46話 役割の始まり
昼前。
拠点の中は、これまでにないほど動いていた。
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「水、こっちに運んでくれ!」
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「はい!」
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新しく来た者たちが動く。
ぎこちないが、止まらない。
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「……悪くないな」
ガイアが腕を組む。
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「ちゃんと動いてる」
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「誰かが見てるからね」
レナが視線を向ける。
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その先――
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「そこ、もう少し間隔あけてください」
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エリシアが指示を出していた。
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「はい!」
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迷いのない返事。
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「……あの子、すごいな」
カイルが感心したように言う。
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「全体見えてる」
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「元々そういうタイプよ」
アリアが答える。
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「環境が整えば、ああなるわ」
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少し離れた場所。
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「ミーナ、それ重いだろ」
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「大丈夫です!」
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木材を抱えながら笑う。
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「ここ、置けばいいですか?」
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「ああ、それでいい」
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素直で、動きが早い。
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「……役割ができてきたな」
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「ええ」
ティアナが隣で頷く。
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「自然と分かれてる」
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視線を巡らせる。
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•エリシア:管理
•ミーナ:補助
•新規組:労働
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そして――
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「あなたは?」
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「俺か?」
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「何でも屋だな」
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「便利な言葉ね」
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「実際そうだろ」
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否定はしない。
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「ユウ」
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リリィがふわっと現れる。
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「ちょっといい?」
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「なんだ?」
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「このままだとさ」
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「うん」
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「足りなくなるよ」
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「……何が」
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「全部」
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即答だった。
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「水も」
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「食料も」
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「場所も」
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「人が増える速度の方が速い」
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ティアナが小さく頷く。
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「その通りね」
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「だから」
リリィが笑う。
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「どうする?」
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少しだけ考える。
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(拡張は、まだ早い)
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(でも、止めるわけにもいかない)
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「……調整する」
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「調整?」
ティアナが首を傾げる。
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「まずは」
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指を一本立てる。
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「食料」
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畑の方を見る。
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「収穫まではまだ時間がある」
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「ええ」
エリシアも近づいてくる。
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「現状、備蓄に頼っています」
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「次」
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「水」
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井戸を見る。
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「これは問題ない」
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「十分な量が出ています」
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「最後」
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「場所」
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小屋を見る。
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「まだ余裕はある」
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「けど」
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「増えたら足りなくなる」
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「……つまり」
ティアナがまとめる。
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「今は耐えられる」
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「でも、すぐ限界が来る」
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「そういうことだ」
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少しの沈黙。
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そして――
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「どうするの?」
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その問いに。
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小さく息を吐く。
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「段階的にやる」
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「いきなり広げない」
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「でも、止めない」
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ティアナは少しだけ目を細めて――
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「……いい判断ね」
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「まずは」
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周囲を見る。
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「役割をはっきりさせる」
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「エリシア」
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「はい」
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「全体管理、任せる」
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「……承知しました」
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即答だった。
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「ミーナ」
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「はい!」
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「補助全般」
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「がんばります!」
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「新しく来たやつらは」
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振り返る。
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「まず整地と運搬」
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「はい!」
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「……完全に村長ね」
アリアが小さく言う。
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「やめろ」
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「事実よ」
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少しだけ間。
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「……でも」
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アリアが続ける。
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「悪くないわ」
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その言葉に、
少しだけ肩の力が抜ける。
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拠点の中。
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人が動く。
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声が飛ぶ。
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仕事が回る。
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それはもう――
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ただの“拠点”じゃない。
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役割があり、
秩序があり、
人が生きる場所。
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“村”だ。
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「……忙しくなるな」
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小さく呟く。
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リリィが笑う。
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「だから言ったでしょ」
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「ここからが本番だよ」
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(続く)




