到着 赤峰
翌日、二人は噴火が起きていると噂のあった赤峰地方を目指す。
「セツナ、赤峰地方はどんな所なんだい?」
次に目指す火の精霊の封印の地は、島の北部に位置する赤峰地方。
「はい。赤峰地方は多くの山が連なる山岳地帯で、火の精霊様は岩山の洞窟に封印されています」
「岩山を登った先の洞窟を、今度は進むわけねぇ」
「街の人の噂では、すでに噴火が起きていて火山灰が降り注いでいるようです。ここから赤峰まではかなりあります。到着する頃にはもっと被害が拡大しているかと……」
「なるべく、急いで向かいますかぁ」
ウタカタは欠伸をしながら言った。
ここしばらく、空はずっと暗い。
陽の光が差し込まない生活を続け、身体が朝を認識しなくなり、眠気がなかなか取れない。
しかし、ウタカタの目はしっかりと赤峰の方角を捉え、火の精霊の封印の地を見据えているようだった。
そして、ウタカタとセツナは、白刃野地方の街を出発した。
目的地は、北に位置する赤峰地方。
そこで起きているという、火の精霊による災厄を止めるため動き出す。
街を出発し、街道へと出てしばらく進む。
相変わらず空は暗い。
しかし、雲があるわけではない。
空そのものが、黒く染まっている。
「……この暗さ、いつまで続くんでしょうね」
セツナが空を見上げる。
「さあねぇ。闇の精霊さんを封印すれば、元に戻るんじゃないかねぇ」
「そうだといいのですが……」
二人は街道を北へ進み続ける。
白刃野を離れるにつれて、人の数は少なくなっていった。
街を離れ、いくつもの集落を通り過ぎ、さらに北へ。
途中で何度か宿を取り、馬を借りられる場所では馬を使いながら、二人は赤峰地方を目指した。
借りた馬を返せる街は決まっているため、常に馬での移動はできない。
できるだけ馬を借りて、街の移動を早めるが、徒歩での移動もしなくてはならない。
道中、二人が目にする景色は少しずつ変化していった。
白刃野地方を出発した頃は、黒い空、薄暗い街道。
しかし、北へ進むにつれて、その暗闇は徐々に薄れていった。
「……あれ?」
ある日の昼頃。
セツナが足を止めた。
「どうしたんだい?」
「空が……」
ウタカタも空を見上げる。
先ほどまで黒く染まっていた空の一部が、わずかに明るくなっていた。
さらに北へ進む。
すると、黒い空は少しずつ後方へ取り残されていった。
「こいつは……」
ウタカタは振り返り、遠くに広がる暗闇を眺める。
「どうやら、闇の精霊さんの影響は、赤峰までは届いていないみたいだねぇ」
「ということは……」
「少なくとも、北へ進む分には暗闇を心配する必要はなさそうだ」
セツナは少しだけ安堵したように息を吐いた。
しかし、しばらく歩き進めると——。
ひらり。
何かが、ウタカタの肩に落ちた。
「……ん?」
ウタカタはそれを指で摘まみ、見つめた。
降ってきたそれは、黒く、細かな粒だった。
「何だいこれ……?」
セツナも手のひらを差し出す。
そこへ、また一粒。
そして二粒、三粒と落ちてくる。
「なんでしょう、これ……」
ウタカタは北の空へ目を向ける。
遠くの山々。
そしてさらに進んでいくと、赤黒い煙が空へ立ち上っていた。
「……まさか、灰?」
ウタカタは、街の住民の話を思い出す。
「火山灰がここまで!?」
セツナは、被害が赤峰地方だけではなく、さらにその先まで広がっていることに気づき、驚愕した。
二人は再び歩き出す。
その歩みは先ほどよりも速くなっていた。
二人は火の精霊の封印の地を目指して進み続ける。
そして、出発から一週間ほど。
二人はついに、赤峰地方へと足を踏み入れた。
そこには、これまで見てきた景色とはまるで違う光景が広がっていた。
空は明るい。
しかし、その空には灰色の煙が広がっている。
大地には細かな灰が積もり、遠くからは地鳴りのような音が響いていた。
「……これは、ひどいねぇ」
ウタカタは、赤峰地方の奥にそびえる巨大な岩山を見上げた。
その山の頂上から、赤黒い煙が絶え間なく噴き上がっている。
そして——。
山肌の一部が、赤く光っていた。
まるで山そのものが、燃えているかのように。
「ウタカタさん……」
「ああ」
ウタカタは刀の柄に手を添える。
「どうやら、急いだ方がよさそうだねぇ」
二人は、赤く染まる岩山へと歩を進めた。




