第17話
辺りは漆黒の闇に包まれた。
エネルギーの逆流。
拠点は崩壊し、空を支えていた光の柱が、音を立てて折れた。
静寂が戻った。
回廊の跡地は、ただの巨大なクレーターと化していた。
生き残ったのは、イワレビコ、ニニギ、そして瀕死のスイゼイ。
ついてきた数十人のマカツ兵たちは、一人残らず、灰と化していた。
イワレビコは、クレーターの中心で立ち尽くしていた。
彼の黒い左腕は、もはや元の形状を留めていない。指先は鋭い鉤爪となり、そこからは黄金色の神の血が滴り落ちている。
「……勝ったぞ。イワレビコ」
ニニギが、涙を拭うことさえ忘れ、血の海を歩み寄る。
「お前の……おかげだ。こいつで、神の拠点は二つ目……」
イワレビコが、ゆっくりと首を巡らせた。
その黄金の瞳に、ニニギの姿は映っている。
だが、そこには以前のような「友」としての親愛も、勝利の安堵もなかった。
「……次は、どこだ」
その声を聞いた瞬間、ニニギは背筋に凍るような寒気を感じた。
イワレビコは、足元に転がっているかつての部下たちの遺品を踏みしだき、出口へと歩き出した。
仲間を捨て、命を数え、神を殺すためだけに最適化された怪物。
その光景を、冷めた目で見つめる男が一人。
「……少しはマシな玩具になったようだな」
将軍タケミカヅチ。
彼が立ち上がっただけで、高天原の雲が真っ黒な雷雲へと一変した。




