35 巨大守護者
地下都市の広場は、完全な混乱に包まれていた。
古代防衛兵器のゴーレムが次々と起動し、侵入者へ襲いかかる。
帝国兵は盾を構え、盗掘団は逃げ回る。
剣の音と爆発音が、石の街に響き渡っていた。
ミラが息を切らして言う。
「ちょっと多すぎない!?
ゴーレムが何体いるの!」
ガルドが剣で一体の攻撃を受け止めながら叫ぶ。
「都市全部が防衛装置だ!」
アルトは広場の中央を見ていた。
そこには、地下都市の中心へ続く巨大な通りがある。
その奥――
中央広場の向こうに、ひときわ大きな建物が見えていた。
半分崩れた石の塔。
周囲には巨大な柱。
アルトが呟く。
「都市の中心……」
エリシアが不安そうに言う。
「アルト?」
その時だった。
ドォン……。
低く、重い音が地下都市全体に響いた。
地面が揺れる。
ミラが足元を見た。
「また!?」
ドォン……ドォン……。
まるで巨大な何かが歩いているような振動。
帝国兵たちもざわめき始めた。
「何の音だ?」
「まだ兵器があるのか?」
アルトの顔が強張る。
「まさか……」
中央広場の奥。
崩れた塔の周囲の地面が、ゆっくりと動いた。
ゴゴゴゴ……。
石畳が割れ、巨大な円形の装置が姿を現す。
中央に埋め込まれた巨大な魔力水晶。
その光が、ゆっくりと輝き始めた。
アルトが叫ぶ。
「全員、離れてください!」
次の瞬間。
石の地面が、爆発するように崩れた。
ドォォォン!!
巨大な影が、地下から姿を現した。
帝国兵の一人が震える声で言う。
「……嘘だろ」
それは――
巨大な人型だった。
高さは十メートル以上。
厚い装甲に覆われた体。
石と金属が組み合わさった巨大な構造。
胸には都市の紋章が刻まれている。
そして、両目が赤く光った。
ミラが絶句する。
「で……でかい」
ガルドが呟く。
「さっきのゴーレムの倍はあるぞ」
アルトの声は低かった。
「都市中央防衛装置……」
エリシアが震える。
「つまり……」
アルトはゆっくり言った。
「この都市の最終守護者です」
巨大ゴーレムがゆっくりと立ち上がる。
石の広場が揺れる。
その動きだけで、周囲の瓦礫が転がった。
盗掘団の男が叫ぶ。
「逃げろ!」
しかし、もう遅かった。
巨大ゴーレムの目が光る。
低く、重い声が都市に響いた。
「侵入者多数確認」
「都市防衛プロトコル起動」
「排除開始」
その巨大な腕が持ち上がる。
帝国兵たちが慌てて構える。
「撃て!」
魔法弾が飛ぶ。
だが、装甲に当たって弾けるだけだった。
ミラが青ざめる。
「効いてない!」
巨大ゴーレムの腕が振り下ろされた。
ドォォン!!
広場の石畳が砕ける。
帝国兵が吹き飛ばされる。
地下都市全体が揺れるようだった。
レオンが遠くから呟く。
「なるほど……」
「都市の守護者か」
アルトは巨大な存在を見上げた。
静かな地下都市。
そこに眠っていた最大の兵器。
それが今、完全に目覚めてしまった。
アルトは低く言った。
「このままだと」
「地下都市ごと破壊される……」
巨大守護ゴーレムはゆっくりと歩き出す。
侵入者を排除するために。
地下都市の中心で――
本当の戦いが始まろうとしていた。




