57話 終点
衝突。
内側へ流れ込む魔物。
一気に圧が増す。
「押されてる!」
ダンが叫ぶ。
「数が違う!」
レナが撃ち抜く。
だが減らない。
次が、すぐ来る。
「くそっ……!」
カイルが斬り払う。
ミーナが食い止める。
「来ないで!!」
だが。
止まりきらない。
「ライン下がるぞ!」
ガイアが叫ぶ。
じりじりと、押される。
その奥。
“それ”が、踏み込んできた。
「……来たか」
ガイアが低く言う。
一瞬で空気が変わる。
格が違う。
「全員、注意しろ!」
だが。
“それ”は、止まらない。
一直線に進む。
狙いは――中心。
「……読まれてるな」
レナが呟く。
「だな」
カイルが笑う。
「気持ち悪いくらいに」
“それ”が拳を振り上げる。
「来るぞ!!」
ドゴォンッ!!
衝撃。
地面が揺れる。
結界の内側。
空間そのものが震えた。
「……っ!」
ガイアが踏ん張る。
一撃が、重い。
二撃目。
間を置かない。
ドォンッ!!
「まずい!!」
三撃目――
その前に。
ユウが、前に出た。
「下がれ」
短い一言。
全員が反応する。
「ユウ!?」
アリアが叫ぶ。
だが。
止めない。
止められない。
ユウは、前を見る。
“それ”と、視線が合う。
⸻
逸らさない。
⸻
(……ここまでだ)
隠すラインは超えた。
だが。
全部は出さない。
「リリィ」
『了解、本気の“ちょい手前”ね』
軽い声。
ユウは一歩踏み込む。
「閉じる」
小さく呟く。
その瞬間。
空気が変わった。
誰にも分からないレベルで。
だが確実に。
世界が、整う。
“それ”が振り下ろす。
ドゴォンッ!!
――当たらない。
「……は?」
カイルが声を漏らす。
拳は、確かに振り下ろされた。
だが。
届いていない。
わずかに、ズレている。
「……空間が、歪んだ?」
レナが目を細める。
“それ”が止まる。
初めて。
明確に。
動きが鈍った。
「……今だ」
ユウが言う。
「叩け」
ガイアが動く。
一瞬で距離を詰める。
「おおおお!!」
剣が振り抜かれる。
カイルが続く。
「遅えんだよ!」
レナの一撃。
ミーナの爪。
一斉攻撃。
だが――
「硬っ……!」
手応えが違う。
「効いてねえぞ!」
ダンが叫ぶ。
“それ”が、腕を振る。
ドンッ!!
衝撃。
全員が弾かれる。
「ぐっ……!」
ガイアが踏みとどまる。
「やっぱ簡単じゃねえな!」
だが。
ユウは動かない。
見ている。
(……反応が遅れた)
完全じゃない。
だが、効いている。
「もう一回だ」
小さく言う。
「動きを縛る」
『了解』
“それ”が踏み込む。
その瞬間。
足元が、止まる。
「……っ!?」
わずかな硬直。
ほんの一瞬。
だが。
十分だ。
「そこだ!!」
ガイアが吠える。
今度は一点集中。
同じ場所。
叩く。
カイルが笑う。
「分かりやすくて助かるぜ!」
レナが狙う。
「そこ!」
ミーナが飛び込む。
「終わって!!」
一撃。
二撃。
三撃。
ヒビが入る。
「通ってる!」
ダンが叫ぶ。
“それ”が、初めて揺らぐ。
だが。
倒れない。
「しぶといな……!」
ガイアが歯を食いしばる。
その時。
“それ”が、ユウを見る。
⸻
明確な敵意。
⸻
次の瞬間。
一直線に、突っ込んできた。
「ユウ!!」
アリアが叫ぶ。
だが。
ユウは動かない。
(……来ると思った)
「終わりだ」
静かに言う。
“それ”が拳を振り上げる。
至近距離。
回避不能。
だが――
「閉じろ」
その一言で。
空間が、固定される。
拳が、止まる。
完全に。
「……っ!?」
カイルが目を見開く。
“それ”の動きが止まった。
一切、動かない。
縛られている。
見えない何かに。
「今だ」
ユウが言う。
ガイアが踏み込む。
全力。
「終わりだああああ!!」
一閃。
深く、入る。
カイルが続く。
レナが撃ち抜く。
ミーナが裂く。
ダンが支える。
集中。
一点。
⸻
砕けた。
⸻
“それ”の体が、崩れる。
歪みが、弾ける。
黒い靄が広がる。
そして――
消えた。
⸻
静寂。
⸻
誰も、すぐには動かなかった。
「……終わった、のか?」
カイルが呟く。
レナが周囲を見る。
「……反応、消えた」
ティアナが目を細める。
森を見る。
「……ええ」
小さく頷く。
「終わりよ」
その一言で。
空気が、抜けた。
「はぁ……」
カイルがその場に座り込む。
「マジで疲れた……」
ガイアが剣を下ろす。
「被害は?」
エリシアが確認する。
「重傷なし!」
ダンが答える。
「全員、生きてる!」
ミーナが笑う。
「よかった……!」
⸻
ユウは森を見た。
⸻
静かだ。
完全に。
(……終わったな)
頭の中。
リリィの声。
『うん、ここはもう大丈夫』
軽い調子。
『歪み、ほぼ消えたよ』
ユウは小さく息を吐く。
「……そうか」
『あとは普通に戻るだけ』
その言葉に。
少しだけ、肩の力が抜けた。
⸻
アリアが近づいてくる。
⸻
「……やったね」
「ああ」
短く答える。
「終わった」
アリアは小さく笑った。
「じゃあさ」
一拍。
「やっと、ゆっくりできるね」
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ユウは少しだけ空を見た。
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「……だな」
⸻
静かな夜だった。
今度こそ、本当に。




