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3-03 村人総出


 夜も見回りは続く。昼間と違って夜は村の中から丸太塀越しに外を見るだけだ。それでも、俺の身長より少し高い塀から外を見るには、所々に付いているお立ち台のような台に立って恐る恐る外を見ることになる。

 これはこれで緊張するな。モモちゃんが「だいじょうぶにゃ!」と言ってくれない限り覗こうなんて気が起きないぞ。


「モモちゃんがいるから、顔を出した途端に槍で突かれるような事にはならないわ。シュタイン達もリーザがいるから安心できるはずよ」


 ヒルダさんがそう言って、恐る恐る塀の上に顔を出す俺を見て笑ってる。

 たぶん今夜はこれが最後の見回りになるんだろう。終わったらギルドに出向いて何事も無い事を告げれば、宿のベッドに潜り込めるらしい。

 すでに半分は終わってるから、後3回も塀から顔を出せば今日の役目は終わりになる。

 どうにか今日の役目を終えて、宿のベッドに横になると直ぐに睡魔が襲ってきた。緊張が続いたせいなんだろうな……。


 翌日は、朝食を終えたところでギルドに向かうと、昨日と同じように村の周囲を巡回しながら弓の稽古を続ける。

 何事も無い日々が続いているのだが、相変わらずモモちゃんは東の森をたまに見つめている。山街道を抜けてアーベルグ村に向かうというのは、魔物達にも困難さが分っているに違いない。やはり東の森に魔物達が集結しているような感じに思えるな。


 4日目、いつものように俺達の巡回待ちをギルドでしていた時だった。カーン、カーンといつまでも教会の鐘が鳴り続けるのが聞えた。


「アオイ、北門に向かうわよ!」

「やって来たんですか?」


 俺の問いにギルドを駈け出していくことで答えたようだ。居眠りしていたモモちゃんを起こして、俺達も北門に走り出す。

 通りには荷車や、カゴを持ち出して即席の壁を村人が作り始めている。槍や弓を持った若者やおやじさん達が壁に集まってきた。

 こりゃあ、早く行かないと……。

 障害を避けながら北門の内側に作られた広場に着くと、すでにシュタインさん達が村人と一緒になって門の扉を補強していた。


「やって来たな。アオイの場所は、その大樽の後ろだ。樽2つが壁になる。モモは樽の傍にある荷車の下で良いだろう。リーザはこっちだ!」


 シュタインさんの指差した先には高さ1.2m程の樽が2個立っていた。たぶん水でも入れるんだろうが、こういう時には役に立つ。塀の丸太の傍に荷車が横になっている。板と何かを入れた袋が乗っているから、荷車の下は安全だろう。そこならモモちゃんを置いておくのに都合が良い。


「ほれ、アオイの分だ」

 ガトネンさんが小脇に抱えた手槍を、樽に立て掛けてシュタインさんのところに向かう。手槍は杖に短剣を縛りつけただけのものだが、それなりに役に立つんだろう。短剣が外れても元々が太い杖だから振りまわして使えそうだ。

 弓を樽の上に乗せて、余分に貰った矢もまとめて置く。弓から槍、最後が背中の長剣という順番で良いはずだ。

 

 広場を見ると、通りの方はガラクタが積み上げられている。あの向こう側には、村人が何人かいるんだろう。広場の中にいるのは俺達6人と北門の番人であるおじいさん2人、それに腕に覚えがあるような壮年の村人が6人だ。背中に長剣を背負って3m程の槍を手にしている。

 広場の真ん中に焚き火を作って、男達がパイプを楽しんでいる。

 中々様になっているな。俺もこの世界ではその内たしなむ事になるんだろうか?


 そんな中、ガラクタを乗り越えて広場にやって来た女性は……、リーナさんじゃないか! 戦えるのか?


「南は兄さん達が向かったから、私はこっちに来たの!」

「ありがたい。西のモモを頼むぞ!」


 大声で広場の真ん中に作った焚き火のところでシュタインさんと話しをすると俺のところに走って来た。弓を背中に担いで、腰には片手剣を下げている。俺より様になってる気がするな。


「モモちゃんは?」

「後ろの荷車の下にいます。よろしくお願いします」


 とりあえず頭を下げることにした。力になってくれるのか、それとも足手まといになるのかは分からないけど、後ろから放たれる矢が増えたことで満足しよう。

 リーナさんは、荷車の下から顔を出したモモちゃんを見てニコリと笑顔を見せている。


「なるほど、そこなら安心ね。私は……、あの樽を運んで、その後ろにするわ。アオイ、お願いね」


 俺を見てウインクしてるけど、あの樽って俺の前にある樽並みに大きいぞ。とりあえず転がしてくるか……。

 北側の塀の傍にあったタルは古びた樽だから、中に物を入れることはできないだろうな。立っている樽を転がして運びながらそんな事を考えた。

 とはいえ、障壁としては十分に使えそうだ。

 荷車の傍に運び終えると、リーナさんの命じるままに2つの樽の位置を少しずらして樽を3つ並べることになった。

 2人とも樽の隙間から矢を放つ事になるのだが、モモちゃんは荷車の下で、その隣にリーナさんが位置する。

 俺は樽の列から追い出されてしまったが、荷車に積んであった板を使って、腰の高さほどの板塀を作った。

 焚き木の束で動かないようにしてあるが、いざとなれば長剣を持って樽の右横に出れば良い。


 何人かの村人が桶を持ってやってくると、俺達の隠れた荷車や樽に水を掛けていく。

 悪魔軍の中には魔法を使う者もいるようだ。火炎弾対策と言う事らしい。2つほど水の入った桶を置いて行ってくれた。


「お兄ちゃん、近付いて来たにゃ!」

「本当? アオイ、門の方に矢を放つのよ!」

「了解です。確かに門の方向には人がいませんからね」


 門の東側には櫓があるのだが、周囲を丸太で覆っているから、俺の流れ矢が味方に当たることは無いだろう。樽の上にごそっと矢を積み上げておく。俺の弓とリーナさんの弓は同じような大きさだから矢は兼用できるはずだ。

 ホイ! とモモちゃんに渡された飴玉を口に入れると、モモちゃんが俺達に【アクセル】を掛けてくれた。


「そう言えばモモちゃんは魔法が使えたんだよね。私も使えるから、モモちゃんに掛けてあげる」

 2人が身体機能強化の魔法を掛けたところで、リーナさんに話を聞くと、10回程魔法が使えるらしい。

 となると、2人で火炎弾を10発は放つことができるから、良い助っ人がやって来たと言う事になるんだろうな。俺も早いところ覚えたいところだ。


「来たぞ! 何だ? とんでもねぇ数だ!」

 櫓の上で広場に向かってトラ顔のおじいさんが怒鳴り声をあげる。

 とんでもない数というのが問題だな。少なくとも数十人なら、そう言うだろうから数えられない数って事になりそうだ。

 シュタインさんがゴツイ手槍を手にした。北門の扉はかんぬきが掛けられ、斜めに丸太で押さえられているから、あれ以上の補強はできないだろうな。俺の傍を2人の少年が北に向かって駆けて行った。村を取り囲む塀の四隅に作った急ごしらえの櫓で待機する村人に知らせに行ったんだろう。俺より若かったけど、弓を担いでいたからそれなりに役立つのかもしれない。


「私くらいの魔物の気配にゃ! でも奥にお兄ちゃんが倒したトカゲの気配もするにゃ……、後は良く分からないにゃ」

「オグルとリーデルだと思います」

「それなら、矢で十分だわ。……始まったみたいね」


 リーネさんの視線の先に、櫓から矢を放つ男達の姿が見えた。

 3人が弓を使っているようだ。まだ夕暮れには間があるから、良く狙って矢を射ることができるんだろう。だが、夜はどうするんだ? 広場には焚き木がたくさん用意されているから、何とか視認できるだろうけど、門の外はどうにもならないんじゃないかな?


 直ぐに矢が止んだところを見ると、矢の届かないところまで後退したと言う事なんだろう。

 先ずは様子を見てということだろうか? 一斉攻撃は今夜になりそうだな。

 

それならと、リーネさんに手伝って貰って俺達の棒拠点を強化する。広場の端の方から、古いベンチや焚き木の束を運び込み、隙間を詰めて行ったからモモちゃんの場所は矢狭間のような感じになった。リーナさんの居場所も板を2枚立て掛けて、相手の矢を防げるようにしてある。俺の手前もガラクタを積み上げて、直ぐには乗り越えられないようにしておいた。相手の矢を避けるためになるべく動き回っていれば良いだろう。


「夕食ですよ。今の内に食べといてください」

 若者に誘われて3人で広場の東に移動する。夏の日陰作り用に数本の木が植えられている場所のようだが、立ち木を利用して丸太を横にして縛り付けて塀を作っている。

そこに小さな焚き火が作られており、おばさん達がスープを温めていた。


「ほい、パンが2つにスープのカップだよ」

 順番に手渡された夕食を受け取り、ベンチに腰を下ろして頂くことになった。

 直ぐにシュタインさん達もやって来る。


「今夜が問題だな。村の若衆が手伝ってくれるが、前に立つのは俺達だ」

「アオイは矢を全て放ってからで良いぞ。門に向かって放てば良い」


 シュタインさんの言葉に、ガドネンさんが言葉を繋げる。2人とも門が破られると考えているけど、かなり頑丈に補強してるように見えるんだけどな。


「【アクセル】は朝方まで有効よ。それでも、夜中に再度掛けることにするわ」

 ヒルダさんの話では、魔法効果の有効時間は12時間らしい。昼過ぎに掛けて貰ってるから、深夜で切れるって事になるんだろうな。


 食事が終わると、広場の真ん中に作った焚き火に集まり、皆でお茶を飲む。

 村の北に集まった魔物達も今頃は食事をしてるのかもしれないな。

 リーザさんが櫓に上って偵察してきたところによると、小さな焚き火がたくさん見えたそうだ。

 

「今の内に、もう一度遮蔽物に水を掛けておいた方が良いな。焚き火が多いとなると、火矢を撃ちこんで来るかもしれん」

 直ぐに、若者がどこかに走って行った。井戸から水を汲んでくるんだろう。

 だけど、魔物達も弓を使う者がいるんだな……。



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