27話 森の聖域
翌朝。
鳥の鳴き声で目が覚めた。
窓の外はすっかり明るい。
森の朝は空気が澄んでいる。
俺が外に出ると、すでにアリアが井戸のそばにいた。
「おはよう」
「おはよう」
アリアは軽く体を伸ばしている。
「よく眠れた?」
「まあまあかな」
そのとき。
ミーナが家から出てきた。
まだ少し眠そうだ。
「……おはよう」
エリシアも後から出てくる。
「おはようございます」
少しして。
冒険者たちも起きてきた。
ガイアが大きくあくびをする。
「よく寝た」
カイルが言う。
「森の中なのに安心して寝られたな」
レナもうなずく。
「確かに」
そのとき。
ミーナの耳がぴくっと動いた。
森の方を見る。
「……?」
アリアが気づく。
「どうしたの?」
ミーナは少し不思議そうな顔をしていた。
「……いる」
「魔物」
ガイアがすぐ反応する。
「どこだ?」
ミーナが柵の外を指さす。
「……あっち」
全員で柵の近くまで行く。
森の奥。
茂みの向こう。
ガサッ。
ウルフが一匹、姿を見せた。
ガイアが剣に手をかける。
だが。
ウルフは近づいてこない。
ただこちらを見ている。
「……?」
カイルが言う。
「来ないな」
ウルフは少し歩いた。
柵の方向へ。
だが――
そこで止まった。
低く唸る。
しかし、それ以上進もうとしない。
やがて。
くるりと向きを変えて森へ戻っていった。
ガイアが眉をひそめる。
「なんだ?」
レナが言う。
「警戒してる……?」
ミーナは首をかしげている。
「……変」
アリアが聞く。
「どういうこと?」
ミーナはゆっくり言った。
「いつもなら……来る」
「でも」
柵を見る。
「……入ってこない」
少しの沈黙。
ガイアが腕を組む。
「縄張りの匂いか?」
カイルが言う。
「いや、柵だけで止まるか?」
レナは森を見ている。
「不思議ね」
俺は少しだけ柵を見た。
昨夜のことを思い出す。
――聖域となる。
俺は何も言わなかった。
そのとき。
リリィが空中でふわふわ飛んだ。
「ここ気持ちいい!」
ミーナが小さくうなずく。
「……うん」
森の外では魔物がいる。
でもこの場所だけは静かだった。
迷い霧の森の奥。
小さな拠点。
どうやら――
ここは少し特別な場所になっているらしい。




