雷の精霊の加護
雷の精霊は事の成り行きを把握できていなかった。
『やはり、覚えておらんか。お主が暴走しておったから止めたのじゃ』
『そうか、手間かけさせたな。だが、何も覚えてねえぞ』
『そりゃ、暴走しておったからのう』
『……それもそうか。ところで、俺の封印は解けちまったみたいだが、これからどうする?』
『その点は問題ない、巫女がおる。もう一度封印し直せば良い』
『ほう、巫女がいるのか。そいつは助かるぜ。んじゃ、早速封印し直してもらうとするか』
『待て、その前にお主の力をこの者に授けてやってくれ』
その者とは、ウタカタだった。
『この人間にか、一体どうして?』
『この者がお主の暴走を止めたのじゃ。それに他の精霊も同じように暴走しとるかもしれん。止めるには、お主の力が必要じゃ』
『そういうことだったのか。そこの人間、苦労をかけたな。礼と言ってはなんだが、俺の力受け取りな』
すると、ウタカタの身体へ雷の精霊のマナが流れてくる。
『俺の雷の力、貴様に分け与えてやった。うまく活用しな』
これでウタカタは三柱の力を授かった。
『そういやお前ら、分霊をそいつに付けてるな。一体どうしたよ』
『何者かがワシらの封印を解いて回っておる。其奴を引っ捕えるためにワシらは協力しておるのじゃ。お主、其奴に何か心当たりはないか?』
雷の精霊は封印を解いた者が一体何者なのか、記憶を辿る。
『そうだな。思い出せたのは、そいつが髭を触りながら何か喋っていたことだけだな。残念ながら、何を喋っていたのかまでは思い出せねえや』
『皆、大した情報を持っておらんなぁ』
「話す時に髭を触りながら話してた、ねぇ。俺みたいなおじさんなら、多かれ少なかれいるから、年齢は比較的上って感じかねぇ」
『ねぇねぇ!そんなことよりさぁ、最後ボクの風の力を使って倒したよね!?しかも、纏った風で突くだけじゃなくて、その後風を飛ばしてたよね!?やっぱり、ボクの力は偉大だなー!ボクって優秀!!』
「あぁ、風の精霊さんのおかげで倒せたよ」
風の精霊は嬉しそうに笑っている。
「犯人の特徴ですが、何だかウタカタさんに当てはまることばかりですね。流浪の剣士の方が封印を解いて回っているのでしょうか?」
「でも、精霊さんの封印の地を知るのは、巫女の一族だけなんだろう?流れ者が場所を知ってるとはとても思えないねぇ」
「確かにそうですね。そこがどうしても引っ掛かります。なぜ場所を知っているのか……」
「決定的なところだから、ここが解決しないとどうにも先へ進みそうもないねぇ」
『人間はお喋りな奴が多いな。その間に俺の分霊を付けてやった。これで封印後も俺と意思疎通ができるぞ』
「助かるよ雷の精霊さん。雷ってなると派手そうだから、どんなことできるか、いろいろ聞かせてもらうことにするよ」
『では、巫女よ。俺の封印を頼むぞ』
「かしこまりました」
セツナが雷の精霊の封印の儀を行う。
封印を終えた二人は、ゆっくりと街へと向かって歩き出した。
「雷の精霊様の封印を行ったのに、全く空が晴れませんね」
セツナが空を見て疑問に思っていた。
それを聞き、ウタカタも空を見上げるが、確かに空は真っ暗のままだった。
「全く景色が変わらないねぇ……ん?いや、雲がない。空自体が真っ暗じゃないか!?」
暗雲が空を支配し、光を遮っているわけではなかった。
空自体を闇が覆い、世界を暗闇にしていたのだ。
「いつからだ!?暗くなった時からずっとか!?」
『落ち着けウタカタよ。暗雲で覆われたのと同時かどうかなんてわかりはせぬ。しかし、一つだけ確かなことは』
土の精霊がそこまで話すと。
『絶対闇の精霊の影響だよ、これ!』
風の精霊がいいところを持っていってしまった。
『最後までワシに言わせんか!』
『闇の奴も暴走してるのか。あいつのは少し特殊だから厄介だぞ』
雷の精霊がやや心配そうに言った。
「特殊って、どんなだい?」
『あいつの場合は、実態のないものを干渉するのが得意だ。概念とかな。想像や夢、記憶や感情を操作したり。あとは、よく影を使う。影は闇と繋がりが強いからな、干渉しやすいんだ』
『あいつ根暗でちょっと苦手なんだよなー』
「精霊さん同士にも相性があるんだねぇ、面白いなぁ」
『ワシはお主が苦手じゃ。騒がしくてかなわん』
『えぇー!?それってボクのこと!?酷いなぁもう!』
「まぁまぁ、その辺にしとこうや。さっさと街に戻って、今日のところはもう休もう。だいぶキツかったよぉ、今回は」
「そうですね。三日程かかりましたし、野宿もしました。ただでさえ、精霊様との戦闘は命懸けです。早く宿で休みましょう」
二人は街へと戻る。
雷は止んだ。
しかし、空は一向に晴れない。
暗闇が支配したこの世界にいつ光が戻るのか。
ウタカタはこの先の旅を憂いながら、街へと戻る。




