16話 森の魔物
静かな朝。
だが。
アリアは森の奥をじっと見ていた。
「森の奥」
「魔物の気配がした気がする」
その言葉に、全員が少し緊張する。
俺が聞いた。
「魔物って、この辺にいるのか?」
アリアはうなずく。
「森だからね」
「普通に出るわよ」
エリシアが少し不安そうに言う。
「この柵で大丈夫でしょうか……」
アリアは周囲を見る。
「小さい魔物なら大丈夫」
「でも様子は見てくる」
剣を手に取る。
「ちょっと行ってくる」
そのとき。
ミーナの耳がぴくりと動いた。
「……あ」
小さな声。
全員がミーナを見る。
ミーナは森の方を見ている。
「……来ます」
アリアがすぐ反応した。
「どこ?」
ミーナは指差す。
「……あっち」
森の奥。
数秒後。
ガサッ――
茂みが揺れた。
そして。
姿を現したのは――
三匹の魔物。
犬のような姿。
だが目は赤く、牙が鋭い。
アリアがつぶやく。
「フォレストウルフ」
剣を抜く。
「ちょうどいいわ」
「腕慣らしね」
ウルフたちはこちらに気づく。
唸り声を上げる。
そして――
一匹が突っ込んできた。
速い。
だが。
アリアが一歩前に出た。
剣が閃く。
ザンッ!
一瞬。
ウルフの動きが止まる。
そして倒れた。
「……すご」
思わず声が出た。
アリアは振り向かずに言う。
「まだいる」
残り二匹。
一匹が横から回り込む。
もう一匹は正面。
同時に飛びかかった。
だが。
アリアは落ち着いていた。
横の一匹。
剣を回して弾く。
その勢いで体を回転。
もう一匹の首を斬る。
ザシュッ。
二匹目が倒れる。
残り一匹。
だがそのとき。
ウルフが柵の隙間を抜けようとした。
「まずい」
アリアが言う。
柵はあるが、まだ簡易的だ。
俺はすぐ本を開いた。
「クリエイトブック!」
書く。
『柵を強化する』
文字が光る。
次の瞬間。
ゴゴッ――
木の柵が太くなり、隙間が埋まる。
ウルフがぶつかる。
ドン!
跳ね返された。
その隙に。
アリアが踏み込む。
「終わり!」
剣が閃いた。
三匹目のウルフが倒れる。
森が静かになる。
アリアが剣を振って血を払う。
「終わりね」
俺は少し驚いていた。
「強いな」
アリアが笑う。
「冒険者だからね」
そのとき。
リリィがミーナの周りを飛んだ。
「ミーナすごい!」
ミーナはきょとんとしている。
「……?」
アリアが言う。
「気づくの早すぎ」
エリシアもうなずく。
「私たちは全然分かりませんでした」
ミーナは少し困った顔をした。
「……なんとなく」
リリィが言う。
「精霊に愛されてるから!」
ミーナは少し照れた。
そのとき。
アリアがウルフを見る。
「肉取れるわね」
俺は言った。
「じゃあ今日の昼飯だな」
エリシアが少し笑う。
「開拓の食料ですね」
ミーナも小さく言う。
「……がんばって料理します」
森の魔物。
だが。
俺たちはもう一人じゃない。
仲間がいる。
そして。
この土地は――
少しずつ。
俺たちの場所になっていく。




