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⓪-8 対

 アルビノの少年は武器を持っていなかった。少年は手を銃に見立て、レイスへ向けている。

 少年はラーレを見ようせず、佇んでいた。不思議と拳銃を握る指に、力が入る。


「やめてラーレ!」

「レイス、このガキはなんなの!? さっきから聞いていれば、人を馬鹿にして」

「そうだろうね。そう受け取られても仕方ないかな」


 澄ました顔で、達観している。無感情という言葉が当てはまり、何の感情も見受けられない。武器も持たず、あれだけの殺気を放っていたというのだろうか。


「マイクは奥さんも、娘さんのことだって愛していたわ。私たちだって手を尽くしたの。でも、どうやっても助からなかった! だって、もう心臓も止まって……!」


 少年はラーレを見ようとしない。レイスを見つめたまま、ゆっくりと目を閉じた。何かを噛み締めるように一瞬考えたかと思うと、目を見開いた。その金色の目が、人間ではない何かを連想させる。

 ラーレは拳銃を握りなおすと、ゴクリと唾を飲み込んだ。少年はまっすぐ真正面を見つめたまま、口を開いた。


「命は生まれ出るわけだから、いつかは尽きるものだよ。マイクは自決を選んだ。撃ったのは僕らじゃない」


 少年は微動だにしない。ラーレでは撃てないとでもいうばかりに。どうみても、少年は普通の人間ではない。


「というか、マイクは君たちを裏切ったでしょ? 死んだ娘さんを蘇生出来るなんて、戯言のためにだよ?」


 再びゆっくりと瞬きすると、少年は口元だけに笑みを浮かべた。無表情の微笑からは、反吐が出そうなほどの気味悪さを感じる。ラーレは喉の奥底が熱くなるのを感じ、少年を睨みつけた。


「マイクが正しいことをしたなんて、思っていない。それでも、大切な娘の命なの。わかるでしょ⁉」

「その大切な娘さんを蘇生なんてしたら、蘇りになる。娘さんは新たな神を名乗るのかな?」

「ふざけないで!」

「転生はしないし出来ない、そういう概念の宗派なんじゃないの? アナタたちってさ」


 再びの静寂が、ラーレの銃口を少年の脳天に狙いを定める。


「君は誰のために、何をそんなに怒っているの?」

「あなたは、人の死を、命を、なんだと思って……」


 ラーレは本能で感じた。この少年は、普通じゃない。

 気付けば、毛が逆立つような感覚だった。


「二人ともやめてください」

「いや、そもそも君がちゃんと話してくれていたら……」


 すべての感覚が研ぎ澄まされ、少年が次にどう動くかが把握できるようだ。

 少年は手を挙げることもなく、撃たれても何の問題もないかのように振る舞っている。


 ラーレのすべきことは、目の前の少年を撃つことだ。

 そうだ、そうだったはずだ。震えもいつのまにか止まっている。

 今、撃ち抜かなければ。年相応の反応を見る前に。


「言っておくけど、ボクはそんな拳銃では死なないからね」


 少年の言葉が言い終わるのを待たず、ラーレは少年の心臓を狙い、引き金を引いた。

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