第62話
軍議の場。
そこには、神軍戦争生き抜いた精鋭たちが揃っていた。だが、彼らの顔には、アマテラスを討った時の高揚感はない。
「……出雲。……西日本最大の国家。……高天原が支配を諦めた、……呪われた土地だ」
スイゼイが、視力を失った濁った瞳で、地図の西側を指差した。
「……、……。……あそこには、神はいない。……いるのは、……神に成り損ねた『怪異』と、……それらを束ねる『慈愛の怪物』だ」
「……、……。……オオクニヌシ、か」
イワレビコがその名を呟くと、天幕の中の空気が一段と重くなった。
「……磐井の情報によれば、出雲軍は『妖軍』を主力としている。……理屈で動く神兵とは違う。……彼らは、……空腹と本能で、……俺たちの肉を喰らいに来るぞ」
「……いいぜ。……俺の棍棒は、……お化けを叩き潰すためにもあるんだ」
クマソタケルが、半分に折れた棍棒を握り直す。
「……、……。……ツチグモ、……隼人の長よ。……お前の『影の術』は、……出雲の妖術に、どこまで通用する?」
「……、……。……さあな。……だが、……向こうの奴らは、……俺たちの身内みたいなもんだ。……殺し方は、……熟知しているつもりだ」
イワレビコは立ち上がった。
左腕はない。槍もひび割れている。
だが、彼の背中には、アマテラスから奪った「重力」が、見えないマントのように翻っていた。
「……目標は西。……出雲の王、……オオクニヌシの首だ。……俺たちが神を殺した理由……、……その答えを、……あのおじいさんに、……叩き込みに行くぞ」
「「「「 オォォォォォォォッ!! 」」」」
マカツ軍、西進開始。
空から降る光ではなく、大地から這い上がる闇との戦争が、今、幕を開ける。




