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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
火の精霊編
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19/51

到着 赤峰

 翌日、二人は噴火が起きていると噂のあった赤峰地方を目指す。


「セツナ、赤峰地方はどんな所なんだい?」


 次に目指す火の精霊の封印の地は、島の北部に位置する赤峰地方。


「はい。赤峰地方は多くの山が連なる山岳地帯で、火の精霊様は岩山の洞窟に封印されています」


「岩山を登った先の洞窟を、今度は進むわけねぇ」


「街の人の噂では、すでに噴火が起きていて火山灰が降り注いでいるようです。ここから赤峰まではかなりあります。到着する頃にはもっと被害が拡大しているかと……」


「なるべく、急いで向かいますかぁ」


 ウタカタは欠伸をしながら言った。


 ここしばらく、空はずっと暗い。


 陽の光が差し込まない生活を続け、身体が朝を認識しなくなり、眠気がなかなか取れない。


 しかし、ウタカタの目はしっかりと赤峰の方角を捉え、火の精霊の封印の地を見据えているようだった。


 そして、ウタカタとセツナは、白刃野地方の街を出発した。


 目的地は、北に位置する赤峰地方。


 そこで起きているという、火の精霊による災厄を止めるため動き出す。


 街を出発し、街道へと出てしばらく進む。


 相変わらず空は暗い。


 しかし、雲があるわけではない。


 空そのものが、黒く染まっている。


「……この暗さ、いつまで続くんでしょうね」


 セツナが空を見上げる。


「さあねぇ。闇の精霊さんを封印すれば、元に戻るんじゃないかねぇ」


「そうだといいのですが……」


 二人は街道を北へ進み続ける。


 白刃野を離れるにつれて、人の数は少なくなっていった。


 街を離れ、いくつもの集落を通り過ぎ、さらに北へ。


 途中で何度か宿を取り、馬を借りられる場所では馬を使いながら、二人は赤峰地方を目指した。


 借りた馬を返せる街は決まっているため、常に馬での移動はできない。


 できるだけ馬を借りて、街の移動を早めるが、徒歩での移動もしなくてはならない。


 道中、二人が目にする景色は少しずつ変化していった。


 白刃野地方を出発した頃は、黒い空、薄暗い街道。


 しかし、北へ進むにつれて、その暗闇は徐々に薄れていった。


「……あれ?」


 ある日の昼頃。


 セツナが足を止めた。


「どうしたんだい?」


「空が……」


 ウタカタも空を見上げる。


 先ほどまで黒く染まっていた空の一部が、わずかに明るくなっていた。


 さらに北へ進む。


 すると、黒い空は少しずつ後方へ取り残されていった。


「こいつは……」


 ウタカタは振り返り、遠くに広がる暗闇を眺める。


「どうやら、闇の精霊さんの影響は、赤峰までは届いていないみたいだねぇ」


「ということは……」


「少なくとも、北へ進む分には暗闇を心配する必要はなさそうだ」


 セツナは少しだけ安堵したように息を吐いた。


 しかし、しばらく歩き進めると——。


 ひらり。


 何かが、ウタカタの肩に落ちた。


「……ん?」


 ウタカタはそれを指で摘まみ、見つめた。


 降ってきたそれは、黒く、細かな粒だった。


「何だいこれ……?」


 セツナも手のひらを差し出す。


 そこへ、また一粒。


 そして二粒、三粒と落ちてくる。


「なんでしょう、これ……」


 ウタカタは北の空へ目を向ける。


 遠くの山々。


 そしてさらに進んでいくと、赤黒い煙が空へ立ち上っていた。


「……まさか、灰?」


 ウタカタは、街の住民の話を思い出す。


「火山灰がここまで!?」


 セツナは、被害が赤峰地方だけではなく、さらにその先まで広がっていることに気づき、驚愕した。


 二人は再び歩き出す。


 その歩みは先ほどよりも速くなっていた。


 二人は火の精霊の封印の地を目指して進み続ける。


 そして、出発から一週間ほど。


 二人はついに、赤峰地方へと足を踏み入れた。


 そこには、これまで見てきた景色とはまるで違う光景が広がっていた。


 空は明るい。


 しかし、その空には灰色の煙が広がっている。


 大地には細かな灰が積もり、遠くからは地鳴りのような音が響いていた。


「……これは、ひどいねぇ」


 ウタカタは、赤峰地方の奥にそびえる巨大な岩山を見上げた。


 その山の頂上から、赤黒い煙が絶え間なく噴き上がっている。


 そして——。


 山肌の一部が、赤く光っていた。


 まるで山そのものが、燃えているかのように。


「ウタカタさん……」


「ああ」


 ウタカタは刀の柄に手を添える。


「どうやら、急いだ方がよさそうだねぇ」


 二人は、赤く染まる岩山へと歩を進めた。


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