58話 朝
朝。
鳥の声で目が覚める。
久しぶりの、静かな朝だった。
「……静かだな」
ベッドの上で体を起こす。
耳を澄ます。
戦闘の気配はない。
森も、荒れていない。
「ほんとに終わったんだねー」
頭の中でリリィが言う。
「……ああ」
短く答える。
体を動かす。
少しだけ重い。
だが、問題はない。
外に出る。
空気が違った。
張り詰めていない。
いつもの空気だ。
「ユウ!」
ミーナが駆けてくる。
「おはよう!」
「ああ、おはよう」
「ねえねえ、見て!」
手を引かれる。
そのまま、森の方へ。
「……どうした」
「魔物、全然いないの!」
ミーナが嬉しそうに言う。
森の入口。
確かに、気配が薄い。
昨日までとは別物だ。
「……減ってるな」
「うん!」
「なんかね、怖くない感じ!」
言葉は曖昧だが、感覚は正しい。
「普通に戻ったのよ」
後ろから声。
ティアナだった。
「歪みが消えたから」
「……やっぱりそうか」
「ええ」
短く頷く。
「異形も消えたし、統率もない」
「ただの森よ」
カイルが近づいてくる。
「ただの、って言ってもな」
「十分危ねえけどな」
「それでも昨日よりはマシでしょ」
レナが言う。
「段違いにね」
ガイアも頷いた。
「これなら普通に狩りもできる」
「助かるぜ……」
ダンが肩を回す。
空気が軽い。
誰もがそれを感じていた。
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エリシアが声を上げる。
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「はい、作業に戻るわよ」
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現実に引き戻される。
「壊れた柵の修復」
「結界の点検」
「畑の確認も必要ね」
「了解ー!」
ミーナが元気よく返す。
カイルが苦笑する。
「戦い終わったと思ったらこれかよ」
「日常よ」
アリアが言う。
「嫌いじゃないでしょ?」
「……まあな」
少しだけ笑う。
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ユウは拠点を見回した。
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人がいる。
動いている。
声がある。
(……戻ったな)
あの張り詰めた空気はない。
ただの、日常。
『だから言ったでしょ?』
リリィの声。
『ちゃんと戻るって』
「……ああ」
『無茶しなければね』
「分かってる」
小さく答える。
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アリアが隣に立つ。
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「ねえ」
「なんだ」
「今日は何する?」
少しだけ考える。
やることは多い。
だが。
「……まずは修理だな」
「現実的」
アリアが笑う。
「でも、そのあと」
一拍。
「ちょっとゆっくりしよ」
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ユウは空を見た。
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青い。
何もない。
「……そうだな」
短く答える。
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風が、静かに吹いていた。
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ようやく。
本当に。
ここからが始まりだった。




