60話 収納
静かな村。
人が減った分、音も少ない。
風と、木の揺れる音だけ。
「……落ち着くね」
ミーナが言う。
「ああ」
ユウも頷く。
悪くない。
だが――
「静かすぎるな」
アリアが笑う。
「さっきまでが賑やかすぎたんだよ」
「……それもあるな」
ユウは周囲を見る。
土地はある。
森もある。
資源もある。
(……広げるには十分だな)
『で?やるの?』
リリィの声。
「ああ」
ユウは小さく答える。
アリアが気付く。
「何するの?」
「効率を上げる」
短く言う。
「具体的には?」
一拍。
「運ぶ手間を消す」
アリアが目を細める。
「……また危ないこと考えてない?」
「大丈夫だ」
「今回は、歪まない」
その一言で、空気が少し変わる。
「歪まない?」
ミーナが首を傾げる。
「どういうこと?」
ユウは少しだけ考える。
説明は簡単でいい。
「今までのは“作ってた”」
「今回は“移す”」
アリアが理解する。
「……なるほど」
「等価交換に近い?」
「そんな感じだ」
『そうそう』
リリィが軽く言う。
『それなら大丈夫だよー』
『ただの移動みたいなもんだし』
ミーナが目を輝かせる。
「じゃあ安全なの?」
「基本はな」
ユウは頷く。
「じゃあ何するの?」
「スキルを増やす」
はっきり言った。
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一瞬、沈黙。
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「……さらっと言うね」
アリアが苦笑する。
「できるの?」
「できる」
即答だった。
「ただし、制御は必要だ」
ユウは目を閉じる。
(……イメージ)
必要なのは。
運ぶ手間の削減。
保管。
取り出し。
加工。
(……形は)
決まっている。
「収納」
小さく呟く。
『はいはい、来たねー』
リリィの声。
軽い。
だが、理解している。
『どのくらい?』
「制限なし」
『……それやる?』
一瞬だけ、間。
だが。
「やる」
迷いはない。
『了解』
その瞬間。
何かが、静かに変わる。
誰にも分からないレベルで。
だが確実に。
ユウは目を開いた。
「……できた」
「早いな!?」
ミーナが驚く。
アリアは冷静に聞く。
「どんなスキル?」
ユウは近くの木を見る。
「こう使う」
手をかざす。
次の瞬間。
木が、消えた。
「え?」
ミーナが固まる。
「どこいったの!?」
「ここだ」
ユウは軽く手を振る。
空間が揺れる。
次の瞬間。
木材が現れる。
しかも――
「……整ってる?」
アリアが目を細める。
ただの丸太じゃない。
均一な形。
板状に加工されている。
「取り出す時に整形できる」
「イメージ次第だ」
ミーナが目を輝かせる。
「すごい!」
アリアはため息をついた。
「便利すぎない?」
「そのためのスキルだ」
ユウは淡々と答える。
さらに手をかざす。
周囲の木が、次々と消えていく。
「ちょ、ちょっと待って!」
ミーナが慌てる。
「森なくなる!」
「全部はやらない」
ユウは止める。
「必要な分だけだ」
『それ大事ねー』
リリィが軽く言う。
『やりすぎると普通に問題になるし』
「分かってる」
ユウは頷く。
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加工された木材。
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整然と並ぶ。
「……これ」
アリアが言う。
「建築、一気に進むね」
「ああ」
ユウは答える。
「村を広げる」
ミーナが嬉しそうに言う。
「大きくするの?」
「そのつもりだ」
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静かな村。
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だが。
変化は、もう始まっている。
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ユウは空を見た。
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「……ここからだな」




