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19話 エルフの目

家の中。


テーブルの上に、傷だらけの男が横になっていた。


ティアナは手際よく薬草をすり潰し、傷口に塗る。


包帯を巻き、最後に小さく息を吐いた。


「……これで大丈夫」


アリアが腕を組んで聞く。


「助かりそう?」


ティアナはうなずいた。


「ええ」


「少し休めば目を覚ますはず」


俺は肩の力を抜いた。


「よかった」


そのとき。


ティアナがふと周囲を見回した。


木の家。


窓の外の畑。


柵で囲まれた拠点。


井戸。


そして奥からは、うっすら温泉の湯気。


ティアナは少し呆れたように言った。


「……それで」


俺とアリアを見る。


「どうして森の奥にこんな場所があるの?」


アリアが笑う。


「いろいろあってね」


あえて詳しくは説明しない。


ティアナは少し不思議そうにしながらも、それ以上は聞かなかった。


そのとき。


ふわっと空中に小さな光が浮かんだ。


ミーナの近く。


ティアナの視線が止まる。


「……」


少し目を細める。


そして小さく言った。


「精霊……?」


その瞬間。


小さな光がくるくる回った。


そして元気よく言う。


「リリィ!」


自分の胸を指差す。


ティアナの目が少し大きくなった。


「……見える」


エリシアが驚く。


「ティアナさんもですか?」


ティアナはゆっくりうなずいた。


「エルフは精霊の気配を感じやすいの」


リリィを見る。


「でも普通は……」


「姿までは見えない」


ミーナが小さく言った。


「……私も見えます」


ティアナはミーナを見る。


少し考えるような目。


「獣人は人間より精霊に近い存在って言われてる」


「だから感じやすいのは珍しくないわ」


少し間を置く。


「でも」


リリィを見ながら言う。


「こうして姿まで見えるのは……少し珍しいかもしれないわね」


ミーナは少し困ったようにうなずいた。


「……そうなんですね」


リリィは楽しそうにミーナの周りを飛ぶ。


「ミーナ好き!」


その様子を見て、ティアナは少し笑った。


「面白い子ね」


アリアが言う。


「ミーナ、魔物の気配にもすぐ気づいたのよ」


ティアナが少し驚く。


「そうなの?」


ミーナは小さくうなずいた。


「……なんとなく」


ティアナは少しだけ考え込む。


「感覚が鋭いのかもしれないわね」


そして周囲を見る。


家。


畑。


井戸。


柵。


森の奥の拠点。


ティアナは静かに言った。


「それにしても……」


「こんな場所があるなんて知らなかった」


アリアが肩をすくめる。


「最近できたのよ」


ティアナは少し驚いた顔をする。


「最近?」


そのとき。


テーブルの上の男が小さくうめいた。


「……う……」


全員の視線が集まる。


男の指がわずかに動いた。


ティアナがすぐ近づく。


「よかった」


「目を覚ますわ」


迷い霧の森の奥。


静かな拠点。


だが。


この男が目覚めることで――


新しい話が始まろうとしていた。

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