表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第3話 彼女の優しさと後悔

「……やっちゃった」




教室から少し離れた人気のない廊下。


橘琥珀は壁に背を預け、両手で顔を覆ったまま深くしゃがみ込んでいた。




その隣で、壁に寄りかかった航が呆れたように、けれどどこか楽しげに笑う。




「お前さ、ほんとバカだろ」


「……はぁ?」




指の隙間から睨み返す視線は鋭いが、その耳はまだ真っ赤だ。




「しかたないでしょ。あんな言い方されて、黙ってられるわけない」


「だからって、入学初日に机蹴り飛ばす奴があるかよ。……まぁ、俺もあの女の口、二度と開けないように塞ごうとしてたところだけどな」




航は肩をすくめ、ポケットに手を突っ込んだ。




「私が本気なら、あんなもんじゃ済まない」


「物騒なヤンキーだな、おい」




言葉は軽い。けれど、その場の空気には、二人だけが共有する重たい熱が孕んでいた。


短い沈黙が落ちる。


琥珀は視線を外し、小さく、悔しそうに舌を鳴らした。




「……何も知らないくせに、勝手なこと言うの、ほんと無理」




ポツリと零れた声には、先ほどまでの威圧感は欠片もなく、ただ一途な少女の痛みが滲んでいた。


航はわずかに目を細め、静かに言う。




「……でもさ。今の『ヤンキーの橘』じゃ、湊の奴、お前にビビり散らかすだけだぞ。ああいう汚れ役は、悪目立ちしても平気な俺でいい」




琥珀は顔を覆っていた手を下ろし、膝を抱え込んで長く息を吐いた。




「……できるなら、とっくにやってる」




不器用すぎる彼女のその言葉のあと、何も続かなかった。


航は、それ以上何も言わず、ただ「難儀なこった」と小さく笑って窓の外を見つめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ