43話 役割と距離
朝の空気は、昨日よりも少しだけ軽かった。
拠点の中は安定している。
――それが分かる。
「……変わったな」
ガイアが周囲を見ながら言った。
「昨日より、落ち着いてる」
「そうだな」
レナも短く同意する。
「違和感はあるけど、危険な感じは薄い」
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それを聞きながら、俺は内心で頷いた。
(制御、効いてるな)
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「で?」
カイルがこちらを見る。
「今日はどうするんだ?」
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全員の視線が集まる。
自然と、そうなる位置に立っていた。
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少しだけ考えて、口を開く。
「調査は続ける」
ガイアたちの役割だ。
「ただし」
一拍置く。
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「無理はするな」
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「……珍しいこと言うな」
カイルが笑う。
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「昨日の見ただろ」
俺も苦笑する。
「普通じゃない」
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「それは同意だな」
ガイアが真面目に頷いた。
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「なら、こっちも条件がある」
腕を組む。
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「何だ?」
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「何かあったら、すぐ戻れ」
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少しの沈黙。
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「……いいのか?」
レナが聞く。
「調査、途中でも?」
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「ああ」
即答する。
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「拠点がある意味、前線基地になってる」
「なら、安全優先だ」
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ガイアはしばらく考えて――
「分かった」
と、短く答えた。
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「じゃあ、行ってくる」
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冒険者たちは森へ向かう。
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その背中を見送りながら、
「……いいの?」
ティアナが隣に来る。
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「何が?」
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「かなり自由にさせてる」
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「縛る理由もないだろ」
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「まあね」
肩をすくめる。
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「でも」
ティアナは続ける。
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「責任は増えるわよ」
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「……だろうな」
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苦笑する。
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そのとき。
「やっと“それっぽく”なってきたね」
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横から、リリィの声。
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「……それっぽくってなんだよ」
小声で返す。
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「拠点の主っぽい」
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「やめろ」
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「いいじゃん」
楽しそうに笑う。
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「前まで“なんとなく作った場所”って感じだったし」
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「……否定できないな」
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「でしょ?」
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ティアナがちらっとこちらを見る。
「また独り言?」
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「……まあな」
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完全には誤魔化せてない気がする。
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少し場所を移す。
拠点の中央。
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アリア、エリシア、ミーナも集まっていた。
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「で?」
アリアが腕を組む。
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「どう動くの?」
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単刀直入。
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「役割、決めようと思う」
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「役割?」
ミーナが首をかしげる。
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「ああ」
頷く。
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「今までは、なんとなく回ってた」
「でも、これからはそうはいかない」
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ティアナが小さく頷いた。
「賛成」
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「人も増える」
エリシアが続く。
「管理が必要になりますね」
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「……そこまで考えてるのね」
アリアが少しだけ感心したように言う。
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「まあな」
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正直、昨日の話がデカい。
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「まず」
一つずつ整理する。
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「外の調査は、ガイアたち」
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「当然ね」
アリアが頷く。
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「拠点の管理は――」
少し考えて。
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「エリシア、頼めるか?」
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「……私でよろしいのですか?」
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「ああ」
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「全体を見るの、向いてるだろ」
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少し驚いた顔をして、
それから静かに頷いた。
「……分かりました」
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「ミーナは」
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「はい!」
すぐ反応する。
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「自由枠でいい」
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「え?」
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「気づいたこと、教えてくれ」
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「……それだけでいいんですか?」
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「それが一番助かる」
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ミーナは少し考えて――
「……分かりました」
と、嬉しそうに頷いた。
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「私は?」
アリアが聞く。
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「……監視役」
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「やっぱりね」
即答だった。
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でも。
少しだけ笑っている。
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「で?」
ティアナが腕を組む。
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「私は?」
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「分析と調整」
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「調整?」
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「俺のスキル周り」
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一瞬、間が空く。
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「……重いわね」
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「だろ?」
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「いいわ」
ため息混じりに言う。
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「引き受ける」
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その言葉で、場がまとまる。
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「じゃあ最後」
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自分に視線が集まる。
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「俺は――」
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一瞬だけ、言葉を選んで。
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「この場所を維持する」
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シンプルな答え。
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でも、それでいい。
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「……拠点主、ね」
ティアナが小さく言う。
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「それっぽいじゃない」
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「やめろって」
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横で、リリィがくすくす笑っている。
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「いい感じだよ、ユウ」
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「うるさい」
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でも。
悪くない。
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バラバラだったものが、
少しずつ形になっていく。
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拠点は、ただの“場所”から――
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“機能する拠点”へと変わり始めていた。
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そして。
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その中心にいるのは、自分だ。
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(続く)




