53 古代AIの存在
地下都市の中心にそびえる研究塔。
アルトたちは、その入口に立っていた。
塔は他の建物とは明らかに違っていた。
滑らかな黒い石で作られた壁。
表面には無数の魔力回路が刻まれている。
ミラが見上げて言う。
「この塔……なんか雰囲気違うね」
グランが頷いた。
「都市の心臓部だろうな」
アルトは扉の古代文字を読んだ。
「中央管理塔」
ミラが首を傾げる。
「管理?」
アルトは説明する。
「都市全体を制御していた施設です」
「発電、輸送、防衛……」
「すべてここで管理していた可能性があります」
ガルドが笑った。
「つまり、この街の司令部か」
アルトはゆっくり頷いた。
「ええ」
グランが制御盤に手を置く。
「開けるぞ」
魔力を流す。
低い振動音が響いた。
ゴォォォ……
塔の扉がゆっくりと開いた。
内部は巨大な円形ホールだった。
中央には巨大な装置がある。
水晶柱のような構造。
内部には淡い光が流れていた。
ミラが呟く。
「きれい……」
アルトは慎重に装置へ近づく。
表面には古代文字。
そして、魔力の流れ。
アルトは息を呑んだ。
「これは……」
「都市管理装置です」
グランが聞く。
「まだ動くのか?」
アルトは頷いた。
「魔力が残っています」
彼は装置の制御盤に触れた。
その瞬間――
装置が輝いた。
ブォン……
水晶柱の内部に光が走る。
そして空間に、声が響いた。
「……接続確認」
ミラが飛び上がる。
「え!?」
ガルドも剣を構える。
「何だ今の!」
光が集まり、空中に形を作る。
それは人のような姿だった。
半透明の光の存在。
静かな声が響く。
「管理装置起動」
「都市管理知性体 起動」
アルトは息を呑んだ。
「……知性体」
ミラが小声で言う。
「幽霊?」
アルトは首を振った。
「違います」
彼は震える声で言った。
「人工知能です」
グランが驚く。
「知能……だと?」
光の存在がアルトを見た。
「生命体確認」
「管理権限照合……失敗」
「文明識別……不明」
少し沈黙が流れる。
そして再び声が響いた。
「記録参照」
「文明……崩壊」
ミラが呟く。
「しゃべってる……」
アルトは慎重に聞いた。
「あなたは、この都市の管理者ですか?」
光の存在は答える。
「肯定」
「本都市管理知性体」
「管理番号 A-01」
アルトの胸が高鳴った。
「都市管理AI……」
ガルドが聞く。
「で、何が分かる?」
アルトはAIに問いかけた。
「この都市の文明はなぜ滅びたのですか?」
光が少し揺れる。
「記録破損」
「完全データ……喪失」
ミラが残念そうに言う。
「ええー」
しかしAIは続けた。
「断片記録……再生」
空中に光の映像が現れた。
巨大都市。
空を飛ぶ輸送船。
動く魔導兵器。
そして――
炎。
爆発。
崩壊する都市。
アルトは息を呑む。
「これは……」
AIの声が響く。
「文明終末期」
「大規模戦争」
「エネルギー暴走」
「都市崩壊」
グランが低く言う。
「戦争……か」
アルトは映像を見つめていた。
古代文明。
魔法科学文明。
その終わり。
AIは静かに言った。
「生存者……不明」
「文明……消失」
沈黙が広間を包む。
ミラが小さく言う。
「そんな……」
アルトはゆっくり息を吐いた。
「でも」
「記録は残っている」
彼はAIを見上げた。
「あなたは文明の証人です」
AIは静かに答えた。
「記録保存」
「それが本機の役割」
アルトは確信した。
この都市には――
古代文明の真実が眠っている。
そしてそれは、
世界の歴史を変える可能性を持っていた。




