿つ大剣は、核ごと胴体を破壊したのだ。
ピキピキッ!パキイィィーーーンッッ!!
核が砕け散る音が響き渡り、戦いの終焉を知らせた。
「完全に勢いを殺されて、押さえ込まれた……。単純な力比べなら……精霊さん、あんたの勝ちだ」
ウタカタは、勢いよくその場に尻餅をついて座った。
「ふぅーーーっ……」
深いため息をひとつ付く。
両手を地面について空を仰ぎ見た。
火山灰はまだ降っている。
噴煙もまだ立ち上っている。
噴火もまだ収まってはいない。
しかし、火の精霊の暴走は鎮めた。
封印してしばらくしたら、空は今までのように明るい空になるのだろうか。
そう思いながら、ウタカタは勝利の余韻に浸っていた。




