66話 設営
昼。
村に、新しい動きがあった。
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「ここに出張所を設置したい」
ギルドの男が言う。
落ち着いた声。
だが、その視線は周囲を測っていた。
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整った道。
流れる水。
配置された建物。
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「……想定以上だな」
小さく呟く。
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エリシアが一歩前に出る。
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「ご提案は理解しました」
「設置について、こちらとしても異論はありません」
淡々とした返答。
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男が頷く。
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「助かる」
「人の流れも増える」
「ここを拠点として機能させたい」
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アリアが横で小さく言う。
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「完全に目つけられたね」
「だな」
ユウは短く返す。
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男が続ける。
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「場所を確保できれば――」
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「ある」
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ユウが言った。
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男がわずかに眉を動かす。
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「……ある?」
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「使える建物がある」
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一瞬の沈黙。
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エリシアが頷く。
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「案内します」
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少し歩く。
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拠点の外れ。
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整った木造の家が並ぶ一角。
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その中の一つで、足が止まる。
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ミーナが指をさす。
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「これ!」
「一番新しいやつ!」
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アリアが確認するように見る。
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「空いてるね」
「問題なさそう」
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男が建物を見る。
外観。
構造。
配置。
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中に入り、軽く確認する。
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「……十分だ」
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振り返る。
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「これを使わせてもらっていいか?」
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「問題ない」
ユウが短く答える。
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エリシアが補足する。
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「動線、居住性ともに問題ありません」
「そのまま運用可能です」
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男が小さく息を吐く。
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「助かる」
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外に出る。
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ガイアが軽く笑う。
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「いい場所だろ?」
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男が頷く。
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「ああ」
「ここまで整っているとは思わなかった」
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カイルが肩をすくめる。
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「まあ、便利なのは間違いねえな」
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ダンも周囲を見る。
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「人、増えるな」
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レナが短く言う。
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「確実に」
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ミーナが嬉しそうに笑う。
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「にぎやかになるね!」
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エリシアが静かに言う。
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「受け入れ体制を強化します」
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ユウは村を見る。
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整った空間。
空いている余白。
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(……準備はできてる)
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その時。
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「すみません!」
入口の方から声。
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全員がそちらを見る。
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見慣れない冒険者たち。
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「ここ、拠点で合ってますか?」
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ガイアが小さく笑う。
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「ほら来た」
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男も苦笑する。
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「早いな」
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エリシアが前に出る。
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「ようこそ」
「こちらで受付を行います」
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新しく決まった建物を指す。
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冒険者たちが目を丸くする。
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「え、普通に村じゃん」
「聞いてたのと違うんだけど」
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カイルが笑う。
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「だろ?」
「俺らも最初そうだった」
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ユウはその様子を見ていた。
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人が来る。
流れができる。
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(……始まったな)
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風が吹く。
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静かだった村に。
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人の声が、増えていく。
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「……忙しくなるな」
ユウが呟く。
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だが。
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その声に、迷いはなかった。




