96 古代文明の遺産
世界が平和を取り戻してから、数か月が過ぎた。
王国の首都――
王立研究院。
その巨大な建物の中では、
かつてないほどの熱気が満ちていた。
机の上には大量の資料。
古代文字の記録板。
魔導端末。
解析途中の古代装置。
研究者たちが慌ただしく行き来している。
「信じられない……」
一人の学者が震える声で言った。
「これが……古代文明の記録なのか」
その資料を持ち帰った人物。
それがアルトたちだった。
ミラが机の上の記録板を指差す。
「この部分」
「エネルギー炉の設計図」
レオンが頷く。
「古代魔力炉の原理だ」
「今の魔導炉の十倍以上の効率がある」
周囲の研究者がざわめく。
「十倍!?」
「そんな技術が……」
さらに別の資料。
グランが重い箱を開ける。
中には古代装置の部品が入っている。
「これが兵器制御装置のコアらしい」
研究員が目を輝かせる。
「解析できれば」
「古代兵器の構造が理解できる……!」
ガルドは腕を組んでその様子を見ていた。
「すげえ騒ぎだな」
ミラが笑う。
「当然でしょ」
「数千年前の文明の技術なんだから」
レオンがさらに資料をめくる。
そこには膨大なデータがあった。
・古代文明の科学技術
・魔法工学
・世界魔力ネットワーク
・異界研究
・文明の歴史
人類が知らなかった知識。
失われていた技術。
すべてが記録されていた。
レオンは静かに言う。
「これだけの情報があれば」
「世界の学問は一気に進歩する」
ミラも頷く。
「魔法技術も」
「科学技術も」
「全部変わるね」
アルトは研究室の窓から外を見た。
広がる都市。
人々の生活。
その世界が
少しずつ変わり始めている。
研究院の奥では
すでに古代技術の再現実験が始まっていた。
新しい魔導炉。
新しい通信装置。
新しい輸送技術。
文明は確実に進み始めていた。
ガルドが笑う。
「つまり俺たちは」
「世界の歴史をひっくり返したわけか」
グランが静かに言う。
「古代文明の遺産が」
「新しい文明を作る」
レオンが資料を閉じる。
「でも忘れちゃいけない」
「この文明が何のために存在していたのか」
アルトはゆっくり頷いた。
古代文明は
ただ発展したわけではない。
世界を守るために存在していた。
その記録を
アルトたちは持ち帰ったのだ。
ミラが微笑む。
「これから忙しくなるね」
レオンも笑った。
「研究者としては最高の時代だ」
アルトは静かに言った。
「古代文明の遺産は」
「未来のために使うべきだ」
窓の外。
新しい時代の風が
ゆっくりと吹き始めていた。




