70 古代守護者
都市全体が戦場になっていた。
中央管理塔の外では、巨大ゴーレムが帝国軍を押し返している。
魔導砲塔が閃光を放ち、防衛ドローンが空中を旋回しながら攻撃を続けていた。
爆発の衝撃が、塔の床まで伝わってくる。
ガルドが窓の外を見ながら叫ぶ。
「すげえな……」
「都市が丸ごと戦ってるじゃねえか」
ミラは不安そうに言った。
「でも帝国軍、まだどんどん来てるよ!」
実際、都市の外周からは次々と帝国兵が流れ込んできていた。
将校が怒鳴る。
「怯むな!」
「中央装置を確保すれば勝ちだ!」
帝国軍の魔導砲が放たれ、都市の壁が崩れる。
アルトは歯を食いしばった。
「このままだと……」
その時だった。
中央管理AIの光が、突然強く輝いた。
《警告》
ホールに低い音が響く。
ブゥゥゥン――
床の魔力回路が、さらに強く光り始めた。
グランが眉をひそめる。
「なんだ?」
AIの声が重くなる。
《最終防衛プロトコル起動》
アルトが振り向いた。
「最終……?」
その瞬間、都市の奥――
地下深くから、巨大な振動が伝わってきた。
ドォォン……!
ミラが思わず柱に掴まる。
「地震!?」
ガルドが外を見る。
「違う……」
彼の声が低くなる。
「何か……出てくるぞ」
都市中央の広場。
地面がゆっくりと裂けていく。
巨大な地下格納庫が開き、暗闇の奥から何かが姿を現した。
まず見えたのは、巨大な腕。
黒い金属装甲。
次に、重厚な脚。
最後に――
都市の塔よりも高い機体が、ゆっくりと立ち上がった。
ミラが息を呑む。
「……なに、あれ」
それは、ゴーレムとはまったく違っていた。
人型。
だが巨大。
高さは二十メートル以上。
全身を覆う古代装甲。
胸部には巨大な魔力炉が埋め込まれている。
そして、その目が――
赤く光った。
アルトの声が震える。
「まさか……」
中央管理AIが静かに告げた。
《文明守護者》
ホールに緊張が走る。
AIは続ける。
《文明最終防衛兵器》
巨大機体が一歩踏み出す。
都市の地面が揺れた。
帝国兵たちが騒ぎ出す。
「な、なんだあれ!」
「巨大兵器だ!」
将校が叫ぶ。
「撃て!」
魔導砲が一斉に放たれる。
しかし――
砲撃は守護者の装甲に当たり、弾かれた。
火花が散るだけだった。
次の瞬間。
守護者の腕が動く。
巨大な衝撃波が放たれ、帝国兵が吹き飛ばされた。
ガルドが思わず言う。
「……化け物だな」
アルトも同じことを思っていた。
だが、安心するには早すぎた。
守護者の赤い目が、ゆっくりと中央管理塔を向いた。
ミラが震える。
「……なんでこっち見てるの?」
AIの声が静かに響く。
《文明守護者の識別システム起動》
《敵味方判定開始》
アルトは言った。
「待ってください」
「俺たちは敵じゃない!」
守護者の目がさらに赤く輝く。
《文明継承認証確認》
数秒の沈黙。
そして――
《認証未完了》
AIの声が続く。
《文明継承者以外を敵と認識》
アルトの背筋が凍る。
「……え?」
守護者の腕がゆっくり持ち上がった。
巨大な砲口が、中央管理塔へ向く。
ミラが叫ぶ。
「ちょっと待って!!」
AIが告げた。
《文明守護者は》
《すべての未認証生命体を排除します》
次の瞬間――
守護者の砲口が、青白い光を放ち始めた。
アルトたちは悟った。
帝国軍だけではない。
この都市の最終兵器は、彼らすら敵と認識していた。




