68 帝国の侵攻
中央管理塔のホールは、重い沈黙に包まれていた。
世界管理装置。
文明が最後に残した、世界そのものを守る装置。
しかしそれは今――停止している。
アルトはゆっくりと息を吐いた。
「装置を……動かす方法は?」
AIが答えようとした、その瞬間だった。
ゴォォォォン!!
塔の奥から、巨大な衝撃音が響いた。
ミラが驚いて振り向く。
「な、なに!?」
次の瞬間、床がわずかに揺れた。
ガルドが剣を抜く。
「爆発だ!」
アルトは塔の入口方向を見る。
遠くの通路から、兵士たちの怒号が聞こえてきた。
「突入部隊、前進!」
「中央塔を確保しろ!」
グランが顔をしかめる。
「……来やがったか」
アルトの胸が冷たくなる。
「帝国軍」
やがて、ホールの入口に影が現れた。
重装備の兵士たち。
黒い鎧。
帝国の紋章。
そして、その後ろから一人の将校がゆっくり歩いてくる。
将校はアルトたちを見ると、薄く笑った。
「やはりここにいたか、考古学者アルト」
ミラが怒鳴る。
「どうやってここまで!」
将校は肩をすくめた。
「遺跡には入口がいくらでもある」
「君たちが開いた道を、少し利用させてもらっただけだ」
背後の兵士たちが銃型魔導兵器を構える。
ガルドが低く唸る。
「くそ……」
将校は中央管理塔を見上げた。
空中に浮かぶAIの光を見て、目を細める。
「なるほど」
「これが古代文明の管理装置か」
アルトは一歩前へ出た。
「ここは戦場じゃない」
「この装置は兵器じゃないんです」
将校は笑った。
「もちろん知っている」
「だが我々は、もっと興味深い情報を得ている」
彼は兵士に命令する。
「解析部隊、前へ」
数人の技術兵が前に出て、装置を調べ始める。
その一人が叫んだ。
「将軍!」
「地下に巨大装置を確認!」
将校の目が輝く。
「やはりな」
彼はゆっくりとアルトを見た。
「世界管理装置」
アルトの心臓が強く鼓動する。
将校は続けた。
「世界中の古代兵器を制御できる装置」
「違うんです!」
アルトは思わず叫んだ。
「それは兵器じゃない!」
「世界を守る装置です!」
だが将校は聞く耳を持たない。
「素晴らしい」
「この装置があれば、帝国は世界のすべての古代兵器を支配できる」
ミラが怒る。
「勝手なこと言うな!」
将校は冷たい目で彼女を見た。
「黙れ」
そして兵士たちに命じる。
「中央塔を完全制圧しろ」
「古代兵器をすべて確保する」
兵士たちが一斉に武器を構える。
ガルドが剣を構えた。
「アルト」
アルトも覚悟を決める。
「……わかってる」
グランが低く言う。
「やるしかねえな」
次の瞬間。
「撃て!」
帝国兵の号令が響いた。
魔導銃が光を放つ。
同時に、ガルドが前へ飛び出す。
金属と魔力がぶつかり合い、塔のホールに激しい戦闘が広がった。
中央管理塔は、再び戦場となった。
そしてその戦いは――
遺跡都市全体を巻き込む戦争の始まりだった。




