63 古代AI登場
中央管理塔は、都市の中心にそびえ立っていた。
遠くから見たときも巨大だったが、近づくとその威圧感はさらに増す。
塔の外壁は滑らかな黒い金属で覆われ、無数の魔力回路が網のように走っている。
まるで都市そのものの神経のようだった。
ミラが塔を見上げる。
「これ……ほんとに建物?」
ガルドが肩をすくめる。
「城よりでけえな」
アルトは静かに答えた。
「ここが中央管理塔です」
「この都市の……いや」
彼は塔の上部を見上げる。
雲に届きそうな高さだった。
「古代文明全体の管理施設」
グランが呟く。
「世界の司令塔ってわけか」
崩れた正面ゲートの奥へ進むと、内部は驚くほど保存状態が良かった。
広いホール。
白い床。
天井には巨大な魔導結晶が埋め込まれている。
そして壁一面には、見たこともない装置が並んでいた。
アルトが小さく息を呑む。
「……動いている」
装置のいくつかは、まだ微かに光っていた。
数千年の時を越えて。
まだ、機能しているのだ。
ミラが不安そうに聞く。
「触っても大丈夫?」
アルトは慎重に近づいた。
中央ホールの奥には、円形の台座があった。
その中心には、透明な結晶柱。
高さ三メートルほどの柱の内部に、淡い光がゆらめいている。
アルトはゆっくり手を伸ばした。
「これが……」
その瞬間だった。
塔全体に低い振動が走る。
ブゥン――
天井の結晶が一斉に輝き、暗かったホールが青白い光に満たされた。
ミラが叫ぶ。
「な、なに!?」
ガルドが剣を抜く。
「来るぞ!」
だが敵は現れなかった。
代わりに、結晶柱の光が強くなる。
そして空中に、光の文字が浮かび上がった。
《……起動確認》
機械のようでいて、不思議と滑らかな声だった。
全員が息を呑む。
《中央管理システム再起動》
《認証プロセス開始》
アルトは呟く。
「……まさか」
ミラが震える声で言う。
「これって……」
次の瞬間、光が人の形を作り始めた。
淡い青い光の影。
長いローブをまとったような人型の姿。
それは空中に立ち、アルトたちを見下ろした。
《私は中央管理AI》
《文明統括管理知性体》
アルトは思わず一歩前へ出た。
「AI……」
光の存在は続ける。
《管理権限》
《世界文明ネットワーク》
《都市ネットワーク制御》
《古代兵器統制》
次々と情報が表示される。
ガルドが小声で言った。
「……世界の管理者ってやつか」
AIの光がアルトに向いた。
《個体識別開始》
《言語解析》
《文明データ照合》
アルトの胸が高鳴る。
そして――
光の文字が静止した。
《識別完了》
ホールが静まり返る。
AIはゆっくりと言った。
《あなたを認識しました》
アルトが息を呑む。
《文明継承候補者》
ミラが驚く。
「え?」
ガルドも振り向く。
「アルト?」
AIは続ける。
《古代文明継承プロトコル起動》
《候補者アルト》
《あなたに文明記録へのアクセス権を付与します》
アルトの心臓が激しく鼓動した。
数千年前に滅びた文明。
その中心にあった知性体。
それが今、自分を見ている。
AIは静かに告げた。
《ようこそ》
《文明の中心へ》
その言葉はまるで――
長い眠りから目覚めた世界そのものの声のようだった。




