⓪-7 対
身長の低い少年はレイスを見上げ、手を銃に見立てていた。武器を持っていないことを不思議に思いつつ、ラーレは銃口を少年へ向けた。
「やめてラーレ!」
「レイス、このガキはなんなの!? さっきから聞いていれば、人を馬鹿にして」
「そうだろうね。そう受け取られても仕方ないかな」
少年は澄ました顔で、達観しているようだった。少年は武器も持たず、あれだけの殺気を放っていたのだろうか。
「マイクは奥さんも、娘さんのことだって愛していたわ。私たちだって手を尽くしたの。でも、どうやっても助からなかった! だって、もう心臓も止まって……!」
少年はラーレを見ようとしない。レイスを見つめたまま、ゆっくりと瞬きした。その金色の目は、人間ではない何かを連想させた。
「命は生まれ出るわけだから、いつかは尽きるものだよ」
少年は微動だにしない。ラーレなら撃たないと、本気で思っているのだろうか。
「というか、マイクは君たちを裏切ったでしょ? 死んだ娘さんを蘇生出来るなんて、戯言のためにだよ?」
少年の口元が歪んだ。反吐が出そうなほどの気味悪さ。ラーレは喉の奥底が熱くなるのを感じ、少年を睨みつけた。
「マイクが正しいことをしたなんて、思っていない。それでも、大切な娘の命なの。分かるでしょ!?」
「その大切な娘さんを蘇生なんてしたら、蘇りになる。娘さんは新たな神を名乗るのかな?」
「ふざけないで!」
「転生はしないし出来ない、そういう概念の宗派なんじゃないの? アナタたちってさ」
ラーレは銃口を少年の胸に定めた。
「君は誰のために、何をそんなに怒っているの?」
「あなたは、人の死を、命を、なんだと思って……」
この少年は、普通じゃない。
毛が逆立つような感覚だった。
「二人ともやめてください」
「いや、そもそも君がちゃんと話してくれていたら……」
すべての感覚が研ぎ澄まされ、少年が次にどう動くかが把握できるようだ。
少年は手を挙げることもなく、撃たれても何の問題もないかのように振る舞った。
ラーレに出来ることは、目の前の少年を撃つことだ。
今、撃ち抜かなければ、撃てなくなる。
年相応の反応を見る前に。
情が湧く前に。
「言っておくけど、ボクはそんな拳銃では死なないからね」
少年の言葉が言い終わるのを待たず、ラーレは少年の心臓を狙い、引き金を引いた。




