サンタのご飯
冬に備えろ!
冬なんてあっという間に来るぞ!
サンタ「うん…やっぱり鹿肉だよなぁ〜」
俺の大好物…それは鹿肉!
鹿「………」
俺の相棒が不満げな顔をする。
サンタ「なんだよ…ジェニファー」
俺の相棒の鹿…名前はジェニファー。
ジェニファー「………」
ジェニファーは呆れたような顔をした。
サンタ「いいだろ?俺の唯一の楽しみなんだから」
もう一口食べようとすると、ジングルなベルが鳴った。
やれやれ…俺のお楽しみタイムはあっけなく終わった。
サンタ「んだよ…プレゼントの渡し忘れなんて久しぶりだ」
珍しいな…。
ジェニファーがプレゼントを渡す人をリストにした紙を持ってきた。
サンタ「流石、俺の相棒…どれどれ…」
誰だ、こいつ?
木嶋?
こんな奴いたっけ?
う〜ん?いや、いねぇな…。
詳しく見ると、ギリギリでいい子になったらしくプレゼント認定がされていた……ぶっちゃけこうゆう奴が一番うざい。
サンタ「たくよぉ…マジで仕事増やすんじゃねぇよ」
はぁ…とため息が出た、そりゃ出るだろ。
仕事が残ってるんだぞ?
洗い物終わったと思ったらまだあったんかいって、なるほどショックだ。
サンタ「ジェニファー…行くぞ、仕事だ」
ジェニファーはため息を吐いた。
こいつも残業はしたくないだろうが仕方あるまい。
家についているガレージを開くとソリがあった。
座る部分に乗り込み、ソリの荷台を確認する。
ビニール袋がある、その中身は空だった。
はぁ…まじかよ…。
一旦降りて、他のビニール袋を探す。
あったあった…。
その袋を肩に担ぎ、ソリに乗り込む。
サンタ「ジェニファー…出せ」
ジェニファーがフンと鼻息を出して紐引っ張る。
それはやがて空に浮く。
さてとソリナビを使ってと……ちょっと遠いなぁ。
今日も寒い……何回目の冬が来たのか覚えてないが別にいい。
冬はとにかく寒い。
それは時が進もうが変わらない。
ジェニファー「………?」
なんだ…?
ジェニファーが急停止したぞ…?
まだまだ先なはずだが…。
サンタ「どうした?」
ジェニファーがフンと鼻息を出した。
もしかして…。
スマホを出して、プレゼントリストを確認する。
……悪い子になっている…。
何が起こった…?
サンタ「……向かうぞ」
ジェニファーは首を振った。
悪い子には別のサンタが行くようになっている。
だから俺が行くのは禁止されているが気になってしょうがない。
サンタ「頼む…鹿肉は我慢するからよ」
ジェニファーはフンと大きな鼻息を出した。
ソリが動く。
ここら辺だな…それにしても雪降ってるな…。
俺の家には雪降ってなかったのに…。
ジェニファーとソリがゆっくり降下する。
ついでに俺も降下する。
いた………あいつか。
ああ……盗んで…しまった……。
なんでこんな事したんだ……。
どうしよう…どうすれば……。
?「おい」
?!!!
ビックリした……。
後ろから声をかけられた……。
なんだろう……。
もしかしてバレた……?
木嶋「はい…?なんですか…?」
振り返るとそこにはサンタがいた…。
サンタ「何やらかしたんだよ」
!!
バレてる……?
見られてた…?
木嶋「何のことですか…?」
サンタ「とぼけんなよ…ずっと大事そうに左手、胸に置いてるじゃねぇか…バレバレだぞ」
?!
バレてた……警察に通報されるだろか……。
頭が真っ白になる、何も考えられなくて、罪悪感と後悔が身体中を襲う。
終わった…。
サンタ「まあ、座って話そうぜ」
サンタのコスプレをした人は近くにある長いベンチを指さした。
え…?
サンタ「早くしろ」
木嶋「はい!?」
声が裏返った。
ベンチに座るとお尻が冷たかった。
雪はなぜか積もっていなかった。
サンタ「ほらよ」
サンタのコスプレをした人はコップを差し出してきた。
いつの間に…しかも中身はココア…?
サンタは2つのコップのうち、鹿が描かれた方を渡してきた。
木嶋「あ…ありがとう……ごさいます…」
サンタは隣に腰掛けた。
サンタ「………」
何も言わずにココアを飲んだ。
寒いからか湯気がたくさん出ている。
一口飲むと暖かくて…甘くて…美味しかった…。
視界が滲む…涙が出てきた…。
喉が辛くなる…。
サンタ「それで、何したんだよ」
木嶋「盗みを……しました…」
声が変だ……喉が辛い…。
ココアを飲むと落ち着く…。
サンタ「そうか…理由があるんだろ?」
木嶋「そうですけど……理由があればやっていいことじゃ……ない…」
僕は罪を犯した。
それは犯罪の中では軽いかもしれない…。
だけどれっきとした犯罪だ…。
僕はそれを自分の都合で破った。
サンタ「分かってるじゃねぇか、反省しない奴よりよっぽどいい…それでなんでそんな事したんだ?」
サンタは聞いた。
木嶋「…最近仕事をクビにされて…理由は…うざいからで…そこまでは…百歩譲ってどうしょうもないで片付けてたんですけど…親に…クリスマスプレゼントを買ってあげるって約束したんです…なのに…仕事をクビにされて……心配かけたくなくて…給料は支払われてなくて…もう…どうしょうもなくて…」
サンタ「そうか…悪いがだからと言って盗みを働いていいわけじゃない…それは木嶋…お前が一番理解してるだろ?」
…………。
その通りだ…。
僕は理不尽を作った。
僕の上司がやったような理不尽を…。
悲しくて、辛くて、不安で…心配かけたくなくて…。
それでやった…。
理由に…ならない…。
僕はもっと心配かけるようなことをした。
本当に親の事を思ってるなら…やってはいけないことをした。
サンタ「じゃあ…そこからどうすんだ?」
え…?
サンタ「理不尽だよなぁ…世の中って、悪循環と言えばいいのかな?くるくるくる…どうしようもねぇよな」
…………。
サンタ「じゃあさ、お前はそっからどうするんだ?
この人は…いい人だな…。
木嶋「謝りに行きます…謝っても許されることではないですけど、それでも盗んだもの返して、ちゃんと謝ります」
僕はもう大丈夫だ。
僕が悪いのだ。
許されようなんて思ってない。
ただの自己満足だ。
サンタ「ふん、じゃあ早く行ってこい」
木嶋「あの…」
店員「はい?何のご要件でしょうか?」
手が震える。
木嶋「店長と話がしたいです…」
店員「えーと…何のご要件で……?」
喉辛い……。
木嶋「万引きをしてしまって…」
店員が驚いたようだった。
察してくれたようで…ありがたかった。
店員「少し、お待ちください…」
店員が行ってしまった。
待ってる時間が…辛い……でも、これは僕への罰だ。
当然報いだ。
店員「お待たせしました…その…奥へどうぞ…」
店員が奥に案内してくれた。
店長「はいはい、座って」
店長が椅子に座るよう促してくれた。
手が震える。
心臓が痛い。
店長「それで?何の用?忙しいから手短に」
木嶋「は、はい…えーと…万引きをしてしまって…」
店長がため息を吐いた。
店長「それで?」
木嶋「謝りに…来ました」
声が変にならないように伝えた。
店長「そう…何盗ったの?」
木嶋「お米10キログラム…」
店長は目を見開いた。
店長「よく、盗めたね…まぁ」
木嶋「あ…これ…」
胸ポケットからお米を出した。
店長「ツッコミどころはたくさんあるけど、一旦無視するよ…まあ…返しに来てちゃんと謝ったのは偉いね…でも申し訳ないけど警察には連絡させてもらうから」
…………。
木嶋「はい、それで大丈夫です」
店長「………やっぱいいや」
木嶋「え?」
店長「今日はもう、忙しいから帰った帰った」
木嶋「いや、その…」
店長「もう帰っていいよ、2度としょうもないことすんなよ」
…………。
…………。
木嶋「ありがとう…ございます………」
店長「はいはい、帰れ帰れ」
外へと促された。
…………。
サンタ「よぉ」
あ…。
サンタ「どうだった?」
木嶋「よかったんですかね……」
サンタ「なぁ…ここじゃなんだ、あそこで話そうぜ」
サンタはテンタッキーを指さした。
木嶋「いや、その…」
サンタ「奢りだ…着いてこい」
…………。
席に座った。
サンタ「ほれ、食え」
木嶋「でも…」
流石に申し訳なさが……。
サンタ「はよしろ…こっちは寒い中ずっと待ってたんだぞ?」
木嶋「ありがとう…ございます」
サンタが僕の目の前に赤いフライドチキンが入った箱を渡してきた。
恐る恐る手を伸ばしてチキンを食べる。
辛くて、ジューシーだった。
サンタ「あのな、世の中には色んな奴がいる」
サンタが話を始めた。
サンタ「自分が悪いのに自分は悪くないって正当化するやつ、そもそも何もわからないやつ、自分は全く悪くないと言い張るやつ…たくさんな?」
サンタ「そのなかで自分に非があると認めれるやつは少ない、後…自分の罪を認めれるやつはもっとな……木嶋、お前は自分の罪と向き合った、まあ、そもそもやるなって話だけどな」
木嶋「すいませんでした………」
サンタ「まあ、何が言いたいかって言うと、頑張ったなってことだ……後はお前次第だな、んじゃあな」
…………。
チキンはまだ残っている。
木嶋「あの…チキン残ってますよ…」
サンタ「あ?食っていいぞ?腹減ってんだろ?」
この人は…すごいな………。
サンタは行ってしまった…。
チキンを食べる…。
冷めきった体は熱を取り戻していた。
そういえば…。
木嶋「なんで…あの人は僕の名前を知っていたんだろう…?」
サンタ「ジェニファー」
ジェニファー「?」
サンタ「少し一人にしてくれるか?」
ジェニファーはフンと鼻息を出してどこかに行った。
すると、奴が来た。
?「なんであんな事したんだ?」
サンタ「そうだな……プレゼントの前渡し、かな…」
?「はあ…今回は見逃す…次はない、いいな?」
?「白いサンタ」
俺の仕事の名前を黒いサンタは言った。
黒「返事は?」
サンタ「わかってるって」
黒いサンタはため息を吐いた。
黒「ジェニファーは?元気か?」
黒いサンタは質問をしてきた。
サンタ「ああ、そっちのライオンは?」
黒いサンタはイラッとした。
黒「アスラパーだ!」
サンタ「へいへい、そんで?」
黒「元気だ……おっと…仕事に行かないと…そういえば、なまはげさんとは連絡取ったか?」
あー、そういえばそうか…。
サンタ「今日はもう寝る、明日やるさ」
黒いサンタは信じてないようだ。
黒「まあいい、俺は仕事に行く」
サンタ「そっちの仕事は楽しいのか?」
黒「………全然だ」
そりゃそうか、石炭を渡す仕事の何が楽しいんだろうか。
黒「まあ、すぐ白か真っ赤になるさ」
サンタ「真っ赤はオススメしない…」
黒「余計なお世話だ」
そうか、と俺はそう言った。
黒「じゃあな、□□□□□□」
聞こえなかった。
いや、どうでもよかった。
黒いサンタはガリガリなライオンが引っ張ってるスノーボードに乗った。
俺も行くか。
サンタ「ジェニファー」
ジェニファーの名前を言うとジェニファーが来た。
ジェニファー「フン」
サンタ「帰ろうか」
ジェニファー「…フン」
ソリに乗って鹿なのかトナカイなのかわからない生物が人力車の如く引っ張ってくれる。
はぁー。
今夜は…シチューかな…。
鹿肉の。
ジェニファー「………」
ジェニファー…。




