64 古代文明の記録
中央管理塔のホールは、静かな青い光に包まれていた。
空中に浮かぶ光の人影――中央管理AIが、アルトたちを見つめている。
《文明継承候補者アルト》
《記録閲覧権限を承認》
その声と同時に、塔の壁面がゆっくりと輝き始めた。
ミラが周囲を見回す。
「なに……これ」
次の瞬間だった。
ホール全体の空間に、巨大な映像が投影された。
まるで空間そのものが巨大な水晶になったかのように、鮮明な光景が広がる。
アルトたちは思わず息を呑んだ。
そこに映し出されたのは――
古代文明の世界だった。
空には巨大な都市が浮かんでいる。
山ほどの大きさの都市が、ゆっくりと空を移動していた。
その下には、無数の飛行船。
光の航路を描きながら、都市と都市の間を飛び交っている。
ミラが目を見開く。
「空に……街が……」
アルトは震える声で言った。
「空中都市……」
ガルドが呆然とする。
「本当に存在したのかよ……」
映像は次々と変わる。
巨大な研究施設。
魔力の流れる塔。
都市を照らす青いエネルギー。
アルトは理解する。
「魔力発電……」
都市の中心には巨大なエネルギー炉があり、そこから光の流れが街中へ広がっている。
魔法と科学。
それが完全に融合した文明。
魔法科学文明。
さらに映像は宇宙へと移る。
暗い宇宙空間。
巨大な観測装置が星を見つめている。
アルトが思わず呟く。
「星間観測……」
グランが眉をひそめる。
「空の外まで見てたのか」
無数の光の線が世界地図の上に描かれる。
都市と都市を結ぶ光の網。
ミラが言う。
「これ……」
アルトは静かに答える。
「世界規模ネットワーク」
世界中の都市。
研究施設。
軍事拠点。
すべてが一つの巨大な文明として繋がっている。
映像の中の人々は笑っていた。
広場で話し合う研究者。
空を飛ぶ輸送船。
子どもたちが空中公園で遊んでいる。
それはまさに――
黄金時代。
文明は繁栄の頂点にあった。
アルトの胸が熱くなる。
「……すごい」
ミラも呟く。
「こんな世界があったなんて」
ガルドが腕を組む。
「なのに、なんで滅びたんだ」
その言葉の直後だった。
映像が、わずかに揺れた。
空中都市の光が不自然に瞬く。
次の瞬間。
映像が乱れた。
ザーッ――
ノイズが走る。
都市の空が暗くなる。
アルトが顔を上げる。
「……?」
空の向こう。
黒い影が広がっていた。
それは雲ではない。
巨大な闇。
都市の光が一つ、また一つと消えていく。
ミラが震える声で言う。
「なに……あれ」
だが次の瞬間――
映像は突然、暗転した。
すべての光景が消え、ホールは再び静寂に包まれる。
アルトは思わず叫んだ。
「待ってください!」
AIの光が静かに揺れる。
《記録再生はここまでです》
アルトは問いかける。
「文明に……何が起きたんですか?」
AIは少しの沈黙のあと、答えた。
《次の記録にて説明します》
その声には、わずかな重みがあった。
まるで、思い出すこと自体が
重い記憶であるかのように。




