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精霊封印譚  作者: マッキー黒ペン
火の精霊編
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18/51

五つの地方

 ウタカタとセツナは、今日出発した街へと戻ってきた。


 流浪の剣士と巫女の姿は、そうお目にかかることではないため、街の住民たちは二人を物珍しそうに見物に集まる。


 精霊との激闘を制したことなど、街の住民は知らない。


 二人の凱旋を讃えるものは誰一人いなかった。


 そこに、昨日街で出会った一人の男と再会した。


「あれ?巫女様に剣士様、どうしたんですか?もしかして、雷が止んでますが、お二人が精霊様を……?」


「そのまさかだねぇ」


「はい、封印して帰ってきました」


「ありがとうございます!おかげで昨日の雷雨が嘘のように止みました!これで少しは安心して暮らせそうです!」


 男は感謝を述べると、広場の方へと消えていった。


「あぁ言ってはくれたものの、まだ空は真っ暗闇。状況が改善されたとはいえ、まだ手放しでは喜べそうにもないねぇ」


 ウタカタが遠くを見つめて言った。


 その目はどこか寂しげだった。


「この暗闇が闇の精霊様によるものなのはほぼ間違いありません!明日は闇の精霊様の封印の地を目指しましょう」


 セツナは力強く言った。


 ここで二人は聞き捨てならない会話を耳にする。


「ねえ、聞いた?赤峰地方では噴火が起きて、大変なことになってるんだって!」


 見物に来た野次馬たちの中に、何やら不穏な会話をするものがいた。


「えぇ!?噴火?赤峰の方に火山なんてあったっけ?」


「それがないから、やばいのよ!」


「えっ?」


「どうして噴火したのか原因不明で、しかも!火山灰が空から降ってるらしいわよ!」


「うそー!?それなら、まだ雨の方がずっとマシよねぇ……」


 世間話にしては物騒な会話をする住民。


「おいおい、聞いたかいセツナ?火山でもない山が噴火したんだとよ……」


「赤峰ということは、この島の北部。まさか……火の精霊様……」


 セツナは嫌な予感がした。


 そしてウタカタが、ばつが悪そうに頬をポリポリと掻いて聞いた。


「あぁ、すまないねぇセツナ。俺この島の地理には詳しくないんだ、流浪の旅をしているからさぁ。それぞれの精霊さんが封印されている場所を、詳しく教えてくれないかなぁ?」


 ウタカタがセツナに頼み込んだ。


「わかりました。外ではなんですし、一旦宿を取って、部屋でお話ししましょう」


 セツナはテキパキと動いた。


 前回とった宿をもう一度とり、セツナはウタカタの部屋へと訪れる。


 二人は部屋で食事をしながら、セツナがこの島の地理について説明する。


「この島は五つの地方に分かれています。まず、私たちが今いる地方はこの島の中央部、白刃野(しらはの)地方です。そして北部が、先程上がった赤峰(あかみね)地方です。東部は黄鎌(おうがま)、南部は黒太刀(くろたち)、そして西部は青薙(あおなぎ)地方と言います」


 ウタカタは優雅に食事をしながらセツナの話を聞き、所々相槌を打つ。


 セツナは説明のため、なかなか食事が進まない。


 ウタカタがどんどん食べ進める姿を見て、冷たい目線を向ける。


「あぁ、悪いねぇ。説明してもらってる身なのに先に食事進めちゃって」


 悪いと言いつつも、一人食べ進めるウタカタ。


 セツナは不機嫌そうな口調に変わりながら、一度咳払いをしてから説明を続ける。


「赤峰地方には火の精霊様が封印されています。おそらく、街の人が話していた今回の噴火は、火の精霊様が原因かと」


 ウタカタは箸を止め、眉をひそめて言った。


「なるほどねぇ。噴火ともなると噴煙が上がって灰が降り注ぐ。しかも、ここは既に実害が出始めているみたいだ。そして最悪、マグマなんかも吐き出しかねないよねぇ」


 セツナは唾を飲んで尋ねる。


「そう考えると、火の精霊様を先に鎮めるべきですかね」


「闇の精霊さんの被害は、真っ暗になって厄介ではあるけど、今のところ大きな実害はないからねぇ。先に火の精霊さんのとこへ行こうか」


「はい!ですが、問題が一つ。闇の精霊様の封印の地は黒太刀地方。つまり、火の精霊様とは反対方向の南部に位置します。火の精霊様の次に立ち寄るとなると、かなり時間がかかります。どうしますか?」


 ウタカタは無精髭をさすりながら、少し考えて答えた。


「そうかぁ。じゃあ、もし別の精霊さんが暴走しているようなら、そっちへ立ち寄ってから闇の精霊さんとかに行こうか」


「はい、わかりました」


 当面の目先の目標は、赤峰地方に封印されている火の精霊を封印すること。


 そして、他の精霊の封印も解かれているようなら、そちらに立ち寄って封印。


 それから、闇の精霊の封印に赴くという流れだ。


「ところで、他の精霊さんはどこに封印されているんだい?」


 単純な疑問として、ウタカタは精霊がそれぞれどの地方に封印されているか尋ねる。


「先程説明した通り、火の精霊様は赤峰地方です。そして、闇の精霊様は黒太刀地方。水の精霊様は青薙地方で、空間の精霊様は黄鎌地方です」


「ふむふむ。で、光の精霊さんと時の精霊さんは?」


 セツナは少し間を置いてから話した。


「光の精霊様は私たちが出会った神社の本殿に封印されています。時の精霊様は黄鎌地方ですが、干潮の時にしか入れない特殊な洞窟に封印されています」


 やたらと白刃野地方に集中していることにウタカタは気づいた。


「白刃野地方に土、風、雷、光、時の精霊さんとたくさん封印されているけど、どうしてなんだい?」


「巫女の一族が、代々神社本殿を受け継いでいます。そのため、巫女が管理しやすいように、中央の白刃野地方に集中しているんです。ただ、九柱全ての精霊様を一箇所に集めると、何かあった時に危険なので、各地に分散封印しています」


「なるほどねぇ。よくわかったよ、ありがとう。セツナもたくさん食べな、腹減ってるだろぅ?」


 セツナの説明とウタカタの質問が終わり、やっとまともに食事を始められるセツナ。


 ウタカタはその間、雷の精霊と何やら話し込んでいた。


 話の途中で、風の精霊が無邪気に割り込み、土の精霊が御する様子を、セツナは一人食事をしながら微笑ましそうに眺めた。



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