↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暁の芽吹 -レスティン・フェレスⅠ  作者: Ruri Lesewolf
Episode0「その名で呼ばれるまで」
PR
2/231

⓪-2 アウローラ

 そこは、コンクリートだけが広がる宿舎のような建物だった。

 窓など一つもないものの、閉所を感じるほど狭くもなかった。


 自らの朱色の髪で遊んでいた少女ラーレは、注がれたティーカップに手を掛けた。

 先程まで武術の訓練や、仕込みナイフの訓練で汗を流したため、喉が渇いていた。


「お茶を飲み終えたら、また銃を教えてね」


 紅茶を嗜むラーレに対し、向かいに座っている女性——レイスは困ったように目を閉じた。

 レイスは、ラーレが勝手に姉と慕っている女性だ。

 彼女の金髪碧眼に憧れ、自分もそうであったらと何度も思ったほどだ。


 レイスは深いため息を吐き出した。


「拳銃に慣れることが、今のラーレにとって正しいとは思えません」

「……大戦があったのは、私が生まれる前のことだけど、このご時世なら、戦う術はあったほうがいいじゃない」

「ご時世というほど、世間の情勢を知らないでしょう? 地理や歴史を学ぶ方が、貴女の為です。今日はドイツ史を学んでいきましょうか」

「私は、貴女と肩を並べたいのよ」


 ラーレはティーカップを雑に置くと、再び毛先で遊び始めた。


 ラーレが所属している組織は、アウローラと呼ばれている。

 物心ついた時からここで暮らしているラーレにとって、レイスは憧れだった。


 アウローラは戦災孤児や訳あって軍を抜けた人々で構成されている。

 戦場に駆り出される傭兵団。ラーレはそう解釈していた。


 そんな拠点の中の一室、レイスの部屋には必要最低限の物しか置かれていない。棚の上には拳銃を整備するための工具、そして写真立てがあった。


 写真にはラーレとレイス、そして初老の男性が映っていた。男性は、二人が所属しているこの拠点の所長であった。


 所長はもういない。

 殺されたのだ。


 撃った相手は、眼帯をしている男であったというが、噂の域を出ない。

 父親のように接していた所長のいない今、尚のことレイスの存在は大きい。

 自然と指に力が入り、ラーレは口元を歪ませた。


 レイスは、写真立てを手に取った。


「部屋に持って行って下さい」


 レイスの凄いところは、ラーレの考えを予測してしまうことだ。何でも言い当ててしまう。

 だが、ラーレは写真立てを受け取るつもりはなかった。


 レイスの部屋の物が減る度に、ラーレの部屋は賑やかになっていった。それはラーレの望むことでは無かった。


 特に三人で映っている写真は、彼女に持っていて欲しかった。正直に申し出よう、ラーレがそう決めた時だった。

 

 がしゃり。


 写真立てが落下し、ガラスが砕け散った。

 レイスは既に拳銃を構え、扉を施錠していた。


 一瞬の出来事は、スローモーションのようにゆっくりだった。

 けたたましいサイレンが鳴り響いたのは、そのすぐ後のことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。