69話 再会
ルークスの街は、相変わらず騒がしかった。
人の声が飛び交い、足音が絶えない。
森とは違う、密度のある空気。
久しぶりでも、違和感はない。
「やっぱり人多いね」
アリアが周囲を見回しながら言った。
「ああ」
ユウも短く返す。
視線はすでに先を見ている。
冒険者、商人、運び屋。
行き交う人の流れは速い。
立ち止まっている方が浮くくらいだ。
「で、どうする?」
アリアが隣で聞く。
「まずはどこ行くの」
ユウは迷わなかった。
「ティアナの店だ」
そのまま歩き出す。
アリアも小さく笑ってついてくる。
「だと思った」
通りを抜ける。
人通りは少しずつ減り、空気も落ち着いていく。
奥まった場所。
見覚えのある看板が目に入った。
「ここだな」
ユウが足を止める。
木の扉。
前と変わらない。
「いるかな」
アリアが言う。
「いるだろ」
軽くノックする。
「……はい」
中から声が返る。
扉を開けた。
乾いた薬草の香りが広がる。
鼻に残る、落ち着いた匂い。
「いらっしゃ――」
言いかけて、止まる。
「……あら」
ティアナだった。
少しだけ目を細める。
「思ったより早かったわね」
ユウは中へ入る。
「ああ」
アリアも続いた。
「ただいま、って感じかな」
「好きにすればいいわ」
ティアナは肩をすくめる。
そのまま視線を向けてきた。
「で?」
短い一言。
だが、十分だった。
ユウも回りくどいことはしない。
「ドワーフの情報が欲しい」
一瞬、間が空く。
ティアナは小さく息を吐いた。
「やっぱりね」
予想していた顔だった。
「村を見れば分かるわ」
「建築が追いついてない」
否定する余地はない。
ユウはそのまま頷く。
「必要だ」
ティアナは少し考えた。
棚に並ぶ薬草へ視線を流しながら、言葉を選ぶ。
「いるにはいるわ」
ゆっくりとした声。
「ただし――面倒よ」
アリアが苦笑する。
「だろうね」
「気難しいし、簡単には動かない」
「外に出るのも嫌う」
それでも、とユウは続ける。
「場所は」
ティアナは視線を戻した。
「鉱山都市テルー」
少しだけ間を置く。
「ここから乗り合い馬車で一日」
現実的な距離だ。
遠すぎず、近すぎない。
アリアが頷く。
「ちょうどいいね」
ユウはさらに聞く。
「接触はできるか」
ティアナは少しだけ考えてから、
小さく笑った。
「できるわ」
「一人、心当たりがある」
空気が少し変わる。
アリアが息を吐いた。
「当たりだね」
ユウは短く頷く。
「頼む」
ティアナは腕を組む。
「いいわよ」
一度、区切る。
「ただし」
静かに言葉を置く。
「条件があるわ」
その一言で、空気が締まった。
交渉が始まる。




