表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
59/74

58話 朝

朝。


鳥の声で目が覚める。


久しぶりの、静かな朝だった。


「……静かだな」


ベッドの上で体を起こす。


耳を澄ます。


戦闘の気配はない。


森も、荒れていない。


「ほんとに終わったんだねー」


頭の中でリリィが言う。


「……ああ」


短く答える。


体を動かす。


少しだけ重い。


だが、問題はない。


外に出る。


空気が違った。


張り詰めていない。


いつもの空気だ。


「ユウ!」


ミーナが駆けてくる。


「おはよう!」


「ああ、おはよう」


「ねえねえ、見て!」


手を引かれる。


そのまま、森の方へ。


「……どうした」


「魔物、全然いないの!」


ミーナが嬉しそうに言う。


森の入口。


確かに、気配が薄い。


昨日までとは別物だ。


「……減ってるな」


「うん!」


「なんかね、怖くない感じ!」


言葉は曖昧だが、感覚は正しい。


「普通に戻ったのよ」


後ろから声。


ティアナだった。


「歪みが消えたから」


「……やっぱりそうか」


「ええ」


短く頷く。


「異形も消えたし、統率もない」


「ただの森よ」


カイルが近づいてくる。


「ただの、って言ってもな」


「十分危ねえけどな」


「それでも昨日よりはマシでしょ」


レナが言う。


「段違いにね」


ガイアも頷いた。


「これなら普通に狩りもできる」


「助かるぜ……」


ダンが肩を回す。


空気が軽い。


誰もがそれを感じていた。



エリシアが声を上げる。



「はい、作業に戻るわよ」



現実に引き戻される。


「壊れた柵の修復」


「結界の点検」


「畑の確認も必要ね」


「了解ー!」


ミーナが元気よく返す。


カイルが苦笑する。


「戦い終わったと思ったらこれかよ」


「日常よ」


アリアが言う。


「嫌いじゃないでしょ?」


「……まあな」


少しだけ笑う。



ユウは拠点を見回した。



人がいる。


動いている。


声がある。


(……戻ったな)


あの張り詰めた空気はない。


ただの、日常。


『だから言ったでしょ?』


リリィの声。


『ちゃんと戻るって』


「……ああ」


『無茶しなければね』


「分かってる」


小さく答える。



アリアが隣に立つ。



「ねえ」


「なんだ」


「今日は何する?」


少しだけ考える。


やることは多い。


だが。


「……まずは修理だな」


「現実的」


アリアが笑う。


「でも、そのあと」


一拍。


「ちょっとゆっくりしよ」



ユウは空を見た。



青い。


何もない。


「……そうだな」


短く答える。



風が、静かに吹いていた。



ようやく。


本当に。


ここからが始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ