45話 増える居場所
翌朝。
拠点の空気は、昨日までと少し違っていた。
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「……増えてるな」
カイルがぼそっと言う。
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その視線の先。
拠点の外れに――
見覚えのない小屋が、二つ。
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「昨日まで、なかったわよね」
レナが静かに言う。
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「……ああ」
ガイアも頷く。
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新しく来た者たちも、ざわついていた。
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「なんだ、あれ……」
「誰かが建てたのか?」
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自然な反応。
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そして、その視線がこちらに集まる。
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少しだけ間を置いてから言う。
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「建てた」
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「……いつだよ」
カイルが眉をひそめる。
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「夜」
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「いや、音とか――」
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「寝てただろ」
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納得はしていない顔。
でも、それ以上は突っ込めない。
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「……助かる」
新しく来た男が頭を下げた。
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「本当に、助かる」
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「使え」
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「はい!」
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少し離れた場所。
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「……やったのね」
ティアナが隣に来る。
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「ああ」
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「見てないところで」
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「その方がいいだろ」
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「ええ」
小さく頷く。
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「精度は悪くない」
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「昨日より安定してる」
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リリィがくすっと笑う。
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「ちゃんと考えてるね」
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「でも」
ティアナが続ける。
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「増やし方は考えなさい」
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「分かってる」
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「ならいいわ」
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それ以上は踏み込まない。
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拠点の中央。
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人が動き始めている。
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新しく来た者が水を運び、
ミーナが手伝い、
エリシアが全体を見ている。
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「……回ってきてるな」
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「ええ」
アリアが隣に立つ。
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小屋の方を見る。
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そして――
何も言わない。
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少しだけ間。
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「……前に、言ったわよね」
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静かな声。
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「何かするなら、相談してって」
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責める言い方じゃない。
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確認に近い。
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「……ああ」
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「守る気はあるのよね?」
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「ある」
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一拍置く。
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「でも、今回は例外だ」
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「……理由は?」
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「今すぐ必要だった」
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短く。
でも、誤魔化さない。
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アリアは少しだけ目を細めて――
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小屋を見る。
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「……まあ」
小さく息をつく。
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「結果は悪くないわね」
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それから、こちらを見る。
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「次からは?」
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「ちゃんと話す」
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「ならいい」
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完全な許可じゃない。
でも――
拒絶でもない。
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「……一応ね」
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少しだけ、柔らかくなる。
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「ユウさん」
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振り返ると、昨日の男。
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「何か手伝えることはありますか?」
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「ある」
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「この辺、整地してくれ」
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「分かりました!」
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すぐに動く。
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「……増えるわね」
ティアナが小さく言う。
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「人も、やることも」
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「ああ」
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「大丈夫?」
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少しだけ笑う。
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「やるしかないだろ」
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拠点の外れ。
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新しくできた小屋。
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その前に立つ。
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(これで少しは余裕ができた)
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でも――
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「まだ来るよ」
リリィが言う。
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「……だろうな」
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森の方を見る。
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静かだ。
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でも、確実に何かが動いている。
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拠点は変わり始めている。
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ただの“場所”だったものが、
人の集まる“場”へ。
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そして――
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“村”へ。
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その最初の形が、
静かに出来上がり始めていた。
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(続く)




