26話 静かな夜と一行の文字
夜。
拠点はすっかり静かになっていた。
ガイアたち冒険者は、空いている部屋で休んでいる。
ティアナも灯りを消し、ミーナとエリシアももう寝ている頃だ。
俺は一人、外に出た。
夜の森。
虫の声と、風で木が揺れる音。
空には星が広がっている。
柵の外には暗い森。
昼間のウルフのことを思い出す。
「魔物が増えてる……か」
ガイアたちも言っていた。
この森、何かおかしいらしい。
俺は少し考えた。
この拠点には今
•アリア
•ミーナ
•エリシア
•ティアナ
そして冒険者たちもいる。
もし夜に魔物が来たら。
「……」
俺は小さくつぶやいた。
「クリエイトブック」
光とともに、本が現れる。
夜の森の中で、静かに輝く一冊の本。
俺はゆっくりページを開いた。
ペンを走らせる。
『この拠点の柵の内側は聖域となる』
『モンスターはこの中に入ることができない』
書き終えると――
文字が淡く光った。
次の瞬間。
ふわりと風が吹いた。
柵の周囲を、目に見えない何かが広がっていくような感覚。
それはすぐに消えた。
森はまた静かになる。
俺は本を閉じた。
「……これで少しは安心かな」
誰にも言わない。
ただ、ここが安全な場所であればいい。
俺は家に戻った。
その頃。
森の奥では――
ガルルル……
一匹のウルフが森を歩いていた。
ふと立ち止まる。
拠点の方向。
だが。
その先へ進もうとした瞬間。
ウルフは突然、足を止めた。
低く唸る。
だがそれ以上進めない。
まるで見えない壁があるように。
しばらくして。
ウルフは森の奥へ引き返していった。
拠点の中では。
暖かな灯りが静かに揺れている。
そして翌朝。
森に小さな変化が起きていることを――
まだ誰も知らなかった。




