20話 目覚めた冒険者
「……う……」
テーブルの上の男が、小さくうめいた。
ティアナがすぐに顔を近づける。
「大丈夫?」
男の目がゆっくりと開いた。
ぼんやりと天井を見る。
そして視線が動き、俺たちを見た。
「……ここは……?」
アリアが答える。
「森の中よ」
「安心して、あんたを運んできたの」
男は少し考えるような顔をした。
それから思い出したように言う。
「ウルフ……」
体を起こそうとする。
だがティアナがすぐ止めた。
「まだ動いちゃだめ」
「傷が開くわ」
男は小さく息を吐いた。
「……助けてくれたのか」
俺がうなずく。
「森で倒れてた」
男は少しだけ笑った。
「運が良かったな」
アリアが聞く。
「それで?」
「どうしてこの森に?」
男はしばらく黙っていた。
それからゆっくり言った。
「調査だ」
「最近、この森」
「魔物が増えてるって噂になってる」
エリシアが少し驚く。
「噂?」
男はうなずく。
「冒険者ギルドでも話題になってる」
「迷い霧の森は危険度が低い森だったはずなのに」
「急に魔物が増えてるって」
俺とアリアは顔を見合わせた。
確かに。
昨日もウルフが出た。
男は続ける。
「それで何人かで調べに来た」
「でも途中で……」
少し悔しそうな顔をする。
「仲間とはぐれた」
ティアナが聞いた。
「他にもいるの?」
男はうなずく。
「三人」
「多分まだ森にいる」
アリアが眉をひそめる。
「迷子かもしれないわね」
そのとき。
ミーナの耳がぴくりと動いた。
「……います」
小さな声。
全員がミーナを見る。
ミーナは森の方を見ている。
「人……」
「三人」
アリアが少し驚く。
「もう分かるの?」
ミーナはうなずいた。
「……多分」
男が目を見開く。
「本当か?」
アリアが立ち上がる。
「探しに行く?」
ティアナは少し心配そうに言う。
「でも魔物が増えてるんでしょう?」
アリアは笑う。
「放っておくわけにもいかないでしょ」
俺も立ち上がった。
「行こう」
男が慌てて言う。
「待て」
全員が男を見る。
男は少しだけ苦笑した。
「俺も冒険者だ」
「仲間を頼む」
そう言って頭を下げた。
家の中が少し静かになる。
そのとき。
ティアナがぽつりと言った。
「……この森」
窓の外を見る。
柵。
畑。
静かな拠点。
「こんな場所があるなら」
小さくつぶやく。
「薬草、いっぱい取れそうね」
アリアが笑う。
「住む?」
ティアナは少し考える顔をした。
「……悪くないかも」
迷い霧の森の奥。
小さな拠点。
だが今。
この場所を中心に――
少しずつ人が集まり始めていた。




