57 古代文明の真実の一部
地下都市から脱出したアルトたちは、山脈の外れにある臨時の野営地にいた。
夜の風が静かに吹いている。
遠くの山の奥では、時折、低い地鳴りが響いていた。
崩壊した地下都市の余震だった。
ミラが焚き火の前で呟く。
「……全部埋まっちゃったね」
ガルドが腕を組む。
「もったいないが、仕方ない」
グランは静かに頷いた。
「生きて出られただけでも奇跡だ」
アルトは焚き火から少し離れた場所で、袋を開けていた。
そこには――
水晶記録結晶が入っている。
地下都市から回収した、古代文明のデータだった。
ミラが近づいてくる。
「見れるの?」
アルトは頷いた。
「簡易再生なら」
彼は携帯型の魔力装置を取り出した。
結晶を装置に接続する。
ブォン……
淡い光が浮かび上がる。
空中に映像が現れた。
ガルドが口笛を吹く。
「便利だな」
しかし映像は完全ではなかった。
ノイズが混じっている。
断片的な記録だった。
アルトが読み上げる。
「文明記録……断片」
「古代連合文明……」
ミラが首を傾げる。
「連合?」
映像が切り替わる。
そこには地図のようなものが映っていた。
世界地図。
そして無数の都市。
都市と都市を結ぶ線。
アルトは息を呑んだ。
「これは……」
グランが聞く。
「何だ?」
アルトは言った。
「文明ネットワークです」
ミラが驚く。
「ネットワーク?」
アルトは説明する。
「都市同士がつながっている」
「輸送」
「通信」
「エネルギー」
「研究」
「すべてが連動している」
ガルドが言う。
「つまり……」
アルトは答えた。
「世界規模の文明です」
映像の都市の数は、数え切れない。
地下都市はその一つに過ぎない。
アルトは震える声で言った。
「古代文明は」
「巨大文明連合だった」
ミラが呟く。
「世界全部……?」
アルトは頷いた。
「少なくとも、大陸規模です」
映像がさらに変わる。
都市。
兵器。
研究施設。
そして――
戦争の映像。
巨大兵器が空を飛ぶ。
都市が爆発する。
アルトは眉をひそめた。
「戦争記録……」
グランが低く言う。
「誰と戦っている?」
映像の敵ははっきりしなかった。
黒い影のようなもの。
巨大な存在。
ノイズが激しくなる。
ミラが言う。
「よく見えない……」
しかし音声データが残っていた。
「敵性存在……侵攻」
「文明圏防衛」
「最終戦争」
アルトは小さく呟いた。
「……最終戦争」
映像はそこで途切れた。
焚き火の音だけが聞こえる。
ミラが不安そうに言った。
「つまり……」
アルトはゆっくり言った。
「古代文明は」
「世界規模の文明連合でした」
「そして」
「何かと戦っていた」
ガルドが腕を組む。
「その敵ってのは?」
アルトは首を振った。
「まだ分かりません」
「でも」
彼は結晶を見つめた。
「文明が滅びるほどの敵です」
グランが静かに言った。
「それがまだ存在していたら?」
アルトは答えなかった。
焚き火の光が揺れる。
アルトは遠くの山を見つめていた。
地下都市は滅びた。
しかしそこで見た記録は、
もっと大きな謎を示していた。
古代文明。
世界規模ネットワーク。
そして――
謎の敵との戦争。
アルトは静かに言った。
「これは……始まりです」
「古代文明の真実は、まだほんの一部しか見えていません」




