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7話 路地裏の少女

町の門をくぐった瞬間。


「……すごい」


思わず声が漏れた。


石畳の道。

並ぶ店。

人、人、人。


鎧を着た冒険者。

荷車を押す商人。

屋台から漂ういい匂い。


まさに異世界の町だ。


「初めて見る顔ね」


アリアが横で笑う。


「そんなに分かる?」


「分かるわよ。完全におのぼりさん」


「うっ」


リリィが肩の上で笑う。


「本当よ」


「うるさい」


アリアには聞こえていないが。


町の中を歩いていると、自然と人の流れが見えてくる。


市場。

武器屋。

宿屋。


この町で生活は全部できそうだ。


「まずは食料ね」


アリアが言う。


「森の木の実だけじゃ限界でしょ?」


「確かに」


そのときだった。


ふと路地の奥に目がいく。


壁に寄りかかる少女がいた。


ボロボロの服。


汚れた金髪。


かなりやせている。


「……」


俺は立ち止まった。


アリアも気づく。


「どうしたの?」


「あの子」


アリアも視線を向ける。


そして小さく言った。


「孤児……かもしれないわね」


俺は路地へ入る。


少女はこちらを見て、少し身構えた。


「大丈夫?」


俺が声をかける。


少女は少し迷ってから答えた。


「……問題ありません」


言葉遣いが丁寧すぎる。


アリアが小さく言う。


「やっぱり」


「?」


「貴族の話し方よ」


少女はゆっくり立ち上がろうとして――


ふらついた。


「危ない」


俺はとっさに支える。


少女は驚いた顔をする。


「……ありがとうございます」


「名前は?」


少し沈黙してから言った。


「エリシアです」


やっぱり貴族っぽい名前だ。


「帰る家はあるの?」


俺が聞く。


エリシアは視線を落とした。


「……ありません」


「家族は?」


「……」


答えない。


その沈黙だけで十分だった。


アリアが腕を組む。


「没落貴族ね」


「そんな人いるのか」


「珍しくないわ」


エリシアは静かに言った。


「お気遣いありがとうございます」


「ですが、大丈夫です」


「慣れていますので」


その言葉が、余計に辛かった。


俺は少し考える。


そして言った。


「うち来る?」


「……え?」


エリシアが顔を上げる。


アリアが横で言った。


「ちょっとユウ」


少し怪訝な顔だ。


「簡単に人を連れて帰るの?」


「そうかもしれないけど」


俺は言う。


「でも、このまま放っておくのは嫌だ」


アリアはしばらく俺を見る。


それからため息をついた。


「……お人よしね」


「そうか?」


「でも」


アリアはエリシアを見る。


「この人、嘘つくタイプじゃないわ」


エリシアは戸惑っていた。


「ですが……」


「ご迷惑では?」


「迷惑じゃない」


俺は言う。


「家はある」


「食べ物もなんとかなる」


「それに」


俺は少し笑う。


「人が増えた方が楽しい」


エリシアはしばらく黙っていた。


そして。


小さく頭を下げる。


「……もしよろしければ」


「この身を、お預けします」


こうして。


最初の住人候補が決まった。


「でもその前に」


アリアが言う。


「まずご飯ね」


屋台に向かう。


焼いた肉の匂いが広がっていた。


エリシアは少し遠慮している。


「食べていいよ」


「……いただきます」


一口食べて。


エリシアの目が少し潤んだ。


「美味しい……」


アリアが笑う。


「久しぶり?」


エリシアは小さくうなずいた。


食事のあと。


アリアが言う。


「次は服ね」


「その格好じゃ帰れないでしょ?」


エリシアの服はボロボロだった。


「服屋はこっちよ」


市場を歩く。


そのとき。


広場の方から声が聞こえた。


「さあ見てくれ!」


「安い奴隷だ!」


俺は思わず足を止める。


アリアが振り向く。


「どうしたの?」


俺は広場を見る。


そこには――


檻が並んでいた。


そしてその中に。


猫耳の少女がいた。


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