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5話 秘密のスキル

朝、鳥の声で目が覚めた。


「……ここ異世界だったな」


ベッドの上で体を起こす。


昨日は色々ありすぎた。


異世界に来て、

謎の本を手に入れて、

精霊のリリィが現れて、

家を作って、

そして――


「……アリア」


隣の部屋を見る。


昨日助けた冒険者の少女だ。


「まだ寝てる?」


「起きてるわよ」


ドアが開いた。


アリアが腕を伸ばして軽く背伸びをする。


「よく眠れたわ」


「それならよかった」


怪我もだいぶ良くなっているみたいだ。


「改めてありがとう、ユウ」


「気にしなくていい」


アリアは窓の外を見た。


「それにしても……」


「?」


「森の中に一軒だけ家って、ちょっと不思議よね」


「そ、そうか?」


ドキッとする。


「普通は村とかあるじゃない?」


「まあ……そうだな」


アリアは笑った。


「でも、静かでいい場所ね」


「……」


危ない。


スキルのことは絶対バレないようにしないと。


俺はこっそり肩を見る。


そこには小さな妖精サイズのリリィが座っていた。


リリィが小声で言う。


「顔に出てるわよ」


「出てない」


「出てる」


「静かにしてくれ」


アリアにはリリィの声が聞こえない。


だから俺が小声で喋ると、ちょっと怪しい。


「ユウ?」


「え?」


「誰かと話してた?」


「いや、独り言」


「変わってるわね」


「よく言われる」


なんとか誤魔化せた。


そのとき。


ぐぅぅぅ……


「……」


アリアのお腹が鳴った。


アリアの顔が少し赤くなる。


「……聞こえた?」


「ちょっとだけ」


「忘れて」


「善処する」


俺は窓の外を見る。


畑。


昨日作ったばかりの小さな畑だ。


でも――


「まだ作物ないな」


「そうね」


「食料どうするの?」


「うーん」


俺は少し考える。


そして言う。


「森で何か採ってくる」


「それなら私も行くわ」


「怪我は?」


「もう平気」


さすが冒険者だ。


回復早いな。


家を出る。


アリアが森の周囲を見渡す。


「この辺、魔物は少なそうね」


「そうなのか?」


「ええ。気配が薄いもの」


リリィが俺の肩で小さく笑う。


「昨日ゴブリン倒したからじゃない?」


「言うな」


俺は心の中で返す。


そして、こっそりクリエイトブックを呼ぶ。


小声で。


「……クリエイトブック」


パッ


誰にも見えないように、本が現れた。


アリアは少し先を歩いている。


今ならバレない。


俺は素早く書く。


『この森には食べられる木の実が落ちている』


文字が光る。


数秒後。


ポトッ


ポトポト


木の実が地面に落ちてきた。


「ん?」


アリアが振り向く。


「どうしたの?」


「いや……」


アリアは地面を見る。


そこにはたくさんの木の実。


「こんなに落ちてるなんて珍しいわね」


「そ、そうなのか?」


「運がいいわ」


俺は内心ガッツポーズする。


バレてない。


リリィが肩でクスクス笑う。


「ずるい作者ね」


「うるさい」


アリアは木の実を拾う。


「これなら朝ごはんには十分ね」


「よかった」


家に戻る途中。


アリアが言った。


「ユウって」


「ん?」


「なんだか不思議ね」


「どういう意味?」


アリアは少し考えて言う。


「運がいいのかしら」


「運?」


「昨日は家があって」


「今日は食べ物が見つかる」


「……」


俺は苦笑する。


運じゃない。


物語だ。


でも、それはまだ秘密。


俺は心の中で思う。


(このスキルは……しばらく隠しておこう)


その方が、きっと面白い。


俺の物語は――


まだ始まったばかりなんだから。


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