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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
火の精霊編
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22/51

三位一体

 ウタカタは、岩の大剣で火の精霊へと斬りかかる。


 この剣に切れ味はない。


 あるのは、圧倒的な質量と硬度。


 それを力で強引に叩きつけ、対象を破壊する。


 そしてその大剣が、火の精霊を襲う。


 火の精霊は腕で防ぐ。


 そして、間合いを詰めてウタカタへ殴りかかる。


「ぐふっ」


 重い鎧に加えて重い剣。


 ウタカタに回避する術はなかった。


 しかし、ウタカタにはこれしかなかった。


 いくら速く動こうとも、流れてくるマグマや転がっている溶岩を避けながら、火の精霊との戦闘は無謀だった。


「どっちが頑丈か、見せつけてやるぜえー!」


 ウタカタは巨大な剣を何度も激しく振った。


 火の精霊はそれを腕で受けては反撃を繰り返す。


 互いに一歩も譲らず攻撃の手を緩めない。


 その戦いはまるで、防御を捨てたインファイトの殴り合いだった。


「ホントは、君の核を探したいところだけど、そんなことできる余裕なさそうだからねぇ。全力で君を壊させてもらうよお!」


 ウタカタはどっしりと両手で剣を構えて腰を落とす。


 そして、大きく振りかぶって勢いよく叩きつけた。


 火の精霊は上から叩きつけてくる大剣を片腕で防いだが——。


 バキバキッ!


 ズドンッ!


 火の精霊の溶岩の腕は砕け落ちた。


 砕けたところからマグマが垂れ流れてくる。


 そして、そのまま砕けた腕で殴りかかってきた。


 その砕けた部位からマグマが飛び散る。


「ふんっ!」


 ウタカタは丹田に力を入れ、振り下ろした剣を素早く持ち上げて切り上げる。


 その切り上げによって、火の精霊の拳を払う。


 しかし、火の精霊は止まらない。


 もう片方の腕でも殴りかかってくる。


 ウタカタは、素早く大剣の側面で拳を弾く。


 大きくて取り回しが悪くても、基本的な扱いは刀と同じ。


 刀身が大きい分受けやすいため、間に合いさえすれば比較的防御はしやすかった。


 しかし、一度防御に回ると火の精霊の激しい連続攻撃で、なかなか手が出せなくなってしまった。


 その間に、砕けた腕は再生した。


「本当に厄介だねぇ、再生能力ってのは」


 ウタカタは戦闘の主導権を取り返すため、攻撃を捌きながら反撃に出た。


「磐境障壁!」


 殴りかかってきた拳を、下から突き上げる石柱の勢いで上へと弾いた。


 火の精霊は一瞬よろめきバランスを崩す。


 そして、繰り出した腕が上へと弾かれて脇が開いた。


「そこだっ!磐座破斬!」


 大きく踏み込み、水平に大剣を振り抜く。


 しかし——。


 ガギィンッ!!


「なっ!?」


 胴体は異様に硬く、直撃したはずの磐座破斬は火の精霊の脇腹で勢いを失い、止まってしまった。


 そして、火の精霊はこの隙を逃すことなくウタカタを捉えた。


 ドズンッ!


「うっぐぅ……!」


 もろに攻撃をもらい、一瞬両足が地面を離れる。


 しかし、すぐに大地の感触を確かめるように、静かに優しく地に足がつく。


 ウタカタは膝をついて倒れまいと、構えを解かずに火の精霊へと剣を向けたまま立つ。


 しかし、その体はプルプルと震えていた。


「もう一度隙を突いた直撃パンチもらったら、立っていられないかもしれないねぇ……」


 ウタカタの呼吸はまだ荒くはなかった。


 しかし、深いダメージを負ってしまい立っているのがやっとだった。


 火の精霊の激しい追撃が襲う。


 ウタカタは捌くことだけに集中した。


『長期戦はまずいぞ。彼奴は雷……いや、鳴神よりも長く現世におる。確実に相当マナを溜めて強くなっておるぞ』


 土の精霊——磐座が、思わず声をかける。


「わかってるよぅ、そんなこと。だけどねぇ、硬くてダメなんだよ。文字通り歯が立たない。叩き壊すにしても容易じゃないよぅ」


『みんなの力を合わせればきっと勝てるよー!!特に、ボクの能力は優秀だからね!』


「そうだねぇ。みんなの力で……突破、しようかねぇ……」


 ウタカタの声には力がなかった。


『そもそもこの環境自体、人間が戦うにはあまりにも不利すぎる。どうするウタカタ?何か策はないのか?』


 ウタカタは、三柱全員の力を一つにまとめて、短期決戦を決意する。


「……やるしかなければ、やるしかないよねぇ」


 しかし、その声は次第に低く鋭くなっていった。


 力がないのではない。


 嵐の前の静けさ、力を抑えているのだ。


 そして、ウタカタの目には覚悟が映っていた。


 ウタカタの空気が変わった。


『やれるか!?ウタカタ』


「あぁ、任せておくれよぉ。俺は君たち三柱の暴走を鎮めた男だよ?」


 するとウタカタは、腰を深く落として両手で大剣を構える。


 しかし、その構えは今までと違っていた。


 岩の大剣を肩より上へと高く水平に構えた。


 そして、その切先は火の精霊へと向けられていた。


「いくら硬かろうと、一点突破の超重量による一突きは、ただじゃ済まないよぅ」


 軽口を叩くウタカタの表情は、至って真剣そのものだった。


 そして、大剣を螺旋状に風が纏い始めた。


 それは、大剣の先端を中心にした竜巻が起きているかの如く、鋭く激しい風が纏っていた。


『やったー!!ついに風を起こせたじゃないかウタカタ!まるで巨大な槍だね』


 風の精霊——神凪は嬉しそうにはしゃぐ。


「これも、切先を台風の目として竜巻を想像したんだよぉ。やっぱり、何か実物に頼らないと風を起こすのは難しいや」


 すると、風だけではなかった。


 鋭く空気を割く風から、バチバチッという音を立てて稲光が発生した。


 大剣から放電しているかのように、絶えず剣から電撃波が放たれる。


『これは、俺の……!』


 思わず声を漏らす雷の精霊——鳴神。


 自分の能力を、ウタカタが自身の技に応用していることに驚き、言葉にならなかった。


「この旅の間、たくさん聞いたからねぇ。どういうことができて、何が得意な性質なのか。威力を増すなら、やっぱこれでしょっ」


 ウタカタの構える岩の大剣からは、風と電撃が入り混じり凄まじい音を立てていた。


「技名、考えたんだけどさ。みんなの力をまとめたから、みんなの名前を技名に入れようと思ったけど、技名が長くなりすぎちゃってね。名前の順番とか、命名した自分でも忘れちゃうと思ったから、覚えやすい技名にしたよ。たぶん……文句が出てくると思うけど」


 そう言われ、三柱はどんな技名なのかと、きょとんとしている。


「これが、今の俺の、全力の一点突破最大火力だ。受けられるものなら受けてみな!風雷(ふうらい)・磐座刺突(いわくらしとつ)!!」


 言い終わると同時に、ウタカタは勢いよく地面を蹴り、前へと出る。


 そして、勢いそのままに火の精霊へと構えた大剣を突き出す。


 岩の大剣を覆う風が螺旋状に渦巻き、刀身からは無数の稲妻が迸る。


 それはもはや、剣というより巨大な槍そのものだった。


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