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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
火の精霊編
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21/51

硬さ比べ

 マグマが流れ落ちてくる山を登り、やがて広い場所に出た。


 そこはまだ山頂ではなかったが、広場には洞窟のようなものが見えた。


「もしかしてあれかい?」


 見つけた洞窟が火の精霊の封印の地か、セツナに尋ねる。


 すると、セツナが答えた。


「はい。あの洞窟の最奥に火の精霊様は封印されていました」


 それを聞き、ウタカタはようやく辿り着いたと、ホッとしたように息を吐いた。


「それじゃあ、もったいつけずにご対面といこうか」


 ウタカタは歩を進めた。


 その洞窟の岩壁は高熱で真っ赤な溶岩と化し、岩の隙間から所々マグマが垂れ流れている。


 洞窟内はものすごい高温で、ウタカタは金剛鎧装・神凪改の換気を今まで以上に強める。


 背中から排出される風がものすごい音を立てながら、超高温の熱風を放つ。


「おぉっと、風の勢いを強くしたら推進力が出たよ。こいつは上手く使えたら、ちょっと進むのが楽になるかもねぇ」


 ウタカタは少しニヤつきながら言った。


 そして、洞窟の奥へと進む。


 洞窟という逃げ場のない場所で、熱が滞留している。


 洞窟の天井はドロドロに溶けた溶岩となり、頭上からもマグマが垂れ落ちてくる。


 そして、その最奥にそれはいた。


 身体は真っ赤に赤熱した溶岩の塊でできており、関節のようなつなぎ目からはマグマが滴り落ち、赤黒い見た目をしていた。


「お出ましだね、火の精霊さん」


 火の精霊がウタカタを視認すると、ウタカタが構える間もなく襲ってきた。


 巨大な溶岩の塊が、赤熱した拳を構えて飛びかかる。


 ウタカタは後方へと飛び退き、迫り来る拳をかわした。


 ズドンッ!


 ものすごい地響きを立てて揺れた。


 この洞窟自体は決して狭くはない。


 しかし、溶岩の化け物と戦うにはあまりにも狭すぎる洞窟で、ウタカタは防戦一方となり刀を抜けずにいた。


「こりゃあ、まずいねぇ。どうも」


 火の精霊の拳が洞窟の岩壁を殴りつける。


 次第に洞窟の壁は歪み、形を変えていった。


 すると——。


 ミシミシッ!


 ウタカタは何かが軋む音に気づいた。


「まずい!逃げろ、セツナー!洞窟が崩れるぞ!!」


「え!?ウソウソウソウソウソーーーっっ!!」


 ミシミシと悲鳴を上げる音から、やがてゴゴゴゴゴゴという地響きへと変わり、洞窟が揺れ出した。


 セツナは結界を張りながら、全速力で洞窟の出口へと駆け出した。


「生き埋めなんてイヤーーー!!」


 いくら結界で身を守っても、埋れもてしまえば出ることはできない。


 セツナは少し涙を浮かべながら走り、なんとか脱出が間に合った。


「やばいやばいやばいよーー!全く速く走れないよ!」


 ウタカタも全力で走るが、金剛鎧装が重くて早く走れない。


 かといって、マグマに覆われていて金剛鎧装を解くわけにもいかなかった。


「八方塞がりだね、こりゃあ!言ってる場合じゃないんだけどねえ!!」


 いつものような余裕はなく、早口で焦りながら軽口を叩くウタカタ。


 セツナが出口付近で手招きをしている。


 しかし、そこまでまだ遠かった。


 ウタカタは内心間に合わないと焦っていた。


 まだ洞窟が崩れていないことが奇跡のように感じていた。


 しかし、その奇跡は長くは続かなかった。


 ガラガラガラガラッ!


 ドズンッ!


 天井を支える壁が崩れ出した。


 そして、支えを失った天井の岩も崩れ始めた。


 ウタカタと出口を繋ぐ道に大きな岩が落ちてくる。


 次第に出口を塞いでいく。


「やばい!なんとか瞬間的に加速する方法はないか!?」


 ウタカタは、突破口を見つけようと考えを巡らせつつも、同時に走馬灯のように今までのことを思い返していた。


 しかし、突破口はその走馬灯から閃いた。


「あれがあるじゃないか!!」


 ウタカタは即座に、背中の熱を排出する換気機構の換気を強めた。


 大量に空気を取り込み、取り込んだ空気と共に中の空気を一気に背中から後方へと放出した。


 ブオオオオォォォォォォォーーーーッッッ!!


 ウタカタは、重たい金剛鎧装を身に纏いながら、出口へと吹き飛ばされるように宙を舞っていった。


 一瞬で洞窟の外へと押し出されたウタカタ。


 間一髪、洞窟に押し潰されずに済んだ。


「ふぅー。九死一生だったねぇ」


 普段のような余裕そうな口調が戻ってきた。


 しかし、脅威はまだ終わらなかった。


 崩れた洞窟の岩の中から、巨大な溶岩の化け物が飛び出す。


「こいつは見た目通り硬そうだし、それに熱そうだねぇ」


 ウタカタは、火の精霊の肉体である岩と岩の隙間から垂れ落ちるマグマを見ながら、刀を構える。


「こりゃ、刀じゃ斬れそうにもない。下手したら、刀の方が溶けちゃうねぇ」


 すると、ウタカタの刀が岩で覆われていく。


「……知ってるかい? 精霊さん」


 刀身を覆っていた岩が、瞬く間に巨大な刃へと変貌していった。


「硬いものってのは、意外と衝撃に弱いんだよ」


 斬馬刀ほどの大きな剣となり、ウタカタは両手で巨大な大剣を握り直す。


「精霊さんの体は、斬れそうにないけど叩き壊すことならできそうだ。だから——」


 ウタカタは、大剣を大きく振りかぶる。


「硬いものは斬るんじゃなくて、叩き斬る!」


 火の精霊へと駆け出した。


「どっちが硬いか勝負といこうか、磐座破斬!!」



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